「月下の約束 - 柚希と葵の物語」

第1章: 不思議な出会い

第2話: 運命の交差

放課後の静かな図書室。柚希は本のページをめくりながら、心の中で朝の出来事を反芻していた。葵との奇妙な出会いが彼女の心に静かな波紋を広げていた。

学校を出る時、彼女は再び葵の姿を見つけた。今度は、葵が不良たちに囲まれている場面だった。彼らの声は、遠くからでも聞こえるほど荒々しかった。柚希はしばらく立ち止まり、見守った。彼女にとって、これはただの偶然ではなかった。何かが彼女を葵の方へと引き寄せているようだった。

「大丈夫ですか？」柚希が静かに尋ねた。葵は驚いた様子で彼女を見上げた。柚希の目は優しさに満ちていた。

「ふん、大したことないわ」と葵は言って、不良たちを一蹴した。しかし、その目はどこかで柔らかさを隠していた。

柚希は少し驚いたが、すぐに葵の隣に立った。彼女の存在が、葵にとってどれほどの意味を持つのか、まだわからなかった。でも、彼女は何かを感じていた。この出会いが、二人の人生を変える何かの始まりだと。

「名前は？」葵が尋ねた。

「柚希です。あなたは葵さんですよね？」柚希が応えた。

葵は少し笑った。その笑顔は、これまでにない温かさを持っていた。「そう、葵。覚えといて」

その日、二人は少し話をした。話題はささいなものだったが、二人の間にはすでに特別な何かが生まれていた。それは、これから育っていく小さな芽のようなものだった。

夕暮れ時、二人は別々の道を歩き始めた。柚希の心には、新しい感情が芽生えていた。彼女はまだその感情を言葉にできなかったが、それは確かに存在していた。そして、葵もまた、何かを感じていた。それは新しい始まりの予感だった。