追放騎士のダンジョン商売 〜外れスキル《空中床》は生産系&内政スキル!? 未開拓迷宮の真上に商店作って素材を売りまくってたら街が出来た件〜
RichardRoe(リチャード ロウ)
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第18話 村長に攻め込まれるも、むしろ解体作業で人手が欲しかったので願ったり叶ったりだと思いつつ、さらに調薬の知識を勉強するなど
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(ん、おや先客がいるな?)
森の中で茸と野菜の採集を終えた俺は、家(というか洞窟)の前の焚火近くに座っている人物を見つけた。焚火を使って何かを焼いている。一体誰だろうと思って近づいてみると、よく見知った人物だった。
いつもお世話になっているアルラウネの薬師、アルルーナである。
どうも俺が森に出てゆったり素材採集に明け暮れている間、彼女は俺のための食事を作ってくれていたらしい。
山芋をすりおろして小麦を練り合わせ、そこに薄切りの根菜を混ぜ込んで焼いた、よく分からないもちもちした料理。
アルラウネ族では伝統的な食事らしいが、聞きなじみのない単語ですっかり名前は忘れてしまった。
「で、どうしてこんな場所にやってきたんだ?」
腹も十分くちくなったところで俺は切り出した。少々冷えてきたので、干し肉と野菜の切りくずを煮こんで、干し茸とカリカリに炒めた野菜の種を入れたスープを差し出す。彼女は薄く笑ってそれを受け取ってくれた。
「……村長がね、あなたを襲撃する計画を立てているらしいの」
「村長って、東の村ブルボースの、あの頭悪そうな?」
「……頭悪そうかは分からないけど、ええ、そうよ」
スープを飲みつつ彼女は、俺の取ってきた茸や野菜や薬草を、食べられるもの、薬になるもの、毒になるもの、大した使い物にならないものと選り分けて話を続けた。
俺は正直薬草について詳しくないので、彼女にこうやって目利きしてもらっている。嘘を吐かれて毒を盛られたら死ぬ、というぐらいには彼女を全面的に信用している。
もちろん野兎に食わせたりして劇毒じゃないか事前に確認したり、少量を口に含んで違和感ないか確認したりしてはいるが、その程度の確認なのでいくらでも穴はあるだろう。
半分ほど選り分けが終わったところで、彼女は手を止めた。
「あなたも帝国騎士ならば、ブルボーズ盗賊団って聞いたことあるかしら」
「いやない」
「……そう。今の村長はその頭領、ブルボーズよ」
なるほど、つまり盗賊団がそのまま島流しを受けたということだろうか。
しかし慣習に従えば、頭領は見せしめに断頭の上さらし者にされ、下っ端たちは犯罪奴隷に落とされて囚人鉱夫とか漕役刑囚にこき使われるはずである。
となると島流しというよりは、脱走して自発的にここに逃げ込んだという可能性の方が高いかもしれない。
「おいおい、普通この島にいる騎士様がそういった逃亡囚を取り締まって処刑するんじゃないのかよ」
「ブルボーズに殺されたわ。以来、彼はこの島の英雄扱いよ」
終わってる。治安も倫理観も何もかも終わっている。
俺は思わず苦笑いするしかなかった。道理で奴らは、騎士様とやらに反感を抱いているわけだ。きちんと武芸を修練しておいてよかったと心底思う。
そして今となっては、期待外れだと思っていた《空中床》がとても頼もしく感じる。
「隣の村も脅して総勢二十名ぐらいが乗り込んでくるわ。きっと勝てないわ。どこかに逃げるべきよ」
「……勝っちゃったらどうする?」
「……正気?」
余裕だと思ったが、詳細は黙っておく。《空中床》を手に入れた今、俺が負ける要素が見当たらない。
むしろ返り討ちにして一網打尽にするこの上ない好機。見逃す手はないだろう。
「なあ、これはあくまで仮の話で聞き流してほしいんだが、魔物を解体する便利な人手が二十人ぐらい一気に手に入ったら、俺はもっともっとたくさん魔物を狩ることができるよな」
「……それはそう、だけど」
決まりである。逃げも隠れもせずに迎え撃つ。
ブルボーズとかいう筋肉男は、いきなり絡んできて以来、ずっと嫌いなやつだったが、今になってようやく再会が楽しみになってきたところであった。
◇◇◇
それはさておき、またもや迷宮開拓作業が一歩前進した。
洞窟内部の極端な凹凸を削る作業を進めているおかげか、魔物を遠くから引き寄せる作業が徐々に楽になっているのだ。
《空中床》を遠く離れた場所に出現させる作業も、かつては強く念じて集中しなくてはならなかったが、今となっては随分慣れてしまってさほど苦になっていない。
引き寄せ作業も、地形がおぼろげに頭に入ってきているおかげか、はたまた凹凸が徐々に均されているおかげか、大きくつっかえることがほとんどなくなったので、集中力に余裕ができた。
片手間に、ちょっとした料理を作ったり、武具のお手入れをしたりする余裕はありそうである。これもまた時間効率が上がっているので、成長である。
理想は寝ている途中も動作させ続けることだが、そこに至るまでどれだけかかるだろうか。理想を見ると先は長い。とはいえ今はこれで十分だろう。
(まあいいや、アルルーナから教えてもらった食べれる茸を干したり、野菜の種を取り除いたりする作業をしながらすればいいしな)
最近は、アルルーナから調薬の下処理の知識を教えてもらうことで、薬の素材を自作したりする機会も増えた。
分かりやすい薬草であれば、自分で見つけて、その葉や実を乾燥させて、自分の手で薬の材料にすることだってできる。灰汁をあらかじめ取り除く必要がある根っこの部分は、塩を入れて強火で煮込んでから乾燥させる。すり潰して粉末にする必要があるものは、その前に川の水で綺麗に洗って、よく乾燥させてからすり潰す。
こういった細かな知識の一つ一つが、自分の生活を便利にすることを俺は知っている。迷宮開拓に精を出すのもよいが、できれば開拓は極力自動化を徹底させて、もっとこういった雑多な知識を身に着けていくべきだと俺は直感していた。
―――――――――――――――
■アルバ・セコールジュカ Lv.8
【ジョブクラス】
商人Lv.2
【特殊スキル】
《空中床》
【通常スキル】
「剣術4」「槍術3」「盾術3」「馬術1」
「罠作成2」「直感1→2」「並列思考1」「集中1」
「調薬1 new」
森の中で茸と野菜の採集を終えた俺は、家(というか洞窟)の前の焚火近くに座っている人物を見つけた。焚火を使って何かを焼いている。一体誰だろうと思って近づいてみると、よく見知った人物だった。
いつもお世話になっているアルラウネの薬師、アルルーナである。
どうも俺が森に出てゆったり素材採集に明け暮れている間、彼女は俺のための食事を作ってくれていたらしい。
山芋をすりおろして小麦を練り合わせ、そこに薄切りの根菜を混ぜ込んで焼いた、よく分からないもちもちした料理。
アルラウネ族では伝統的な食事らしいが、聞きなじみのない単語ですっかり名前は忘れてしまった。
「で、どうしてこんな場所にやってきたんだ?」
腹も十分くちくなったところで俺は切り出した。少々冷えてきたので、干し肉と野菜の切りくずを煮こんで、干し茸とカリカリに炒めた野菜の種を入れたスープを差し出す。彼女は薄く笑ってそれを受け取ってくれた。
「……村長がね、あなたを襲撃する計画を立てているらしいの」
「村長って、東の村ブルボースの、あの頭悪そうな?」
「……頭悪そうかは分からないけど、ええ、そうよ」
スープを飲みつつ彼女は、俺の取ってきた茸や野菜や薬草を、食べられるもの、薬になるもの、毒になるもの、大した使い物にならないものと選り分けて話を続けた。
俺は正直薬草について詳しくないので、彼女にこうやって目利きしてもらっている。嘘を吐かれて毒を盛られたら死ぬ、というぐらいには彼女を全面的に信用している。
もちろん野兎に食わせたりして劇毒じゃないか事前に確認したり、少量を口に含んで違和感ないか確認したりしてはいるが、その程度の確認なのでいくらでも穴はあるだろう。
半分ほど選り分けが終わったところで、彼女は手を止めた。
「あなたも帝国騎士ならば、ブルボーズ盗賊団って聞いたことあるかしら」
「いやない」
「……そう。今の村長はその頭領、ブルボーズよ」
なるほど、つまり盗賊団がそのまま島流しを受けたということだろうか。
しかし慣習に従えば、頭領は見せしめに断頭の上さらし者にされ、下っ端たちは犯罪奴隷に落とされて囚人鉱夫とか漕役刑囚にこき使われるはずである。
となると島流しというよりは、脱走して自発的にここに逃げ込んだという可能性の方が高いかもしれない。
「おいおい、普通この島にいる騎士様がそういった逃亡囚を取り締まって処刑するんじゃないのかよ」
「ブルボーズに殺されたわ。以来、彼はこの島の英雄扱いよ」
終わってる。治安も倫理観も何もかも終わっている。
俺は思わず苦笑いするしかなかった。道理で奴らは、騎士様とやらに反感を抱いているわけだ。きちんと武芸を修練しておいてよかったと心底思う。
そして今となっては、期待外れだと思っていた《空中床》がとても頼もしく感じる。
「隣の村も脅して総勢二十名ぐらいが乗り込んでくるわ。きっと勝てないわ。どこかに逃げるべきよ」
「……勝っちゃったらどうする?」
「……正気?」
余裕だと思ったが、詳細は黙っておく。《空中床》を手に入れた今、俺が負ける要素が見当たらない。
むしろ返り討ちにして一網打尽にするこの上ない好機。見逃す手はないだろう。
「なあ、これはあくまで仮の話で聞き流してほしいんだが、魔物を解体する便利な人手が二十人ぐらい一気に手に入ったら、俺はもっともっとたくさん魔物を狩ることができるよな」
「……それはそう、だけど」
決まりである。逃げも隠れもせずに迎え撃つ。
ブルボーズとかいう筋肉男は、いきなり絡んできて以来、ずっと嫌いなやつだったが、今になってようやく再会が楽しみになってきたところであった。
◇◇◇
それはさておき、またもや迷宮開拓作業が一歩前進した。
洞窟内部の極端な凹凸を削る作業を進めているおかげか、魔物を遠くから引き寄せる作業が徐々に楽になっているのだ。
《空中床》を遠く離れた場所に出現させる作業も、かつては強く念じて集中しなくてはならなかったが、今となっては随分慣れてしまってさほど苦になっていない。
引き寄せ作業も、地形がおぼろげに頭に入ってきているおかげか、はたまた凹凸が徐々に均されているおかげか、大きくつっかえることがほとんどなくなったので、集中力に余裕ができた。
片手間に、ちょっとした料理を作ったり、武具のお手入れをしたりする余裕はありそうである。これもまた時間効率が上がっているので、成長である。
理想は寝ている途中も動作させ続けることだが、そこに至るまでどれだけかかるだろうか。理想を見ると先は長い。とはいえ今はこれで十分だろう。
(まあいいや、アルルーナから教えてもらった食べれる茸を干したり、野菜の種を取り除いたりする作業をしながらすればいいしな)
最近は、アルルーナから調薬の下処理の知識を教えてもらうことで、薬の素材を自作したりする機会も増えた。
分かりやすい薬草であれば、自分で見つけて、その葉や実を乾燥させて、自分の手で薬の材料にすることだってできる。灰汁をあらかじめ取り除く必要がある根っこの部分は、塩を入れて強火で煮込んでから乾燥させる。すり潰して粉末にする必要があるものは、その前に川の水で綺麗に洗って、よく乾燥させてからすり潰す。
こういった細かな知識の一つ一つが、自分の生活を便利にすることを俺は知っている。迷宮開拓に精を出すのもよいが、できれば開拓は極力自動化を徹底させて、もっとこういった雑多な知識を身に着けていくべきだと俺は直感していた。
―――――――――――――――
■アルバ・セコールジュカ Lv.8
【ジョブクラス】
商人Lv.2
【特殊スキル】
《空中床》
【通常スキル】
「剣術4」「槍術3」「盾術3」「馬術1」
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「調薬1 new」
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