歌声が結ぶ運命の糸     愛のコンソナンス

しらかわからし

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第1話

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正夫は42歳、独身。会社を経営し、それなりに忙しい日々を送っていたが、近頃は少し時間ができるようになった。社員も成長し、会社が回り出した今、仕事一辺倒だった生活を見直そうと思ったのだ。無趣味な自分に何か新しいことを始めたい、と考えていた矢先、ふとネットで目にした広告が彼の心を揺さぶった。

「仲間との出会い、皆で楽しく歌いハモる気持ち良さ」

合唱教室の広告だった。正夫は一人で歌うことに自信がなかった。しかし、「合唱なら、みんなと一緒に歌える」という思いに背中を押され、教室の門を叩くことにした。

「仲間と一緒に一つの曲を創り上げる楽しさか……」そんな新しい体験に正夫の胸は期待で膨らんでいた。

教室は明るく、バリトン、テナー、アルト、ソプラノの4つのパートに分かれた生徒たちがハーモニーを紡ぎ出していた。彼も体験レッスンでその一体感を味わい、「これだ、合唱ってこんなに気持ちいいものなのか」と実感した。

定番の合唱曲や、盛り上がるノリの良い曲、そしてカッコよくゆったりとしたスローテンポの曲まで、どれも楽しみながら歌える。そして、新しいメンバーにもフレンドリーな教室だった。体験レッスンを終えた後、彼は正式に入会を決めた。

教室での彼の担当講師は、音大卒の24歳、薫子という女性だった。若く、明るく、合唱の楽しさを丁寧に教えてくれる彼女に、正夫は自然と引かれるものを感じた。しかし、彼女が既婚者だと知ったとき、心のどこかで少し落胆した。彼は、できれば何かの「出会い」も期待していたのだ。

それでも、練習の日々は充実していた。発表会に向けて皆で一つの曲を仕上げる過程は、これまでの仕事中心の生活では味わえなかった喜びを正夫にもたらした。


つづく
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