【最弱】の召喚術師【最強】の軍勢につき

雪雪ノ雪

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第一部 王国編 第一章 迷宮都市インゼル

束の間の一時

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 薬屋から屋敷に帰ると、門の前で立ち往生している幼女が1人いた。

「何やってるんだ。ロリババア」

「ようやく来たか!!妾を待たせるとは、いい度胸じゃな!!」

 門の前でウロウロしていた魔王陛下は、いかにも怒ってますといった顔をしながら、俺に文句を言う。

「知らねぇよ。待ちたくなきゃ、一緒に来ればよかったじゃねぇか」

「妾、仮にも魔王でこの国で一番偉いからのぉ。出かけるには一言言ってから、出ていかねばならんのじゃ」

 最もらしい事を言っているが、この魔王陛下ロリババアは何も言わずに出てくと、後で宰相辺りに小言を言われるのが嫌なだけだ。

「なら護衛は?」

「んなもん要らん。妾より弱いやつ等に、護衛されたくないわ」

 多分、護衛を付けられる前に飛び出してきたな?俺の屋敷に来る時はいつも護衛をつけていない所を見ると、常習犯だ。

 魔王陛下の世話する奴らも大変だな。俺は、この魔王陛下ロリババアに振り回されている人達に心から合掌しておいた。

「ほれ、さっさと妾を屋敷に上げんか。甘いものと紅茶が待っておる」

 俺はため息を吐きつつ、屋敷の門を開けるのだった。

 屋敷に入り、ニーナに魔王陛下の案内は任せ、俺は買ってきた菓子と傷薬を置くべき場所へと置いていく。

 ついでに、明後日の任務に持っていく物を分けておく。こう言うのは早め早めにやらないと、忘れ物をしてしまうからな。

 荷物整理が終わり、俺たちが食べる分の菓子を持って客間に行くと、紅茶のいい匂いが漂ってくる。

「いい匂いがするのぉ。流石はグレイが好むと言っただけの紅茶じゃ。飲まずとも、その美味しさを感じられるわ」

「匂いだけで美味いと感じるなら、飲まなくてもいいな?菓子だけ食って帰れ」

 紅茶の匂いに頬を緩ませた情けない顔をした魔王陛下の前に、アルザードから買った菓子も置く。

「馬鹿を言うな。紅茶は飲むものであって、匂いだけを楽しむものでは無いのじゃ。飲むに決まっとるだろう?後、菓子だけは食って良いとか、お主は優しいのぉ。妾は涙が出てきそうじゃぞ」

「お姉ちゃん。マスターは優しいよ。憎まれ口を叩いても、ちゃんと優しさが滲んでいるからね」

 紅茶を入れ終わったニーナが、机に紅茶を並べる。

 俺はニーナが加勢した魔王陛下には、口で勝てないことを知っているので、何も言わずに紅茶の置かれた席に着く。

 普段は座らないソファの柔らかい感触が、今日一日の疲れを癒す。

「やはり、ニーナの入れた紅茶は美味いのぉ。ニーナや、やはり妾のところに来ないか?ニーナの望むものをなんでも買ってやるし、なんなら魔王の座をくれてやるぞ?」

 紅茶を入れてもらうだけの為に、とんでもないものを持ち出してきたよこの人。

 確かにニーナの紅茶は美味いけど、それに魔王の席を賭けちゃダメでしょ。もう少しお前は、魔王の自覚持とう?

「それじゃ、マスターの元で働かせてお姉ちゃん」

「え、その~それではニーナを引き抜けないではないか.....」

 屈託ない笑顔で即答するニーナにら大分困惑する魔王陛下。

 俺の元で働いたら、今まで通りだもんな。

「どうすれば良いのだ.....グレイ助けろ」

 ほんの少し涙目でこちらを見てくる魔王陛下。

「いや、俺に助けを求めるなよ。大体ウチの唯一の部下を、引き抜こうとするな」

「そんな釣れない事を言うでは無い!!妾とお主の仲ではないか」

「お生憎様、どんな仲なのか俺は分からないのでな。諦めろ」

「むぅ..........」

 物凄く悔しそうな(涙目)顔をしている。

 どんだけニーナを引き抜きたいんだよ、こいつは。

「ごめんね、お姉ちゃん。私、マスター以外に従う気ないから.....」

 心の底から申し訳なさそうな顔をしながら、ニーナは魔王陛下の心にトドメを刺す。

 サラッとトドメを刺すニーナには、少し感心する。

「ふぇぇぇん!!グレイ!!お主、ニーナに一体どういう教育をしたのだ?!あの状況でトドメを刺しに行けというのが、お主の教育か?!」

 いつものゆったりとした威厳ある魔王陛下から、見た目相応の幼女になって泣く魔王陛下は、俺の胸ぐらを掴み、揺すりながらニーナへの教育はどうなっているのかと問いただしてくる。

「自業自得だ、馬鹿者。ニーナを引き抜こうとしたバチが当たったんだよ。あと揺するのやめて。酔うから」

 揺するのをやめた魔王陛下は、菓子を口にも放り込む。

「大体.....モグモグ......のだ.......モグモグ。確かに.......モグモグ........どさ......モグモグ」

 あのー魔王陛下。ブツブツ言いながら、菓子食べるのやめてもらっていいですかね?紅茶楽しめないんですけど....

「ところでグレイ」

 しばらくすると、ショックから立ち直った魔王陛下が質問をなげかける。

「ん?」

「このお菓子は美味いのぉ。どこで買ったのじゃ?」

 珍しい。ニーナが作った菓子以外は褒めない魔王陛下が、アルザードの作った菓子を気に入ったようだ。

 1度ニーナが作った菓子の次に美味いって言っていたが、店の場所は聞かなかったしな。

「『甘い誘惑』って所の菓子屋だ。大通りのから2本外れたミトノ通りの小さな個人経営店だ。アルザードって奴が菓子を作って売っている」

「ほぅ、今度行ってみるかのぉ」

「出来れば、お前の部下に行かせてやれ。じゃないとアイツが倒れちまう」

 魔王陛下の顔は、魔王国国民によく知られている。当然アルザードも、その顔を知っているわけだ。

 小心者のだ奴は、魔王陛下が恐怖の化身に見えている。そんな中、魔王陛下がアイツの店行ったら気絶するのは必然だろう。

「嫌じゃ。職人の顔を見てみたいのでのぉ。妾が直々に行くとしよう」

 俺は未来のアルザードにそっと手を合わせた。
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