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「陛下ぁああ!」
俺は痛む腹を抑えながら、這うように陛下の元へ向かった。
俺は逃げる部下たちのために時間稼ぎをするためにこの城に残った。
そして陛下は、自分がいる限り争いは終わらないといって、民の命を守るという王の責務を果たすためにここへ残った。
彼の冷たくなっていく遺体を眺めながら、俺は涙を流した。
筋書き通りとはいえ、目の前で誰かの命が失われていくというのは耐え難いほどの心の痛みを伴う。
獣人は先程まで陛下が座っていた場所に腰を下ろし、配下に命じた。
「その者を拘束せよ」
そして話は冒頭に戻る。
命乞いをするでも、罵倒するでもなく、突然手に触れたいといった俺に、獣人は眉を上げた。
俺は前世では大変な愛犬家だった。
実家では犬を何年も飼っており、子供の頃から毎日世話をしていた。
もしここで死ぬのなら、最後に愛犬の毛皮に触れたい。
だがこの世界では無理な話だ。
代わりに愛犬の被毛にそっくりな、獣人の毛並みに触れて人生を終えたい。
「いいだろう」
まさかの返答に俺は驚いた。
断られてさっさと首を跳ねられると思っていた。
獣人は剣を下ろしてこちらに手を差し出してきた。
それを両手で包み、手の甲の整った毛並みを味わった。
それから手のひらの固い毛並みに隠れた肉球に触れ、爪の先まで堪能すると、最後に毛皮を吸いたくなって彼の手に顔を埋めた。
「な、なにをしている!?」
「あなたを吸っている。もう少しだけ、こうさせてくれ」
(陛下、いま向こうに行きますからね……)
陛下に祈りを捧げ、俺は彼の手を離して首元をさらした。
「覚悟は決まった。どうぞ貰ってくれ」
獣人はゴクリを喉を鳴らした。
「貴様、それがどういう意味だと分かって言ってるのか」
「もちろんだ」
(首を跳ねる以外に何があると言うんだ?)
「お前がそのつもりなら、こちらも遠慮はしない」
獣人は王座から立ち上がり、俺の頭を掴みあげた。
「最後に、あなたの名前だけでも教えて欲しい」
陛下と自分の首を跳ねた者の名前だけでも知りたかった。
「我が名はツェリ。貴様の夫になる者だ」
獣人はそう言い、俺の首筋に噛み付いた。
(は……? 夫……!?)
彼は彼の牙が肌に食い込む所から、自分がどんどん塗り替えられていくのを感じた。
ひどく体が熱い。
腹の奥がムカムカする。
だんだん視界が暗くなり、俺はそのまま意識を失った。
革命歴一年。
この世界に初めて、獣人が自由に暮らせる国家が誕生した。
(どうしてこうなった……)
「ラヴァン、食事が口に合わないのか」
俺は城の食堂でツェリと共に夕食をとっていた。
うっかり、肉ばかりが並ぶ食卓に若干意識が飛んでいた。
目の前で人を殺された後で食欲が湧くはずもない。
「いや、おいしい。ただ、俺はヒトだから、野菜なども食べたいんだ」
「明日には用意させよう」
よく考えたら、俺は獣人の生態をあまり知らない。
きっと獣人達もヒトの生態に詳しくないだろう。
俺たちはもっと互いを知る必要があるのかもしれない。
「ツェリ、なぜあなたは俺を殺さなかったんだ」
分厚いステーキ肉を切りながら彼に問いかけた。
「ヒトと獣人は等しいと言い、獣人の手に自ら触れたいと言い、首筋を見せたお前に興味が湧いた」
「俺は獣人の文化に詳しくないんだけど、手に触れるのは何かまずかったのか?」
「手に触れるのは、ベッドへ誘う行為だ」
「首筋を見せるのは?」
「求婚だ。そして首を噛めば二人は番になる」
(ああ~異世界の常識って恐ろしい!)
俺は痛む腹を抑えながら、這うように陛下の元へ向かった。
俺は逃げる部下たちのために時間稼ぎをするためにこの城に残った。
そして陛下は、自分がいる限り争いは終わらないといって、民の命を守るという王の責務を果たすためにここへ残った。
彼の冷たくなっていく遺体を眺めながら、俺は涙を流した。
筋書き通りとはいえ、目の前で誰かの命が失われていくというのは耐え難いほどの心の痛みを伴う。
獣人は先程まで陛下が座っていた場所に腰を下ろし、配下に命じた。
「その者を拘束せよ」
そして話は冒頭に戻る。
命乞いをするでも、罵倒するでもなく、突然手に触れたいといった俺に、獣人は眉を上げた。
俺は前世では大変な愛犬家だった。
実家では犬を何年も飼っており、子供の頃から毎日世話をしていた。
もしここで死ぬのなら、最後に愛犬の毛皮に触れたい。
だがこの世界では無理な話だ。
代わりに愛犬の被毛にそっくりな、獣人の毛並みに触れて人生を終えたい。
「いいだろう」
まさかの返答に俺は驚いた。
断られてさっさと首を跳ねられると思っていた。
獣人は剣を下ろしてこちらに手を差し出してきた。
それを両手で包み、手の甲の整った毛並みを味わった。
それから手のひらの固い毛並みに隠れた肉球に触れ、爪の先まで堪能すると、最後に毛皮を吸いたくなって彼の手に顔を埋めた。
「な、なにをしている!?」
「あなたを吸っている。もう少しだけ、こうさせてくれ」
(陛下、いま向こうに行きますからね……)
陛下に祈りを捧げ、俺は彼の手を離して首元をさらした。
「覚悟は決まった。どうぞ貰ってくれ」
獣人はゴクリを喉を鳴らした。
「貴様、それがどういう意味だと分かって言ってるのか」
「もちろんだ」
(首を跳ねる以外に何があると言うんだ?)
「お前がそのつもりなら、こちらも遠慮はしない」
獣人は王座から立ち上がり、俺の頭を掴みあげた。
「最後に、あなたの名前だけでも教えて欲しい」
陛下と自分の首を跳ねた者の名前だけでも知りたかった。
「我が名はツェリ。貴様の夫になる者だ」
獣人はそう言い、俺の首筋に噛み付いた。
(は……? 夫……!?)
彼は彼の牙が肌に食い込む所から、自分がどんどん塗り替えられていくのを感じた。
ひどく体が熱い。
腹の奥がムカムカする。
だんだん視界が暗くなり、俺はそのまま意識を失った。
革命歴一年。
この世界に初めて、獣人が自由に暮らせる国家が誕生した。
(どうしてこうなった……)
「ラヴァン、食事が口に合わないのか」
俺は城の食堂でツェリと共に夕食をとっていた。
うっかり、肉ばかりが並ぶ食卓に若干意識が飛んでいた。
目の前で人を殺された後で食欲が湧くはずもない。
「いや、おいしい。ただ、俺はヒトだから、野菜なども食べたいんだ」
「明日には用意させよう」
よく考えたら、俺は獣人の生態をあまり知らない。
きっと獣人達もヒトの生態に詳しくないだろう。
俺たちはもっと互いを知る必要があるのかもしれない。
「ツェリ、なぜあなたは俺を殺さなかったんだ」
分厚いステーキ肉を切りながら彼に問いかけた。
「ヒトと獣人は等しいと言い、獣人の手に自ら触れたいと言い、首筋を見せたお前に興味が湧いた」
「俺は獣人の文化に詳しくないんだけど、手に触れるのは何かまずかったのか?」
「手に触れるのは、ベッドへ誘う行為だ」
「首筋を見せるのは?」
「求婚だ。そして首を噛めば二人は番になる」
(ああ~異世界の常識って恐ろしい!)
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