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May
02
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洗い物くらいやりますよ、と引き受けると会長はソファーに座って俺の問題集を眺めていた。
「普通に学年一位取れそうじゃん」
「やー…白木がいるんで毎回厳しいですよ」
「白木って、風紀委員会のお姫様の?」
「はい。なんとか毎回勝ってますけど」
風紀委員会のお姫様こと風紀副委員長、白木葵。
可愛いらしい名前の通り、可愛らしい見た目をしており、学園内では親衛隊ができるくらいの人気がある。
どんな性格かはあまり知らないが、とても真面目ですごい努力家だということは知っていた。
その証拠に俺が毎回1位を取るたびに泣きそうな顔でトイレ駆け込む姿を目にしている。
そして、次すれ違った時に必ず次は負けないからと宣言してくるのだ。
「白木とはどのぐらいの点で競ってるの?」
「大体全教科合わせて3問ミスったらヤバイって感じですかね」
「確かにこの感じだと厳しいね」
「…ですよね」
自分でそう思うよりも他人からそうキッパリ言われるとなかなかショックなものある。
ペラペラと軽く参考書を眺めながら「ま、全教科満点だね」と呟いた会長に思わず聞き返した。
「…はい?」
「こういうのは僅差で勝つからダメなんだよ。全教科満点とって相手を再起不能にしないと」
この男真面目に話しているが、言ってることはめちゃくちゃである。
放心状態の俺を完全無視。
涼しい顔で「分かんない所ってどこ?」とシャーペンを握っているので、大人しく「こことここです…」と答えると地獄のスパルタ特訓が開始されたのであった。
「そこ違う。ここも」
「はい、バツ」
「そこさっき説明したよね?」
次々と飛び交う罵倒。
シャーペンでの暴力。
とんだ地獄の真っ只中である。
そして時刻は0時を回っていた。
暗記系科目、現代文、古典は問題ないと踏んだのか、数学英語で集中攻撃されており、間違えるとたまにシャーペンで軽く手を叩かれる。
どう見ても虐待です。
「英語はどうにかなりそうだけど、数学が微妙だな…要に教えてもらってる時どうしてたの?」
「要先輩もあんまり得意じゃないんで…とりあえず公式当て嵌めたらいけるいけるって感じのノリで…」
「…もしかして今まで間違えてた教科って数学じゃないよね?」
「その通り」
会長がアホかと言いたそうな顔で溜息を一つ。
言われた通り数学の応用問題がそこそこ苦手で大体白木と僅差になる原因は数学である。
要先輩には「数学なんて公式覚えて後は適当で」と言われていたのであんまり気にしたことは無かったが、会長に言われて初めて自覚した。
数学さえ解決したら満点いけるのでは。
「…そういえば、要先輩と会長って仲いいんですか?」
「どうだろ。まあ委員会とか学年で顔合わせるくらいの仲だよ」
会長が丸をつけている間、ふと疑問に思ったことを口にしてみた。
名前を呼び捨てにしているのをみる限り結構親しそうに見えたがそうでもないらしい。
要先輩自体がフレンドリーなタイプだからそうなるのかな。
「そろそろ寝よっか」
「あ、はい」
いつの間にか丸つけは終わった様子の会長から切り出された言葉でようやく自分が満点を取ったことを知り、安堵してソファーにもたれ掛かる。
「こっちで一緒に寝る?」
「それは遠慮します」
仕方ない、橘はソファーだな、とか言って既に掛け布団がソファーに用意されている時点で馬鹿にされているのとは明白なのだが、そっと心の奥にしまい込んだ。
「普通に学年一位取れそうじゃん」
「やー…白木がいるんで毎回厳しいですよ」
「白木って、風紀委員会のお姫様の?」
「はい。なんとか毎回勝ってますけど」
風紀委員会のお姫様こと風紀副委員長、白木葵。
可愛いらしい名前の通り、可愛らしい見た目をしており、学園内では親衛隊ができるくらいの人気がある。
どんな性格かはあまり知らないが、とても真面目ですごい努力家だということは知っていた。
その証拠に俺が毎回1位を取るたびに泣きそうな顔でトイレ駆け込む姿を目にしている。
そして、次すれ違った時に必ず次は負けないからと宣言してくるのだ。
「白木とはどのぐらいの点で競ってるの?」
「大体全教科合わせて3問ミスったらヤバイって感じですかね」
「確かにこの感じだと厳しいね」
「…ですよね」
自分でそう思うよりも他人からそうキッパリ言われるとなかなかショックなものある。
ペラペラと軽く参考書を眺めながら「ま、全教科満点だね」と呟いた会長に思わず聞き返した。
「…はい?」
「こういうのは僅差で勝つからダメなんだよ。全教科満点とって相手を再起不能にしないと」
この男真面目に話しているが、言ってることはめちゃくちゃである。
放心状態の俺を完全無視。
涼しい顔で「分かんない所ってどこ?」とシャーペンを握っているので、大人しく「こことここです…」と答えると地獄のスパルタ特訓が開始されたのであった。
「そこ違う。ここも」
「はい、バツ」
「そこさっき説明したよね?」
次々と飛び交う罵倒。
シャーペンでの暴力。
とんだ地獄の真っ只中である。
そして時刻は0時を回っていた。
暗記系科目、現代文、古典は問題ないと踏んだのか、数学英語で集中攻撃されており、間違えるとたまにシャーペンで軽く手を叩かれる。
どう見ても虐待です。
「英語はどうにかなりそうだけど、数学が微妙だな…要に教えてもらってる時どうしてたの?」
「要先輩もあんまり得意じゃないんで…とりあえず公式当て嵌めたらいけるいけるって感じのノリで…」
「…もしかして今まで間違えてた教科って数学じゃないよね?」
「その通り」
会長がアホかと言いたそうな顔で溜息を一つ。
言われた通り数学の応用問題がそこそこ苦手で大体白木と僅差になる原因は数学である。
要先輩には「数学なんて公式覚えて後は適当で」と言われていたのであんまり気にしたことは無かったが、会長に言われて初めて自覚した。
数学さえ解決したら満点いけるのでは。
「…そういえば、要先輩と会長って仲いいんですか?」
「どうだろ。まあ委員会とか学年で顔合わせるくらいの仲だよ」
会長が丸をつけている間、ふと疑問に思ったことを口にしてみた。
名前を呼び捨てにしているのをみる限り結構親しそうに見えたがそうでもないらしい。
要先輩自体がフレンドリーなタイプだからそうなるのかな。
「そろそろ寝よっか」
「あ、はい」
いつの間にか丸つけは終わった様子の会長から切り出された言葉でようやく自分が満点を取ったことを知り、安堵してソファーにもたれ掛かる。
「こっちで一緒に寝る?」
「それは遠慮します」
仕方ない、橘はソファーだな、とか言って既に掛け布団がソファーに用意されている時点で馬鹿にされているのとは明白なのだが、そっと心の奥にしまい込んだ。
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