「月下の約束 - 柚希と葵の物語」

第1章: 不思議な出会い

第6話: 試練の始まり

学校の廊下は、朝のざわめきでいっぱいだった。柚希はいつものように静かに歩いていたが、心の中では昨日の葵との時間が繰り返し思い出されていた。彼女は、葵と一緒にいるときの自分が好きだった。

しかし、その日はいつもと違った。柚希が教室に入ると、葵が何人かの生徒に囲まれているのが見えた。彼らの表情は険しく、葵に対して何か言っているようだった。

柚希は少し戸惑いながらも、葵の近くへと歩いて行った。生徒たちの話を聞くと、葵がまた何かトラブルを起こしたらしいという噂だった。

「葵さん、大丈夫ですか？」柚希が静かに尋ねた。

葵は彼女に向かって笑顔を見せ、「大丈夫だよ」と答えた。しかし、その目は少し疲れて見えた。

その日の放課後、柚希は葵と一緒にいつもの公園へ行った。二人はベンチに座り、葵が学校でのトラブルについて話し始めた。

「また、あいつらに絡まれたんだ。全然大したことないけどね」と葵が言った。

柚希は葵の言葉に心を痛めた。「でも、葵さんが困っているのなら、私にも何かできることがあるかもしれません」

葵は柚希を見て、少し考え込んだ後、「ありがとう」と言った。彼女の声には感謝の意がこもっていた。

二人は夕暮れまで話し合った。柚希は葵のことをより深く理解しようと努め、葵は柚希の優しさに心を開いていった。しかし、葵が抱える問題の大きさを知り、柚希は不安を感じ始めていた。

「柚希、俺のことで心配させちゃってごめんな」と葵が言った。

「いいえ、葵さんのことが心配なんです」と柚希が答えた。

二人はお互いを見つめ合った。その瞬間、二人の間には強い絆があることを改めて感じた。しかし、これから彼女たちが直面する試練は、その絆を試すものになるだろう。

夜が更けると、柚希と葵は別れを告げた。柚希は家に帰りながら、葵が直面している困難について考えた。彼女は葵を助けたいと強く思っていた。これからの二人の関係は、未知の道を歩み始めていた。