高難易度ダンジョン配信中に寝落ちしたらリスナーに転移罠踏まされた ~最深部からお送りする脱出系ストリーマー、死ぬ気で24時間配信中~

紙風船

文字の大きさ
7 / 81
第100層 灰霊宮殿 -アッシュパレス-

第7話 ボス部屋の隠し部屋

しおりを挟む
【禍津世界樹の洞 第100層 深淵の玉座アビスクラウン


 部屋は薄暗い。背後のボス部屋の燭台の灯りが少し入ってきてはいるが、それでも精々足元を照らすくらいで、2歩先は影となって何も見えなかった。

「しゃーない……ライト付けるか」

 僕は肩の上で浮遊する魔導カメラを掴み、レンズとは逆部分、お尻のところにあるコントロールパネルを操作し、ライトを点灯させた。

 丸いレンズを覆うようにドーナツ型に備え付けられたライトが部屋の中を照らす。最初に警戒するべきはモンスターの存在だ。ライトに照らされて襲い掛かってくるようなモンスターは……どうやらいない。

「ふぅ……ここはなんだろう……倉庫……な訳ないよな」

 玉座の間に倉庫が隣接されてるなんて話は聞いたことがない。しかし見渡す限り、荷物のような物がそこら中に置かれていた。

「何の部屋だろう? 有識者いるか?」

 スマホを取り出し、コメント欄を見るが助かりそうな情報はなかった。

 仕方なく僕はその辺の箱やら何やらを物色し始めた。何か役に立つ物があれば助かるんだが……。

「……お? なんだあれ」

 積み重なった木箱の向こう側に何かが見えた。よく見ようと顔を近づけてみるが、薄暗くて見えない。
 ライトで照らしながら見ようとしても、僕が邪魔で結局影になってよくわからなかった。

「うーん……あ、そうだ」

 ポン、と手を叩いた僕は魔導カメラを掴んで木箱の隙間に押し付け、スマホの配信画面を見てみる。こうすればカメラの映像が直接……うーん、画面が小さくてよく見えない。

 配信画面をスワイプし、コメント欄を確認してみる。

「何が見えるか教えて~」

『扉』
『扉』
『ドア』

「ドア? なんでこんな積んだ木箱の裏にドアがあるんだよ……」

 理由は分からないが、端的に言って怪し過ぎる。何があるか分からないが、何かを隠しているのは明らかだった。

「怪し過ぎるよな~? よーし、この邪魔な木箱を動かして開けてみようぜ!」

 コメント欄は大盛り上がりだ。彼等もこのドアの向こうが気になってしょうがないみたいだ。

 そりゃあそうだ。高難易度ダンジョンの誰も見た事がない最下層の隠された扉。

 気にならないはずがなかった。

 僕はゆっくりと一番上の木箱に手を掛ける。中身は何が入ってるのか分からないが、そんなに重くない。

 それを慎重にゆっくりと床の上に下ろす。万が一落としたとなったら、もしかしたらラスボスが駆け込んでくるかもしれない。失敗は許されないだろう。

 ゆっくり、ゆっくりと時間を掛けて木箱を下ろしていく。下ろした木箱を丁寧に積んで足場にし、上の方の木箱も下ろしていく。

「ふぅ……こんなもんかな」

 グッと腰に手を当てて背筋を伸ばす。久しぶりに肉体労働をした気分だ。

 木箱の隙間から覗くことしかできなかった謎のドアは、しっかりとカメラに納まっている。
 当然、僕にもしっかりと見えていた。現れた扉は、この部屋に入ってきた扉よりも古く、所々切れ目のような穴がある。ちょっと強めに体当たりとかしたら壊れてしまいそうだ。しないけども。

「開けてみるか……!」

 コメント欄もよう盛り上がっておる。急かすコメントばっかりだ。視聴者数も10万以上をキープしている。時間が時間だし寝る人もいるかもしれないが、それを補うように新規の人も増えている。

 よく見ればチャンネルフォロー数も結構な数だ。このフォローとは別に月額登録ができるサブスクライブ登録者数も、僕には想像もつかないような人数が登録されていた。

 そーっとドアノブに触れる。熱くもないし、電気も流れていない。ぎゅっと握り締め、手前に引く。

「……あ!」

 扉の向こうは小さな小部屋だった。調度品も家具もない寒々しい部屋だった。だが、その中央に、一つだけ物が置いてあった。

「宝箱だ……!」

 カメラのライトが照らし出したのは金の装飾が施された黒い箱だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...