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第一部 王国編 第一章 迷宮都市インゼル
甘味の誘惑
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その後は特に話すこともなく、俺達は屋敷に帰ることにした。
仮面をかぶり直し、城を出ていく。
魔王陛下は、後で勝手に屋敷に来るそうだ。あの人に護衛なんて必要ないだろうし、特に心配はしていない。.......いや、買ったお菓子が好みじゃないとか言われる心配はあるな。
ちょいちょい暇を見つけては、遊びに来るが、菓子を出すと大抵文句を言われる。
尚、ニーナの手作りお菓子は絶対に文句を言わない。
確かに美味しいが、一流の店と比べてしまうとやはり少し劣る。
俺はあまり高級な食材を使った料理が好きでは無いので、ニーナの菓子の方が好きなのだが.....魔王陛下も同じなのだろうか。
.....魔王陛下ならニーナの作った料理は、例え暗黒物質でもうまいうまい言って食べそうだな。
そんなくだらないことを考えながら歩いていると、とあるひとつの店に行き着く。
個人菓子店『甘味の誘惑』。俺とニーナの行きつけの菓子屋だ。
大手の店では無いので、かなり小さい店構えだが味は一流。それなりに手頃で美味しい菓子店として、一定の人気がある。
趣のあるドアを潜れば、そこは甘い匂いが充満していた。
「いらっしゃ........何だてめぇか」
営業の声から、俺を確認するとドスの効いた声を出す。
「あまり怖い声を出すな、アルザード。ニーナが怖がるぞ」
アルザードと呼ばれたガタイのいいスキンヘッドのおっさんは、慌てた様子でニーナに凶悪な笑顔を浮かべる。
「おっと、ニーナちゃんいらっしゃい。こんな上司のお守りも大変だろう?」
おいコラ。誰が役立たずだ。
「大丈夫ですよアルザードさん。マスターは確かに面倒くさがり屋のろくでなしですが、ちゃんと仕事はこなすので」
ニーナ?褒めてんの?貶してんの?いや、貶してるんだろうな。
「コイツが仕事をしてる姿が想像できねぇよ。まぁ顔を知らないからしょうがないか」
「見たいか?」
「いや、いいわ。隠してるってことは事情があるって事だしな。人のは、踏み込んじゃいけない領域があるってもんよ」
話を聞いてわかる通り、アルザードは見た目は凶悪犯そのものだが、その性格はかなり優しいのだ。......ただ、見た目のせいでこの菓子店による人は少ない。
大抵の人は、子供の頃から来ていて知っているか、誰かの紹介で来るのだ。
正直俺もニーナも、最初のコイツの顔を見た時は少しビビった。
「それで?何買うんだ?ニーナちゃんがいるからサービスしてやるよ」
「お、全部タダでくれるってよニーナ。とりあえずこの店の在庫全部貰っとけ。ついでにこの店の利権も貰っとけ」
「おいグレイてめぇ耳ついてるか?」
こめかみに血管を浮かび上がらせたアルザードが、先程よりも更にドスの効いた声を上げる。
「もちろん付いてるさ。ニーナがいるから、サービスしてくれるんだろ?つまり全部タダでくれるんだろ?」
「なんでそうなる?!普通サービスって言ったら値引きだろうが!!」
「タダだってある意味値引きだろ?後、お前の普通なんぞ知らん。俺の普通は全額無料だからな。認識の違いとは怖いものだ」
「俺はてめぇの思考回路が怖ぇよ!!」
「えーと、取り敢えずこれで買えるだけください」
俺とアルザードのやり取りを横目に、ニーナはゼノンさんと魔王陛下から貰った金貨15枚の内3枚を渡す。
「相変わらず、えげつない額をポンと出すな。流石は魔王軍最高幹部様だ」
「言っとくが、その金はニーナが貰った小遣いだぞ。今日だけで15枚貰ってた」
「はぁ?!」
そりゃ驚くだろう。金貨15枚となれば半年生きていけるからな。俺も仮にも魔王軍最高幹部なので、それなりの給料を貰っているので金貨15枚ぐらいは簡単に出せるが.....
「ちなみに小遣いをあげたのは、ゼノンさんと魔王陛下な」
「............」
想像以上の大物の名前が出てきて、開いた口が塞がらないようだ。
目なんて、飛び出そうなぐらい見開いている。
「マジ?」
「マジもマジ、おおマジだ。あ、後、魔王陛下が俺の屋敷に来るから、美味そうなの頼むぞ」
それを聞いたアルザードは、今にも死にそうな顔だ。世間一般的には、魔王陛下は畏怖の象徴。強大な力を持ち、普通の魔族とは次元の違う存在だと噂されている。
そんな魔王陛下が、自分の作った菓子を食べると言われたのだ。見た目は凶悪犯のアルザードだが、中身は優しい小心者のおっちゃんの彼には荷が重いようだ。
「安心しろ。何回か既に食べてるから。魔王陛下曰く、俺が今まで出してやった菓子の中では、ニーナの次に上手いらしいぞ」
「そ、そうか?......ならいいが、口に合わなくて死刑!!とか無いよな?」
「そんなことで死刑にしてたら、今頃魔族は滅んでるよ。第一俺が、魔王陛下の前に立って生きてる時点で第一だろ?」
「あぁそうか、お前失礼の塊だもんな」
失礼な。俺だって礼儀をわきまえる場ではちゃんとしてるぞ。
「分かった。金貨3枚分だな?取り敢えず持ってくる」
そう言ってアルザードは、店の奥に消えていった。
「マスターマスター。残りのお金どうしましょう?ぶっちゃけ、マスターから貰ったお小遣いだけでも十分ですのに、今まで沢山の方からもお小遣い貰っているせいで、もうすぐ白金貨100枚ぐらい溜まりそうなんですよね」
「そんなにあるのか......まぁ、いつか使うかもしれないし、取っておきな。金はいくらあっても困るものじゃない」
「使うとしても、この戦争が終わってからですかね.....」
俺は、遠い目をするニーナの頭をグシグシと撫でながら
「かもな」
とだけ返事をした。
仮面をかぶり直し、城を出ていく。
魔王陛下は、後で勝手に屋敷に来るそうだ。あの人に護衛なんて必要ないだろうし、特に心配はしていない。.......いや、買ったお菓子が好みじゃないとか言われる心配はあるな。
ちょいちょい暇を見つけては、遊びに来るが、菓子を出すと大抵文句を言われる。
尚、ニーナの手作りお菓子は絶対に文句を言わない。
確かに美味しいが、一流の店と比べてしまうとやはり少し劣る。
俺はあまり高級な食材を使った料理が好きでは無いので、ニーナの菓子の方が好きなのだが.....魔王陛下も同じなのだろうか。
.....魔王陛下ならニーナの作った料理は、例え暗黒物質でもうまいうまい言って食べそうだな。
そんなくだらないことを考えながら歩いていると、とあるひとつの店に行き着く。
個人菓子店『甘味の誘惑』。俺とニーナの行きつけの菓子屋だ。
大手の店では無いので、かなり小さい店構えだが味は一流。それなりに手頃で美味しい菓子店として、一定の人気がある。
趣のあるドアを潜れば、そこは甘い匂いが充満していた。
「いらっしゃ........何だてめぇか」
営業の声から、俺を確認するとドスの効いた声を出す。
「あまり怖い声を出すな、アルザード。ニーナが怖がるぞ」
アルザードと呼ばれたガタイのいいスキンヘッドのおっさんは、慌てた様子でニーナに凶悪な笑顔を浮かべる。
「おっと、ニーナちゃんいらっしゃい。こんな上司のお守りも大変だろう?」
おいコラ。誰が役立たずだ。
「大丈夫ですよアルザードさん。マスターは確かに面倒くさがり屋のろくでなしですが、ちゃんと仕事はこなすので」
ニーナ?褒めてんの?貶してんの?いや、貶してるんだろうな。
「コイツが仕事をしてる姿が想像できねぇよ。まぁ顔を知らないからしょうがないか」
「見たいか?」
「いや、いいわ。隠してるってことは事情があるって事だしな。人のは、踏み込んじゃいけない領域があるってもんよ」
話を聞いてわかる通り、アルザードは見た目は凶悪犯そのものだが、その性格はかなり優しいのだ。......ただ、見た目のせいでこの菓子店による人は少ない。
大抵の人は、子供の頃から来ていて知っているか、誰かの紹介で来るのだ。
正直俺もニーナも、最初のコイツの顔を見た時は少しビビった。
「それで?何買うんだ?ニーナちゃんがいるからサービスしてやるよ」
「お、全部タダでくれるってよニーナ。とりあえずこの店の在庫全部貰っとけ。ついでにこの店の利権も貰っとけ」
「おいグレイてめぇ耳ついてるか?」
こめかみに血管を浮かび上がらせたアルザードが、先程よりも更にドスの効いた声を上げる。
「もちろん付いてるさ。ニーナがいるから、サービスしてくれるんだろ?つまり全部タダでくれるんだろ?」
「なんでそうなる?!普通サービスって言ったら値引きだろうが!!」
「タダだってある意味値引きだろ?後、お前の普通なんぞ知らん。俺の普通は全額無料だからな。認識の違いとは怖いものだ」
「俺はてめぇの思考回路が怖ぇよ!!」
「えーと、取り敢えずこれで買えるだけください」
俺とアルザードのやり取りを横目に、ニーナはゼノンさんと魔王陛下から貰った金貨15枚の内3枚を渡す。
「相変わらず、えげつない額をポンと出すな。流石は魔王軍最高幹部様だ」
「言っとくが、その金はニーナが貰った小遣いだぞ。今日だけで15枚貰ってた」
「はぁ?!」
そりゃ驚くだろう。金貨15枚となれば半年生きていけるからな。俺も仮にも魔王軍最高幹部なので、それなりの給料を貰っているので金貨15枚ぐらいは簡単に出せるが.....
「ちなみに小遣いをあげたのは、ゼノンさんと魔王陛下な」
「............」
想像以上の大物の名前が出てきて、開いた口が塞がらないようだ。
目なんて、飛び出そうなぐらい見開いている。
「マジ?」
「マジもマジ、おおマジだ。あ、後、魔王陛下が俺の屋敷に来るから、美味そうなの頼むぞ」
それを聞いたアルザードは、今にも死にそうな顔だ。世間一般的には、魔王陛下は畏怖の象徴。強大な力を持ち、普通の魔族とは次元の違う存在だと噂されている。
そんな魔王陛下が、自分の作った菓子を食べると言われたのだ。見た目は凶悪犯のアルザードだが、中身は優しい小心者のおっちゃんの彼には荷が重いようだ。
「安心しろ。何回か既に食べてるから。魔王陛下曰く、俺が今まで出してやった菓子の中では、ニーナの次に上手いらしいぞ」
「そ、そうか?......ならいいが、口に合わなくて死刑!!とか無いよな?」
「そんなことで死刑にしてたら、今頃魔族は滅んでるよ。第一俺が、魔王陛下の前に立って生きてる時点で第一だろ?」
「あぁそうか、お前失礼の塊だもんな」
失礼な。俺だって礼儀をわきまえる場ではちゃんとしてるぞ。
「分かった。金貨3枚分だな?取り敢えず持ってくる」
そう言ってアルザードは、店の奥に消えていった。
「マスターマスター。残りのお金どうしましょう?ぶっちゃけ、マスターから貰ったお小遣いだけでも十分ですのに、今まで沢山の方からもお小遣い貰っているせいで、もうすぐ白金貨100枚ぐらい溜まりそうなんですよね」
「そんなにあるのか......まぁ、いつか使うかもしれないし、取っておきな。金はいくらあっても困るものじゃない」
「使うとしても、この戦争が終わってからですかね.....」
俺は、遠い目をするニーナの頭をグシグシと撫でながら
「かもな」
とだけ返事をした。
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