「月下の約束 - 柚希と葵の物語」

第1章: 不思議な出会い

第3話: 予期せぬ絆

柚希の日々は、葵との出会い以来、少しずつ変わり始めていた。学校での彼女の立ち振る舞いは相変わらず穏やかで控えめだが、心の中では新しい感情が渦巻いていた。

その日も、放課後に図書室で静かに時間を過ごした後、柚希はいつものように帰路についた。しかし、彼女の心は落ち着かず、葵のことが頭から離れなかった。葵とのやり取りは短かったけれど、その影響は深く、柚希の心に新たな色をもたらしていた。

道すがら、彼女は葵と偶然再会した。葵はいつものように少し荒っぽい態度を取りながらも、柚希に話しかけてきた。

「また会ったね、柚希」と葵は言った。

「はい、偶然ですね」と柚希は答えた。彼女の声には、わずかながらの期待が込められていた。

二人はしばらく並んで歩いた。葵は自分のことを話し始めた。家庭の事情、学校での立場、そして自分が不良と呼ばれる理由について。柚希は黙って聞いていた。葵の言葉の中には、彼女の本当の姿が隠されているように感じられた。

「あんたはどうしてこんなにも大人しいの？」葵が尋ねた。

柚希は少し考えてから答えた。「私には、勉強することが一番大切だと教えられてきました。それに、騒ぎを起こすのは好きじゃないんです」

「ふーん、でも、私を助けた時は違ったじゃん」と葵は言った。

柚希は少し驚いて、葵を見た。葵の目には、挑戦的な光があった。柚希は深呼吸をして、正直な気持ちを打ち明けた。

「あの時は、ただ…あなたを助けたかったんです。誰かが困っているのを見ると、放っておけないんです」

葵は柚希の答えに少し笑みを浮かべた。「なんか、意外だね」

夕焼けが空を染める中、二人は学校の近くの公園に着いた。公園のベンチに腰掛けながら、彼女たちはさらにお互いのことを話し合った。話題は趣味や夢、未来のことに及んだ。柚希は葵が持っている強さと優しさに惹かれていく自分に気づいた。

「あんたと話してると、なんだか落ち着くよ」と葵が言った。その言葉は柚希の心に深く響いた。

夜が深まると、二人はお互いに別れを告げた。柚希は家に帰る道すがら、今日の出来事を思い返していた。葵との予期せぬ