「桜の下の禁じられたメロディ」

あらやん

文字の大きさ
60 / 72
第5章: 卒業への軌跡 - それぞれの道へ

話12:学園祭

しおりを挟む
学園祭の朝、奏たちの出店「ハーモニーカフェ」は最後の準備に追われていた。四人は忙しく動きながらも、期待に胸を膨らませていた。

奏が最終チェックをする。「みんな、準備はいいかな?アート展示もきちんと配置されてる?」

椎名がリストを確認しながら答える。「うん、エッセイコーナーもバッチリ。お客さんが自分の感想を書き込めるノートも用意したよ。」

香奈はキッチンから顔を出す。「トッピング用の食材も全部揃ったし、メニュー通りの料理も準備できた!お客さんが自分で作れるメニュー、楽しんでくれるといいなぁ。」

美雪がフォトスポットをチェック。「ここ、インスタ映えするよね。きっとお客さん、写真撮りたくなるはず。」

奏が笑顔で皆を見渡す。「よし、じゃあいよいよ開店だね。お客さんに楽しんでもらえるよう、全力でいこう!」

香奈が意気込む。「このカフェで一人でも多くの人に笑顔になってもらえたら最高だよね!」

椎名が優しく微笑む。「私たちの心を込めたカフェ、きっと素敵な空間になるよ。」

美雪が最後に一言。「みんなで作り上げたカフェ、自信を持っていこう!」

四人は握手を交わし、学園祭の開幕を迎える準備が整った。お客さんが来るのを楽しみに待ちながら、それぞれのポジションに就いた。

学園祭の賑わいの中、奏たちが企画したアートとエッセイが織り交ぜられた健康カフェは、開店当初はお客さんの入りが鈍かった。しかし、時間が経つにつれて、口コミや学園祭のガイドブックを手にした来場者が次々と足を運び始める。

「あっちのテーブル、新しい注文が入ったわよ!」香奈が厨房から飛び出してきて、椎名に声をかける。

椎名は筆記用具を手に取りながら応答する。「了解、注文を受けるよ。奏、アートの説明、準備してね!」

奏は絵筆を持ったまま微笑み、頷く。「大丈夫、こっちも準備万端だよ。美雪、エッセイのコーナーはどう?」

美雪は本を手にしながら答える。「順調よ。客の反応も良くて、椎名のエッセイに感動してる人も多いみたい。」

カフェは次第に活気づき、彼女たちの趣旨に賛同する人々で賑わいを見せる。それぞれが一息つく暇もなく、お互いに助け合いながら営業を続ける。

休憩時間、奏はカウンターに腰掛けて、一瞬の静寂を楽しむ。「ねえ、みんな、思った以上にうまくいってるね。」

椎名はコーヒーカップを手にしながら答える。「本当だね。でもこれもみんなの協力のおかげだよ。」

香奈は手拭きを手にしながら笑う。「そうね、でもあんまり忙しすぎて、今、何を作ったか覚えてないかも。」

美雪は彼女たちを見回し、一言付け加える。「でも、こんなに皆で協力して何かを作り上げるのも、これが最後かもしれないわね。」

その言葉に、彼女たちは一瞬沈黙し、互いに感謝のまなざしを交わす。それぞれが自分の未来に向かって歩き出そうとしているこの時、共有しているこの瞬間が、かけがえのない宝物だと感じていた。

2日目の営業も終わり、奏たちが企画したアートとエッセイが織り交ぜられた健康カフェは、予想を超える盛況を見せた。お客さんの笑顔と満足した様子は、彼女たちにとって最高の報酬だった。

営業の終了後、片付けをしながら、奏は皆に声をかける。「みんな、本当にお疲れ様。予想外に大変だったけど、めちゃくちゃ楽しかったよね。」

椎名は会計簿を手にしながら苦笑いをする。「うん、楽しかったけど、結果的には赤字だね。でも、この経験はお金に変えられない価値があるよ。」

香奈はエプロンを外しながら笑顔で答える。「そうだね、初めての経験だらけだった。でも、みんなで協力して何かを作り上げたこと、忘れられない思い出になったよ。」

美雪はまとめたエッセイの束を手にしながら、頷く。「確かに、お金の面では大赤字だけど、学園祭で得られた経験や絆は、何物にも代えがたいものがある。」

打ち上げの場所に移動した一同は、学園祭での苦労話や楽しかったエピソードを語り合い、笑い声が絶えない。それぞれの未来に向けた不安や夢、期待も共有し合い、お互いを支え合う強い絆を感じる。

夜が更けていく中、奏は皆に感謝の言葉を伝える。「みんな、本当にありがとう。これからも変わらずに、お互いの道を応援し合おうね。」

それぞれの心に刻まれた貴重な時間は、彼女たちがこれから歩む人生の糧となり、未来への一歩を力強く踏み出す勇気を与えてくれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...