【最弱】の召喚術師【最強】の軍勢につき

雪雪ノ雪

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第一部 王国編 第一章 迷宮都市インゼル

獄鎖

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ニーナが領主の屋敷で暴れている頃、俺とアザンは街を出て一本木の所でラオルフさんと合流していた。

 一本木はこの街の外の目印によく使われるので、多くの人が集まっている。ちょっとした待合所だ。

「お待ちしておりました。グレイ様、アザンさん」

 俺達を見つけたラオルフさんが、深深と頭を下げる。

 今の俺は、周りから怪しまれないように仮面を被っていないが、彼はそういう迷信は信じないらしい。ただ、顔には少し怯えが見えるので、行きの時はなるべく仮面を被っていた。

 アザンは産まれも育ちも王国の為、こう言う魔族間で言われる迷信はそもそも知らない。恐らく、魔王国に行ったら知るだろうが、彼女はそれだけで俺を判断しないだろう。

「お待たせ。もう準備はできているのか?」

 俺達はラオルフさんが用意した馬車に乗り込むと、そのまま出発する。

「はい。我ら第7軍の全ての人員が、この街から引き上げました。ついでに、商人ギルドからたんまり金をせしめたので、資金が潤いましたよ。あっはっはっはっは!!」

 おいおい、まさか商人ギルドから金を借りてトンズラこいたのかこの人。選択としては悪くない。商人ギルドの金貸しは、書類上に記録される。書類が無くなれば、とぼけれるのだ。

「ちなみに、幾ら借りたんだ?」

「なんと白金貨15枚!!いやぁ、無理言った甲斐がありますね。どうせ焼け落ちる街です。金の1つ2つ、私達が有効活用しても文句はないでしょう」

 白金貨15枚も借りパクする気なのか..........

 もし俺がしくじって街が落とせないと、ラオルフさんは白金貨15枚を返す為に働くことになる。街を落とすついでに、商人ギルドの登録者管理の書類と契約書を燃やさねば。

「あ"ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 唐突にアザンが頭を抱えて叫び出す。

「どうした?!」

「私もその方法使えばよかった!!魔王国に行くんだから、闇金から金を借りても追われないのに!!」

 .................俺の心配を返せこの赤毛馬鹿。とりあえず、俺はアザンの頭を割といい勢いで殴る。ゴン、と鈍い音と共に、アザンは抱えていた頭をさらに抱えて涙目でこちらを見る。

「何するんだよ!!」

「お前が紛らわしい風に騒ぐからだ!!」

 てっきり、何か忘れちゃいけないものを忘れたり、取り返しのつかない魔道具を暴走させたのかと思ったぞ........

「グレイ様、この後何方に行かれますか?」

「この道を真っ直ぐ行くと、山があったはずだろ?!そこの麓で下ろしてくれ」

「グレイさん。この街を1人で滅ぼすんだよね?私も見学したい」

 目をキラキラさせながら、こちらを見てくる。俺は構わないが、アザンを魔王国に送っていくのはラオルフさんだ。俺はラオルフさんの方を見ると、彼は視線を感じとったのかコクリと頷いた。

「いいぞ。ただし、邪魔はするなよ」

「流石に、そのぐらいは分かっているさ。私だってそこまで馬鹿じゃない」

 少し不安だが、まぁいいだろう。ニーナに周囲の警戒とかさせるから、アザンが何かやらかしそうになっても止めてくれるだろうし。

「それより、ニーナちゃんはいいのか?」

 アザンはニーナの実力を知らない。アザン本人も、さほど強くは無いため、見ただけではニーナの強さが分からないのは当然だと言えた。

 多分アザンには、ニーナが俺の付き人ぐらいにしか見えてないんだろうな。あの貴族ブタを殺った時も、何が起こったか把握しきれてなくてニーナの強さが認識できてないだろうし。

「大丈夫ですよ。ニーナ様は、魔王軍屈指の強さを誇るお方なので」

 俺が答えようした代わりに、ラオルフさんが応える。

 俺はともかく、ニーナの強さは魔王軍全体が知っている。情報命のラオルフさんも、知っているようだ。

「そうなのか?あまり強そうには見えないが.......」

「強い所ではありませんよ。たったお1人で、スタンピードを止めたお方なのですよ。魔王国では『獄鎖』ニーナと呼ばれておりますので」

『獄鎖』は、ニーナの二つ名だ。80年ぐらい前に、魔王国の管理外のダンジョン迷宮でスタンピードが発生。近くの街が襲われるが、たまたま居合わせたニーナがスタンピードを抑えたのだ。え?お前は何やってたって?俺の魔法は召喚魔法だから、スタンピードの魔物と間違われちゃうんだよね。だから避難誘導してましたハイ。

 その時、死者の呪縛鎖テュエリアンをぶん回して魔物を殺し回っていたニーナを見た魔王軍の1人が、「地獄の鎖だ...........『獄鎖』だ!!」も言ったことが原因でニーナの二つ名が決まった。

 今でもその街では英雄扱いされており、偶にふらっと訪れると握手を求められたりする。

「へぇ、そんなに凄い子なんだ。王国じゃ、集めれる情報に限界があるからなぁ.........」

 むしろ、魔王国にいるより情報集めれたらびっくりだよ。

 そんなやり取りをしながら、馬車に揺られ事3時間。日は完全に落ち、闇が空を包む。

「あ、マスター!!遅いですよ!!」

 山の麓に着くと、既にニーナは到着しており手を振ってくる。

「悪かったなニーナ。所で仕事はキッチリ出来たか?」

 俺が馬車から降りると、ニーナは寄ってきて嬉しそうに抱きつく。そんなニーナの頭を撫でる。

「はい!!これですね。情報は抜いて第7軍の方々に渡したので、問題ないはずです」

 マジックバックから取り出されたのは、1つの首。死体を見慣れている俺でも、少し顔を顰めるような顔をした死体だった。詳細はグロいので省く。

「よくやったぞニーナ。コレでお土産は十分だな。薬屋に配達は頼んであるから、明日には届くだろ」

「喜んでくれますかね?この国の国王は」

「きっと喜んでくれるぞ。悲鳴という名の歓喜を上げながらな」
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