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俺は厩舎から自分の馬を持ってきて、獣人兵たちと共に隣国との国境付近に向かった。
俺が行ったところで特別なにか出来るわけでも無いかもしれないが、ひとつだけ考えがあったのだ。
山の上に陣地を敷いた革命軍は、ツェリの指示のもとに本格的な戦の準備を始めた。
俺は傍に控えるツェリの副官に声をかけた。
「敵の総数は」
「およそ十万、たいしてこちらは総数三千。とても戦いになるような人数差ではありません」
茶色と灰色の毛がまだら模様を作っている獣人は、可愛らしい三角耳を動かしながら言った。
「勝機を見出すなら奇襲しかない」
「ええ。敵もそれはわかっているでしょう。ですが革命軍には本体を指揮するツェリ様しか、戦場で指揮を取るの経験のある者はいない」
「それでよく今までやってこれたな」
「だからこそ皆一丸となって戦ってこられたのかもしれません」
「俺が陽動作戦を担当しよう」
あまりにも突飛なセリフを吐いた俺に、副官は口を大きく開けて固まっていた。
「そんなこと、ツェリ様が許す訳がありません」
「ツェリに内緒で動けばいい話だ」
「っ!」
副官は慌ててツェリの名を呼ぼうとした。
俺は手を伸ばして彼の口を塞ぎ、無理矢理に黙らせた。
「むぐぐ」
「絶対お前の名前は出さないから、ちょっとだけ手を貸してくれ」
「うぐぐ」
コクコクと頷く副官に、俺はツェリの奇襲作戦の詳細を聞いた。
「……わかった。そちらは計画の通りに進めてくれ。俺は陣地を離れる。適当に誤魔化しておいてくれ」
「誤魔化すってそんな無茶な」
副官は涙目で三角耳を垂らした。
俺はふさふさの頭を撫でてから、彼に別れを告げた。
夕方、太陽が沈み始めて薄暗くなった頃。
ツェリが陣地を敷く山を降り、川を渡るとそこに隣国軍が陣地を敷いている。
俺は草むらに身を忍ばせ、敵軍の様子を伺った。
隙を伺い、時々場所を変えながら観察していると、軍の左翼部隊に数日前別れたばかりの顔ぶれを見つけた。
俺の騎士団で働いていた元団員たちだ。
彼らは隣国ではあまり大事にされていないのか、ボロ着を着てろくな武器も与えられず、最前線の隅に追いやられていた。
彼らの姿に俺は、団長としての責任を感じて胸が痛くなった。
そのうち彼らは隣国兵たちに荷物を渡され、とぼとぼと前線を離れた。
どうやら食事の用意を任されたようだ。
少し離れた場所で火を起こし始めた彼らに聞こえるように俺は声を出した。
「おい、助けてくれ! 穴に嵌っちまって抜けられないんだ!」
薪を抱えた彼らは互いに首を傾げ、こちらへ歩いてきた。
十分彼らを人目のない場所へ誘導してから、俺は彼らに姿を見せた。
「元気だったかみんな」
「っ! 団長!?」
元団員達は幽霊でも見たような声をあげて腰を抜かした。
俺が行ったところで特別なにか出来るわけでも無いかもしれないが、ひとつだけ考えがあったのだ。
山の上に陣地を敷いた革命軍は、ツェリの指示のもとに本格的な戦の準備を始めた。
俺は傍に控えるツェリの副官に声をかけた。
「敵の総数は」
「およそ十万、たいしてこちらは総数三千。とても戦いになるような人数差ではありません」
茶色と灰色の毛がまだら模様を作っている獣人は、可愛らしい三角耳を動かしながら言った。
「勝機を見出すなら奇襲しかない」
「ええ。敵もそれはわかっているでしょう。ですが革命軍には本体を指揮するツェリ様しか、戦場で指揮を取るの経験のある者はいない」
「それでよく今までやってこれたな」
「だからこそ皆一丸となって戦ってこられたのかもしれません」
「俺が陽動作戦を担当しよう」
あまりにも突飛なセリフを吐いた俺に、副官は口を大きく開けて固まっていた。
「そんなこと、ツェリ様が許す訳がありません」
「ツェリに内緒で動けばいい話だ」
「っ!」
副官は慌ててツェリの名を呼ぼうとした。
俺は手を伸ばして彼の口を塞ぎ、無理矢理に黙らせた。
「むぐぐ」
「絶対お前の名前は出さないから、ちょっとだけ手を貸してくれ」
「うぐぐ」
コクコクと頷く副官に、俺はツェリの奇襲作戦の詳細を聞いた。
「……わかった。そちらは計画の通りに進めてくれ。俺は陣地を離れる。適当に誤魔化しておいてくれ」
「誤魔化すってそんな無茶な」
副官は涙目で三角耳を垂らした。
俺はふさふさの頭を撫でてから、彼に別れを告げた。
夕方、太陽が沈み始めて薄暗くなった頃。
ツェリが陣地を敷く山を降り、川を渡るとそこに隣国軍が陣地を敷いている。
俺は草むらに身を忍ばせ、敵軍の様子を伺った。
隙を伺い、時々場所を変えながら観察していると、軍の左翼部隊に数日前別れたばかりの顔ぶれを見つけた。
俺の騎士団で働いていた元団員たちだ。
彼らは隣国ではあまり大事にされていないのか、ボロ着を着てろくな武器も与えられず、最前線の隅に追いやられていた。
彼らの姿に俺は、団長としての責任を感じて胸が痛くなった。
そのうち彼らは隣国兵たちに荷物を渡され、とぼとぼと前線を離れた。
どうやら食事の用意を任されたようだ。
少し離れた場所で火を起こし始めた彼らに聞こえるように俺は声を出した。
「おい、助けてくれ! 穴に嵌っちまって抜けられないんだ!」
薪を抱えた彼らは互いに首を傾げ、こちらへ歩いてきた。
十分彼らを人目のない場所へ誘導してから、俺は彼らに姿を見せた。
「元気だったかみんな」
「っ! 団長!?」
元団員達は幽霊でも見たような声をあげて腰を抜かした。
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