【最弱】の召喚術師【最強】の軍勢につき

雪雪ノ雪

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第一部 王国編 第一章 迷宮都市インゼル

魔王陛下(お姉ちゃん)

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 魔王陛下が部屋を出ていき少し経ってから、皆顔を上げ立ち上がる。

 さて、呼ばれたから行くとしますかね。

「グレイ君」

 そう思い、会議室を出ようとすると声をかけられる。

 ゼノンさんだ。

「どうしたのですか?ゼノンさん」

「君とニーナ君の2人だけで戦力は足りるのかい?もし必要なら1個師団程度なら動かせるよ」

 魔王陛下に質問していた時の口調と比べて、大分フランクだ。

 まぁ、魔王陛下と同じ口調で話すのはガンドぐらいなんだけどね。

 それはさて置き、この人今1個師団なら動かせるとか言ったか?

 今第1軍は南方戦線、連合国とやり合ってるはずなんだけど.......一体どこから1個師団もの戦力を絞り出せるのだろうか。

 1個師団つったら1万人だぞ。

「いえ、それには及びませんよゼノンさん。俺が軍勢としては『最強』だと知っているでしょう?」

 それを聞いたゼノンさんは、口元を大きく歪めて笑い出す。

「ハッハッハ!!『最強』の軍勢グレイの名は伊達ではないと言うのか!!確かに君の戦いを見たものは、全員口を揃えて『最強』と言うからな。なぜ『最弱』と呼ばれているのか分からないとも」

「俺は召喚術士としては『最弱』ですからね」

「それは召喚できる魔物の種類の話なのだろう?確かに、君の召喚できる魔物は『最弱』だからな。そう言われるのはしょうが無いでもないな......ま、君がそういうのであれば援軍を出すのは辞めておこう。吉報を待っているよ」

 そういうとゼノンさんはニーナに近ずき、頭を撫でながら

「ニーナ君、今日の帰りに甘いもとでも食べるといい。彼の好きな紅茶が入ったのだろう?2人仲良く飲み食べしなさい」

 そう言って金貨5枚を渡してきた。

「え?ちょ、ゼノン様!!多すぎます!!」

 ちょっとした小遣いと言うには多すぎる金額に戸惑いながら、ゼノンさんに金貨を返そうとするが、アッハッハッハッハッ!!と笑いながらさっさと退出してしまった。

 と言うか何であの人、紅茶が入った事知ってるんですかねぇ。プライバシーとかないのか?

「ま、マスター!!どうしよう!!何買って帰ろうかな!!」

..........ん?あれ?

 ニーナを見ると目をキラキラと輝かせて、大事そうに金貨を握っている。

 余程嬉しいのか、アホ毛がピコピコ動く。

 あれ?この子さっき、こんな大金頂けません!!とか言ってなかった?切り替えはや過ぎない?ちょっと凄いわ。後素が出てる。

 いつもは頑張ってできる補佐官を演じているが、大金を貰って目を輝かせながら何を買おうか考えている姿を見ると、見た目相応だ。

 ちなみに金貨を5枚はものすごく大金だ。

 鉄貨、銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨の8種類の硬貨があり、それぞれ10枚で1枚の価値がある。

 鉄貨10枚で銅貨1枚、銅貨10枚で大銅貨1枚といった感じだ。左から順に価値は大きくなってく。

 大体金貨3枚で一般的な四人家族の一月分となる。節約すれば大銀貨5枚ぐらい減らせるだろう。

 ゼノンさんは、節約した四人家族が生活する資金の二月分をポンとニーナにあげたわけだ。

 なんて太っ腹な爺さんなんだ。

「ニーナ、何を買うのか悩むのはいいけど、魔王陛下に呼ばれてるからそれが終わってからな」

 今にも飛び出していきそうなニーナの頭を撫でて宥めつつ、俺達は魔王陛下が待つ執務室に足を運ぶ。

 部屋の前につくと、またしても質素な扉をノックもせずに開ける。

 この城の中で立派な扉って、謁見の間の扉ぐらいだしな。

「お主はノックをする事すら出来ぬのか?」

 部屋で待っていた魔王陛下は、特に何かやっているわけでも無く、ただボーと俺達を待っているだけだったようだ。

 その証拠に、机に魔王陛下が処理しなければいけない書類などが、一切乗っていない。

 終わらしたのか、無かったのかどちらかだろう。

「ノックしなくても分かってる癖によく言うわ、ロリババア」

 俺は先程の円卓会議の時とは違い、礼儀も敬意もない口調で魔王陛下に反論する。

 円卓会議のような公式の場ではある程度の礼儀ある姿勢を見せるが、今はプライベートだ。

 ここにいるのも俺と、魔王陛下とニーナの3人だけ。

 聞かれて困る事も無い。

「ふん、まぁ良い。ニーナ、こっちにおいで」

 俺の返答に対してつまらなそうに鼻を鳴らすと、今度は満面の笑みでニーナに向かって手を広げる。

 ニーナは俺を一瞬見たが、すぐに魔王陛下に視線を戻すと

「お姉ちゃん!!」

 と言って抱きついた。

 もちろん本当の姉ではない。........色々あって魔王陛下はニーナの姉役になっている。

「おーよしよし。ニーナや。グレイに何か変な事はされておらんか?仕事で困っとることはないか?ちゃんと3食しっかり食べておるなのぉ?ニーナは細いからしっかり食べるんじゃぞ?」

 どちらかといえば、姉よりも母だな。これは。

 田舎から出稼ぎに行った娘を心配する母親にしか見えん。

「大丈夫だよ、お姉ちゃん。マスターにはよく手を焼くけど、お仕事も特に問題無いし、ちゃんと3食しっかり食べてるよ」

 ニーナは魔王陛下と話す時、素で話す。

 以前は俺にも素で話してくれていたんだが、俺が第8軍大将になり、ニーナが補佐官になった時から敬語を使うようになった。

本人曰く、立場を弁えないといけないだとか。

 その後、俺が何を言っても頑なに敬語を辞めなかったので諦めてしまったが、当時は割と真面目に凹んだのはいい思い出だ。


※この世界の1日や、1ヶ月の長さ等は全て地球と同じです。
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