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ついにこの国に、鏡を破壊する大砲がやってきた。
アルンは初めて見る大砲に興味津津だ。
僕とアルンはドラゴンのロン吉に大砲をくくりつけ、赤い夜のあとに新たに雇った兵士たちも連れて深い森の中にある鏡の前までやってきた。
「陛下、これどうやって使うんですか?」
「お前は馬鹿なんだから余計なことはするな。そこで見ていろ」
うろうろするアルンを座らせて、僕は説明書片手に大砲の準備をした。
僕は兵士たちに指示をだして大砲を組み立てる。
「ロン吉、そこの弾をここに詰めてくれ」
もちろんロン吉も準備を手伝ってくれた。
そしてようやくすべてが完成した。
「よし、発射するぞ。全員耳をふさげ!」
僕の号令に合わせて兵士たちは両手で耳を塞いだ。
ロン吉は大きな翼で小さな耳を抑えた。
しっかりと照準が鏡にあっているのを確認してから着火した。
大砲は今まで聞いたこともないような爆音を森中に轟かせ、弾を発射した。
すると、剣では傷一つ付かなかった鏡にヒビが入ったのだ。
「これならいけそうだ! 二発目準備!」
「はい!」
何度も何度も鏡に大砲を撃ち続ける。
しかし中々鏡は割れない。
やがて暗い森の中にもわずかな夕日が差し込んできた。
「そろそろ撤退しますか?」
仕事を与えられていないアルンは暇そうにしゃがみこみ、地面に落書きしながら聞いてきた。
「いや、今日は満月のはずだ。ここで迎撃しながら鏡を壊す。一日でも早くみんなに平和な夜を届けたい」
「やっと私の出番ですね!」
嬉しそうにアルンは立ち上がると、剣を引き抜いた。
「すべてアルンにおまかせください!」
「頼むよ、僕の竜騎士」
薄暗い森の中で僕たちは夜を迎えた。
たくさんの松明を燃やして辺りを照らしながら、僕たちはひたすら大砲を撃ち続けた。
鏡の方からはポツポツと魔物たちが出てくる。
それをドラゴンに乗ったアルンは喜々として倒し続けた。
「陛下! 鏡に亀裂が入りました!」
そうしているうちに、中に浮かぶ大きな鏡に縦一直線の大きな亀裂が走った。
「あとひと押しだ!」
何時間もひたすら大砲を撃ち続けて兵士たちは疲れ切っていたが、反して心はどんどん元気になっていた。
ペースを上げて引き続き大砲を撃ちまくる。
そしてついに、鏡が大きな音を立てて粉々に砕け散ったのだ。
ちょうど鏡から出ようとした魔物は、その玄関が崩壊しようとしているのに気付いて慌てて引っ込んだ。
僕らは魔物たちの玄関を破壊したのだ。
何百年も続いていた魔物の夜が、いま終わった。
「あんっ……陛下……そこズポズポされたら……気持ちよくなっちゃいますっ……」
魔物の夜が終わっても、僕と竜騎士の関係が終わることはなかった。
相変わらず彼は僕の上着を脱がせて足に口づけるし、僕の精液をお腹で飲み続ける。
「いいぞアルン、また中に注いでやる」
「陛下っ……イっちゃうぅぅうう!」
アルンは何度も腰を震わせ、淫らな薬を搾り取った。
この国といえば、魔物の夜が終わり定期的に街が破壊される心配もなくなったため、あっという間に人口が増えて賑やかになった。
小さくて貧しくて王城ですらボロボロだったというのに、十年後には華やかな商業都市にまで成長していた。
僕は綺麗に修繕されたバルコニーから街を見下ろした。
「見ろアルン、これが僕たちの作った景色だよ」
城下では子どもたちのはしゃぐ声が聞こえてくる。
かつて貧しい農民だったものたちは土地を貸して小金を儲けていた。
街行く人々は誰もが笑顔に満ち溢れている。
もはや魔物に怯える夜はどこにも見当たらなかった。
「ええ、素晴らしい景色です陛下」
僕の隣には、美しい騎士服を身をつけた竜騎士・アルンが立っていた。
貧乏な時も、苦しい時も、きっとこれからもずっと、僕は彼とともに生きていく。
アルンは初めて見る大砲に興味津津だ。
僕とアルンはドラゴンのロン吉に大砲をくくりつけ、赤い夜のあとに新たに雇った兵士たちも連れて深い森の中にある鏡の前までやってきた。
「陛下、これどうやって使うんですか?」
「お前は馬鹿なんだから余計なことはするな。そこで見ていろ」
うろうろするアルンを座らせて、僕は説明書片手に大砲の準備をした。
僕は兵士たちに指示をだして大砲を組み立てる。
「ロン吉、そこの弾をここに詰めてくれ」
もちろんロン吉も準備を手伝ってくれた。
そしてようやくすべてが完成した。
「よし、発射するぞ。全員耳をふさげ!」
僕の号令に合わせて兵士たちは両手で耳を塞いだ。
ロン吉は大きな翼で小さな耳を抑えた。
しっかりと照準が鏡にあっているのを確認してから着火した。
大砲は今まで聞いたこともないような爆音を森中に轟かせ、弾を発射した。
すると、剣では傷一つ付かなかった鏡にヒビが入ったのだ。
「これならいけそうだ! 二発目準備!」
「はい!」
何度も何度も鏡に大砲を撃ち続ける。
しかし中々鏡は割れない。
やがて暗い森の中にもわずかな夕日が差し込んできた。
「そろそろ撤退しますか?」
仕事を与えられていないアルンは暇そうにしゃがみこみ、地面に落書きしながら聞いてきた。
「いや、今日は満月のはずだ。ここで迎撃しながら鏡を壊す。一日でも早くみんなに平和な夜を届けたい」
「やっと私の出番ですね!」
嬉しそうにアルンは立ち上がると、剣を引き抜いた。
「すべてアルンにおまかせください!」
「頼むよ、僕の竜騎士」
薄暗い森の中で僕たちは夜を迎えた。
たくさんの松明を燃やして辺りを照らしながら、僕たちはひたすら大砲を撃ち続けた。
鏡の方からはポツポツと魔物たちが出てくる。
それをドラゴンに乗ったアルンは喜々として倒し続けた。
「陛下! 鏡に亀裂が入りました!」
そうしているうちに、中に浮かぶ大きな鏡に縦一直線の大きな亀裂が走った。
「あとひと押しだ!」
何時間もひたすら大砲を撃ち続けて兵士たちは疲れ切っていたが、反して心はどんどん元気になっていた。
ペースを上げて引き続き大砲を撃ちまくる。
そしてついに、鏡が大きな音を立てて粉々に砕け散ったのだ。
ちょうど鏡から出ようとした魔物は、その玄関が崩壊しようとしているのに気付いて慌てて引っ込んだ。
僕らは魔物たちの玄関を破壊したのだ。
何百年も続いていた魔物の夜が、いま終わった。
「あんっ……陛下……そこズポズポされたら……気持ちよくなっちゃいますっ……」
魔物の夜が終わっても、僕と竜騎士の関係が終わることはなかった。
相変わらず彼は僕の上着を脱がせて足に口づけるし、僕の精液をお腹で飲み続ける。
「いいぞアルン、また中に注いでやる」
「陛下っ……イっちゃうぅぅうう!」
アルンは何度も腰を震わせ、淫らな薬を搾り取った。
この国といえば、魔物の夜が終わり定期的に街が破壊される心配もなくなったため、あっという間に人口が増えて賑やかになった。
小さくて貧しくて王城ですらボロボロだったというのに、十年後には華やかな商業都市にまで成長していた。
僕は綺麗に修繕されたバルコニーから街を見下ろした。
「見ろアルン、これが僕たちの作った景色だよ」
城下では子どもたちのはしゃぐ声が聞こえてくる。
かつて貧しい農民だったものたちは土地を貸して小金を儲けていた。
街行く人々は誰もが笑顔に満ち溢れている。
もはや魔物に怯える夜はどこにも見当たらなかった。
「ええ、素晴らしい景色です陛下」
僕の隣には、美しい騎士服を身をつけた竜騎士・アルンが立っていた。
貧乏な時も、苦しい時も、きっとこれからもずっと、僕は彼とともに生きていく。
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