異世界往来の行商生活《キャラバンライフ》:工業品と芸術品でゆるく生きていくだけの話

RichardRoe(リチャード ロウ)

文字の大きさ
22 / 60

第22話 現代商売その4:仮想通貨マイニング(前半)

しおりを挟む
 ちなみにキャンドルに目を付けたのは理由がある。
 それは、異世界でも売れるんじゃないか、しかも売れたら卸先を複数広げられるんじゃないか――という販売先の拡張性の高さである。

 仮説を試すため、一度試しに露店でも売ったことがある。
 その時の売れ行きは非常に良好であった。

 解説すると、この世界における蝋燭は二種類存在する。それぞれ獣脂を使ったものと蜜蠟のもの。前者の方は炊いたときの匂いがきついため、貴族階級や聖職者に好まれたのはもっぱら後者の蜜蠟のものであったという。

 そして、香り付きのキャンドルともなれば、それは高級な嗜好品となる。そもそも、何の香り付けもしていない太めの蜜蠟のキャンドル二本セットが、ワイン一本と同じぐらいの物価と同じぐらいなので、結構な高級品であるといえよう。
 これが、香り付きのアロマキャンドルともなるとますます値段が跳ね上がる。

「アロマキャンドルって相場の五倍の値段で売れるのか……凄いな」

 異世界の金銭感覚は分かりにくい。だが同じ商品の相場価格と比較するとそのすごさがわかる。
 相場の五倍というのも凄いが、これは熟練の石工や職人を五日ぐらい雇える程度の値段になるらしい。キャンドル一本だけでこんな値が付くなんて、現代日本では考えにくいことである。

「でも効率で考えたら……キャンドルを日本で売って、その売り上げで工芸品を買って異世界で売った方がまだ利益が出るんだよな」

 冷静に電卓を叩きながら、俺はそうぼやいた。
 日本でも、手のかかったキャンドルは一本あたり3,000円~10,000円ぐらいで販売することができる。大手フリマサイト複数に出品した結果、その程度の値段帯でもそれなりに売れることが分かった。
 それを考えたら、10万円ぐらいを元手に工芸品を複数買いあさった方が利幅が大きくなる。

 異世界で蝋燭作って成り上がる、というのは、ないわけではないがやる旨味が薄いらしい。

「うーん、パルカもやる気になってくれてるのはいいことなんだけど、ちょっと在庫が出来つつあるからな……」

 キャンドルは売れている。日本でも売れるし異世界でも売り捌ける。
 売れるのだが、簡単かつ大量に作れ過ぎてしまうので、パルカみたいな子がちょっと本気を出してしまったらあっさり何十個も出来上がる。
 今、俺の家に大量のキャンドルの在庫が出来ているのは、そういった背景がある。

 もちろんキャンドルは腐らないので、在庫が出来てもそんなに困ったものではないのだが――。

「……しばらく動画投稿とかSNS投稿を頑張って、顧客の認知度上げていくかあ」

 これもまた修行である。
 副業が軌道に乗るまでは、こつこつ地道に営業活動に励まないといけない。幸い、頑張れば頑張るほど結果が出てくるものなので、そこまで気落ちするような話ではなかった。





 ◇◇◇





 実は、現代日本と異世界イルミンスールの間の交易でなんとか使えないかずっと悩んでいるものが一つあった。
 しかしそれは簡単に輸出入ができるようなものではなく、そもそも持ち運べるものではなかった。

「季節のずれ……って、どうやって活かせばいいんだろうな」

 そう、季節の差。

 今まで特段触れる機会がなかったのであえて特筆してなかったが、交易都市ミュノス・アノールと日本の季節は夏冬がおおよそ真逆の関係にあるらしかった。異世界イルミンスールの公転周期や自転周期なども気になるところだが、その辺は一旦無視して暦を見ると、確かに日本の四季と逆の関係になっている。
 もっとも、イルミンスールでは四季ではなく、夏冬の二季と中間季という概念になるらしい。

「理想を言うなら三か月ぐらいのずれがよかったな。それなら必ずどちらかの季節が春か秋の気候になるから、寝る時が快適なんだけど」

 流石にそれは欲張りすぎであろうか。
 暑さ寒さがちょうど真逆だと、快適な中間の気候を探すのに苦労する。

「でもまあ、鏡越しにコンセントを引っ張れることは分かったから、そんなに悲観はしてないけどな」

 苦笑する。
 鏡越しにコンセントを引っ張れるということはつまり、扇風機やヒーターが運べるということである。異世界情緒はまるでないが、文明の利器の便利さには勝てない。俺はさしづめ、異世界イルミンスールで初めて電化製品をつかった男ということになるだろう。

 電工ドラム、というものがある。
 コンセントから離れた場所でも電源を確保できる便利な道具であり、よく学校の体育祭だとかで使われるものは防水対応した屋外用電工ドラムである。
 これを使って、俺はイルミンスールでも電化製品を利用しているのだった。
 とはいっても小屋の中だけであるが。
 さすがに現地の人に電化製品を見せるわけにはいかないだろう。

 ガソリンの発電機を使うという手もあるが、音もうるさいし値段もかかる。コンセントを使えるならそれに越したことはない。

「やっぱりコンセントがあるのは便利だよな。この世界の王侯貴族でも、こんな快適な生活はできないだろうよ」

 ごろんと寝転がってスマホを触る、というただそれだけの行為だが、この世界で同じことをできる人間は他にいるまい。

(……コンセントを使って金儲けできる方法、ぱっと思いつくのはあれしかないかな)

 一応、電工ドラムを買ってまでこんなことをしているのには訳がある。
 やはり元を正せば、金儲けの一環にはなるのだが――。

 メタルラックの上に機材を積み、コンセントをそこまで延長して、環境をしっかりと整える。
 そこに搭載されているのは、GNForce BTX 3060Ti。某国の半導体メーカ、NEW-VIDIAの提供するグラフィックボードである。

 これが俺にとっての暖房器具の代わり。
 ――もとい、仮想通貨のマイニング用リグなのであった。




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...