もう遅いざまぁ極めたパーティ追放、外れスキルガチャ開拓スローライフ/不遇職極めた俺だけスキル獲得チートな件

RichardRoe(リチャード ロウ)

文字の大きさ
41 / 51
第三章 役立たず付与魔術師、魔術学院に通う

第三四話「え、シンプルに反則じゃない? 強すぎないか?」

しおりを挟む
 夜に浮かんでいた薄明かりが揺らいだ。
 溶けるような闇が俺を鞭打った。

 べん、べん、べん……とその場に存在しない弓形ハープが搔き鳴るたびに、揺れた空間が俺に襲いかかる。
 張り詰めた弦の奏でる音律の調べに呼応して、空間が揺蕩って、夜闇を自在に駆け走る。全ての虚空が音と連動している。
 それは無形の鞭だった。

(え、シンプルに反則じゃない? 強すぎないか?)

 言葉を失う。
 何かしら制約があるのだろうが、それにしてもあまりにも自由度が高すぎる。
 トンファーで頑張って衝撃を捌くものの、形のない攻撃をいなすには限度がある。

 遠隔攻撃の完成形。離れた場所から、変幻自在の見えない攻撃を飛ばしてくる。
 子供が考えたんじゃないかと思うぐらいに出来すぎている。あまりにも理不尽。戦況は一瞬で相手に優位に傾いた。

 咄嗟に距離を詰める。
 普通は後ろに退きたいところだろうが、攻撃の形もリーチも掴めていないところで距離を取っても意味がない。
 短期決戦上等、前進あるのみ。

 意表を突かれたのか、一瞬目を丸くするアシュタロトに向かって更に威圧を重ね飛ばして俺は叫ぶ。

「今だっ!」

 クロエに目配せをする――と同時に五月雨に石を投擲する。前に進んだ距離の分、スリングを引っ張る加速距離が伸びて勢いが増す。
 やたらめったらに飛ぶ石つぶて。肩と太ももを撃ち抜いたことを目視する。しかし、それでもアシュタロトの動きは止められない。一瞬苦悶するも、彼女は踊るように指先で闇を掻き撫でる。

 二段構えにクロエの石つぶてが襲いかかる。俺の石つぶてより狙いが甘い分、むしろ逃げる先を絞らせない攻め手となる。だが彼女はくすりと笑うと、今度は正確にその石を弾き飛ばした。

 刹那、空気がざわついた。

「! クロエ、下がれ!」

「ふふ、坊やの石つぶてと違って、あの子の石には退魔の付与魔術がないのね」

 まずい、と咄嗟に突き出したトンファーをかわしながら。

 ――鬱陶しいわね、と。
 五重にも六重にも折り重なった虚空の鞭がクロエを襲った。成すすべなく木の葉のように空に舞い上がる彼女の華奢な身体が、今度は突如背中から地面に叩きつけられていた。
 べしゃりと。

 それは一瞬。



「て、め、ぇぇええええっ!!」

「よそ見をしちゃ駄目よ、私の鞭はあなたを退屈させないわよ。……そうでしょ?」



 身が爆ぜる。
 横殴りにされて吹き飛ぶ身体。
 夜闇を切り裂く鞭が視界を横切る。遅れて俺の血。
 だが、強引に大地を蹴って途中で踏みこらえる。二撃三撃と意識の飛びそうな猛攻が続くが、がむしゃらに前へと突き進む。
 胸から噴き上がった怒りが力に変わる。

 足の裏の魔法陣を展開させる。
 加速。自分以外の全てを置き去りにして、ただ前に渾身の一撃を叩きつける。

「――ぅぐっ」

 めり込んだ感触。
 同時に顔面が吹き飛ぶような衝撃。耳がきんと鳴り目が眩む。たまらず仰け反るが、それでも全身の筋力でその場に踏みこらえる。

(今一撃入った! まだこれからだ!)

 加速するインファイト。
 敵が下がれば俺は詰め寄る。乱打戦は凄絶を極める。終わりを与えぬ格闘術。滅多打ちと滅多打ち、空恐ろしいほどの音が鳴る。
 まさに血みどろの戦い。ぬるりと手に血が滴る感触を、俺は吠えて誤魔化す。
 威圧の咆哮は、相手を萎縮させるだけでなく、自分を昂らせる効果がある。ウォークライ。大音響にびりびりと全身が震え、視界が赤く染まったように感じられる。

「ぅ、ふ、ふふ……野蛮ね、可愛い子」

 はじけるような鞭の連打。それを両腕で強引に切り開いて前に詰め寄る。
 まだ逃がすものか。絶対に許すものか。
 視野狭窄、まさに攻め続けることのみを考える暴力の化身となった俺は、すべての怒りをアシュタロトへと叩き込む。
 めしり、と確実に骨を折ったような感触。

 だが刹那、俺の手を彼女はつかんだ。直感が俺の背中を突き抜ける。死だ。

「ん゛っ……く、ふ、それよ、それが、あなたの失敗」

 びいん、と手に何かが巻き付く感触。
 めきり、と他人事のような音が鳴った。自分事だと思えなかった。脳が冷える。声は出なかった。
 いや、現実の俺は絶叫していた。手があらぬ方向に一回転していた。
 激痛が俺の思考のすべてを吹き飛ばした。



違うね・・・



 分裂した思考が口を動かす。俺もアシュタロトも虚を突かれる。否、俺だ、並列思考のスキルだ。
 パイルバンカーが冷静に彼女の胴体をぶち抜いていた。
 全てが遅れて元に戻る。
 絶叫。
 俺に怒涛の闇の鞭が襲い掛かる。

 大罪の悲鳴が、俺には聞こえた。

(まだ、いける……っ、まだ、前に、っ、行けよ!!)

 痛みで全て失われた一つの思考を切り離し、俺は前に進む。
 別の思考が俺に治癒魔術を連続してかける。
 また別の思考が俺に付与魔術を重ねがけする。
 逃がしは、しない。

 音楽が加速する。それはより研ぎ澄まされた嵐のような調べに変わる。
 例えるなら暴風雨。すべてをかき消す気まぐれな嵐。
 夜がすべて形を変えて揺らいでいた。何もかもを塗りつぶしてしまうほどの濃密な気配だけが本物だった。
 今ならわかる。今のこの夜すべてが彼女の世界だと。

 クネシヤ学院すべてが一つの大罪の迷宮。様々な人が行きかうせいで本質を見失ってしまうが、すべて彼女の庭の中。
 迷宮のありとあらゆる魔法陣が輝きを放つ。俺は瞬間的に叫んだ。

「血を、よこせっ!!」

 どばあ、と彼女から血が滝のように零れる。傷口が極めて大きいこともあったが、俺の血液魔術が十分に混ざりあった・・・・・・こともこれで分かった。
 集まるは祈りの手。俺の手袋のロザリオは、血を欲していた。
 俺の技術の粋をより集めた技巧の魔法――俺が高度な裁縫で作り上げた手袋には、血液魔術を十分になじませていたのである。

 ――すべてを塗りつぶすような戦慄。
 感情を失った、無貌の相で、その女は、俺を睨んでいる。

「どうした、怒れよ、もうお前には余裕がないんだろ」

「……ミロク君、あなた、本当に、本当に」

 続きはない。
 俺が血に濡れた石の散弾を投擲し、彼女の無形の鞭が俺を五月雨に襲ったからだ。
 攻撃が交差する。俺と彼女の身体は傷つきあう。

 だが、なおも構わず。けだものとけだものは真っ向から組み合って勝負をさらに混沌の最中へと巻き込むことを選ぶ。
 それは、戦闘がより激しさを増して、次の段階へと進んだ合図。その引き込まれるような闇夜の中には、もう後戻りの余地など存在しなかった。

しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

学生学園長の悪役貴族に転生したので破滅フラグ回避がてらに好き勝手に学校を魔改造にしまくったら生徒たちから好かれまくった

竜頭蛇
ファンタジー
俺はある日、何の予兆もなくゲームの悪役貴族──マウント・ボンボンに転生した。 やがて主人公に成敗されて死ぬ破滅エンドになることを思い出した俺は破滅を避けるために自分の学園長兼学生という立場をフル活用することを決意する。 それからやりたい放題しつつ、主人公のヘイトを避けているといつ間にかヒロインと学生たちからの好感度が上がり、グレートティーチャーと化していた。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

処理中です...