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May
04
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「まだ時間あるよね?」
無言の帰り道も過ぎ、エレベーターに乗って安堵した瞬間、その言葉は降りかかってきた。
どういう意味だと考える暇もなく、反射的に頷くと会長は俺が降りる予定だった4階のボタンをキャンセルし、エレベーターは無情にも6階へと向かう。
6階は生徒会だけのフロア。
生徒会専用のカードキーがないと6階のボタンは押せない。
一般生徒は立ち入り禁止というわけでは無いが基本は用事がない限り立ち入り禁止というのが暗黙のルールだった。
「ついてきて」
そう言われるままにエレベーターのドアが開くと会長の後ろを歩く。
こんなところ人に見られたらやばいんじゃないのか。と考えたがこの人はうまく言い訳するのだろう。
自分達が見慣れたものよりも少し豪華な廊下は人が少ないせいか、驚くほど静かだった。
カードキーで開けられた部屋に入って、会長が電気がつけると明らかに自分達が過ごしている部屋よりも広く、綺麗な部屋が目の前に広がる。
「そこのソファー座っていいよ。コーヒーでいい?」
「あ、はい…ありがとうございます…」
自分の置かれた立場が理解できないまま、ソファーに座ってだだっ広い綺麗な部屋を眺める。
綺麗というか物があんまりない。
どこか人間味に欠ける部屋だった。
机に置かれた熱々のコーヒーに適当に置かれた砂糖とミルクをいれ、かき混ぜて飲むと暫く沈黙が続く。
どうしようかなと考えているとどこから出してきたのか見覚えのある問題集が目の前の机に出された。
「橘の忘れ物でしょ、これ」
「…あ、俺の数学の問題集…!」
昨日の放課後、図書室で暇潰しに開いた水色の問題集だった。
これでわざわざ明日職員室に行かなくてすむ。
「さっき鍵返しに行った時、職員室にあったから預かってきた」
「そうだったんですか。どうもありがとうございます」
それなら帰り道に渡してくれたらよかったのに。
そう思っても口には出せず、とりあえずペラペラと捲りながら中身を確認してみる。
誰かにイタズラもされておらず、最後見た時のまま。記号と数字の羅列に頭がくらくらしながらも安心して鞄に突っ込んだ。
「23ページの問1と問5間違ってたよ」
「…チェックしたんですか」
「暇だったから。やっぱり特待生なだけあって結構頭いいね」
全教科満点を叩き出す会長に言われると嫌味にしか聞えないが、気のせいだと思いたい。
「でもその様子だと特待生結構ギリギリでしょ」
「まあ…」
「勉強を教えてくれてた要は入院しちゃったしね」
「なんで教えてもらってたこと知ってるんですか」
そんな俺のツッコミには動じず、頬杖をついて少し意地悪そうに微笑んで会長は続けた。
「要の代わりに勉強教えてあげよっか」
言葉を理解するのに5秒はかかった。
誰が誰に?どういうこと?
訳も分からず目を見開くと俺の驚いた顔なんて興味ないらしい目の前の男はコーヒーを啜った。
「会長に教えて貰えるなんてそりゃ、めちゃくちゃありがたいですけど…なんで?」
「勿論タダでは教えてあげない。こっちにも条件がある」
生徒会長様に勉強教えて頂くことに釣り合う条件ってなんだ。全く予想がつかない。
ぐるぐる考えていると隣に座っていた会長が身体がくっつくくらい身を寄せてきた。
反射的に後ろに倒れてしまい、それでも近付いてくる会長のせいで傍から見ると押し倒されているような体制になる。
「あの、会長…」
「条件、なんだと思う…?」
甘く低い声。そんな急に耳元で囁かれたら誰だって同じ予想をするだろう。
よく漫画とかで見る対価は身体でってやつでは?と。
無言の帰り道も過ぎ、エレベーターに乗って安堵した瞬間、その言葉は降りかかってきた。
どういう意味だと考える暇もなく、反射的に頷くと会長は俺が降りる予定だった4階のボタンをキャンセルし、エレベーターは無情にも6階へと向かう。
6階は生徒会だけのフロア。
生徒会専用のカードキーがないと6階のボタンは押せない。
一般生徒は立ち入り禁止というわけでは無いが基本は用事がない限り立ち入り禁止というのが暗黙のルールだった。
「ついてきて」
そう言われるままにエレベーターのドアが開くと会長の後ろを歩く。
こんなところ人に見られたらやばいんじゃないのか。と考えたがこの人はうまく言い訳するのだろう。
自分達が見慣れたものよりも少し豪華な廊下は人が少ないせいか、驚くほど静かだった。
カードキーで開けられた部屋に入って、会長が電気がつけると明らかに自分達が過ごしている部屋よりも広く、綺麗な部屋が目の前に広がる。
「そこのソファー座っていいよ。コーヒーでいい?」
「あ、はい…ありがとうございます…」
自分の置かれた立場が理解できないまま、ソファーに座ってだだっ広い綺麗な部屋を眺める。
綺麗というか物があんまりない。
どこか人間味に欠ける部屋だった。
机に置かれた熱々のコーヒーに適当に置かれた砂糖とミルクをいれ、かき混ぜて飲むと暫く沈黙が続く。
どうしようかなと考えているとどこから出してきたのか見覚えのある問題集が目の前の机に出された。
「橘の忘れ物でしょ、これ」
「…あ、俺の数学の問題集…!」
昨日の放課後、図書室で暇潰しに開いた水色の問題集だった。
これでわざわざ明日職員室に行かなくてすむ。
「さっき鍵返しに行った時、職員室にあったから預かってきた」
「そうだったんですか。どうもありがとうございます」
それなら帰り道に渡してくれたらよかったのに。
そう思っても口には出せず、とりあえずペラペラと捲りながら中身を確認してみる。
誰かにイタズラもされておらず、最後見た時のまま。記号と数字の羅列に頭がくらくらしながらも安心して鞄に突っ込んだ。
「23ページの問1と問5間違ってたよ」
「…チェックしたんですか」
「暇だったから。やっぱり特待生なだけあって結構頭いいね」
全教科満点を叩き出す会長に言われると嫌味にしか聞えないが、気のせいだと思いたい。
「でもその様子だと特待生結構ギリギリでしょ」
「まあ…」
「勉強を教えてくれてた要は入院しちゃったしね」
「なんで教えてもらってたこと知ってるんですか」
そんな俺のツッコミには動じず、頬杖をついて少し意地悪そうに微笑んで会長は続けた。
「要の代わりに勉強教えてあげよっか」
言葉を理解するのに5秒はかかった。
誰が誰に?どういうこと?
訳も分からず目を見開くと俺の驚いた顔なんて興味ないらしい目の前の男はコーヒーを啜った。
「会長に教えて貰えるなんてそりゃ、めちゃくちゃありがたいですけど…なんで?」
「勿論タダでは教えてあげない。こっちにも条件がある」
生徒会長様に勉強教えて頂くことに釣り合う条件ってなんだ。全く予想がつかない。
ぐるぐる考えていると隣に座っていた会長が身体がくっつくくらい身を寄せてきた。
反射的に後ろに倒れてしまい、それでも近付いてくる会長のせいで傍から見ると押し倒されているような体制になる。
「あの、会長…」
「条件、なんだと思う…?」
甘く低い声。そんな急に耳元で囁かれたら誰だって同じ予想をするだろう。
よく漫画とかで見る対価は身体でってやつでは?と。
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