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#07 箱詰めの花
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──初冬の詩。
見上げれば遠く高い青い空。良く似ている。少し笑った。十分だろう。もう、良いだろう。
あの子は、可哀相だと思った。死を、背負い過ぎたのだと、この手で良いなら、触れてあげたいと思った。
噛みついた傷は、もう消えただろうか。まぁ、関係ないか。
手を焼かされた。目を離せば直ぐに居なくなってしまうし、触れようとすれば暴れ出す。その行動の意味に気づいていれば、なんて、それこそ、もう意味が無い。
長く続いた平穏にさえ怯えていた。ずっと、方法を考えていた。その時に、何をすべきか。その時の為に何を準備すれば良いのか。
一度だけ酷く叱った事があった。あの子の机の引き出しに白いロープがあった。硬く結ばれていた。叱る私を見上げて、あの子は濁った目をしていた。「それなら、もう、良いでしょ?」。そう言った。
幾ら考えても他人に迷惑をかけない死に方は思いつかなかった。幾ら考えても生きようとは思えなかった。あの人は好い人の妻になる。俺には未だ自分で歩く足が無い。どこにも居場所は無い。当ても無い。けれど、まぁ、良いか。道具と金は少しだけある。
無関係、と、あの子は書き残した。それが一番悲しかった。当たり前か。私はあの子に「こんなにしてあげたのに。」と言ってしまった。深い傷になってしまったのだろう。あの子は私に何も頼んでいない。私が無理を言って、無理に居させていたのだ。
「ふぅん? で?」
そいつは原稿用紙を丁寧に畳み直してテーブルに置いた。
「何が?」
「君はどうしたのサ?」
「さて? 俺はこんなに感情的じゃないよ。」
「ふぅん?」
荒れた細い指が猫を撫でる。猫は不機嫌そうに、それでも催促をするような鳴き方をした。
「で? その花束は?」
少し無理をして箱詰めにした。似合うか。似合うな。そんなもんだろう。毒も薬も仕込む必要はない。
「知り合いに花束を贈るのもダメか?」
「あはは、いやいや、ダメじゃないよ。話の流れ上、ねぇ?」
今度は両の頬を包むように撫で回す。流石に迷惑そうだった。
「知らないよ。それにこれは友人の結婚祝いだ。」
「ほぉ?」
「まぁ、詮索するだけタダだ。」
「はいねはいね。そうさせて貰おうかしら。」
見上げれば遠く高い青い空。やかましい隣人は暫く解放してくれそうにない。
見上げれば遠く高い青い空。良く似ている。少し笑った。十分だろう。もう、良いだろう。
あの子は、可哀相だと思った。死を、背負い過ぎたのだと、この手で良いなら、触れてあげたいと思った。
噛みついた傷は、もう消えただろうか。まぁ、関係ないか。
手を焼かされた。目を離せば直ぐに居なくなってしまうし、触れようとすれば暴れ出す。その行動の意味に気づいていれば、なんて、それこそ、もう意味が無い。
長く続いた平穏にさえ怯えていた。ずっと、方法を考えていた。その時に、何をすべきか。その時の為に何を準備すれば良いのか。
一度だけ酷く叱った事があった。あの子の机の引き出しに白いロープがあった。硬く結ばれていた。叱る私を見上げて、あの子は濁った目をしていた。「それなら、もう、良いでしょ?」。そう言った。
幾ら考えても他人に迷惑をかけない死に方は思いつかなかった。幾ら考えても生きようとは思えなかった。あの人は好い人の妻になる。俺には未だ自分で歩く足が無い。どこにも居場所は無い。当ても無い。けれど、まぁ、良いか。道具と金は少しだけある。
無関係、と、あの子は書き残した。それが一番悲しかった。当たり前か。私はあの子に「こんなにしてあげたのに。」と言ってしまった。深い傷になってしまったのだろう。あの子は私に何も頼んでいない。私が無理を言って、無理に居させていたのだ。
「ふぅん? で?」
そいつは原稿用紙を丁寧に畳み直してテーブルに置いた。
「何が?」
「君はどうしたのサ?」
「さて? 俺はこんなに感情的じゃないよ。」
「ふぅん?」
荒れた細い指が猫を撫でる。猫は不機嫌そうに、それでも催促をするような鳴き方をした。
「で? その花束は?」
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