現(うつつ)の夢

しらかわからし

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第1章 夏の始まりと塀の向こうの少年

1-2話 迷信と分かれ道の村

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祖母の存在も、綾香の憂鬱の原因だった。
何年も会っていないが、母や親戚から「宗教に傾倒している変わり者」と聞かされていた。
(そんな人の家に、小学生をひとりで預けるなんて……)
綾香はため息をつき、車窓の外に広がる緑と、降り注ぐ陽光のシャワーをぼんやり眺めていた。
ふと、道端に立つ木製の古びた看板が目に入る。
「うつ……?」
「あぁ、現川村だよ」
父が答える。

「ようこそ現川村へ」と書かれた看板を、綾香は憎々しげに睨んだ。
コンビニもゲームセンターもない。学校は分校。都会育ちの綾香には、まるで異世界だった。
「こんなところで一ヶ月も過ごすなんて……」
綾香がぼやくと、父が言った。
「いい経験になるさ。パパが育った村だからな」

その時、車がガクンと傾き、綾香は窓に頭をぶつけた。
「痛っ……なに?」
後部座席の荷物が崩れ、父が車を停めて外に出る。
「タイヤが穴に落ちたみたいだ。ジャッキで上げないと」
「どのくらいかかるの?」
「日が暮れるかもしれないな」
父は申し訳なさそうに言った。
「綾香、先に歩いて祖母の家に行ってくれ。十分もかからないから」
「なんで? 車が直ってからでいいじゃん」
「この村のしきたりで、外の人間は夕方までに家に入らないと不幸が取り憑くって言われてるんだ」
「そんな迷信のために……?」
綾香は渋々、歩くことにした。

「分かったよ……ついてないなぁ」
車を降りて砂利道に足を踏み出す。
「じゃあ、後でね」
父が何か言いかけた。
「あっ、この先に分かれ道が……」

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