現(うつつ)の夢

しらかわからし

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第1章 夏の始まりと塀の向こうの少年

第6-1話 龍児と麗との出逢い

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 うららは小さい時から大人しいというか、地味で暗い子だった。 男子にモテない癖に自意識過剰なのか、男子に話し掛けられると身構えるタイプだった。 お友達に彼氏ができたとか、初体験を済ませたとか聞くと、内心は羨ましいと思いながら、 自分には縁のない世界と思っていた。

 小六の夏休み。 麗は田舎のこの村で暇を持て余していた。かといって、毎日遊び歩くほど交友関係が派手でもなく友達も少なかった。「そろそろ夏休みの宿題も考えて勉強したら?」と親にプレッシャーを掛けられていた。

夏休み中は近所に寺子屋があり小学校の教員をやっていて定年退職をした綾香の祖母がボランティアで寺子屋を経営していた。その家の離れで過ごすようになった。家だと扇風機を点けっぱなしにしていると母親から、「電気代が!」とイヤミを言われるのが嫌だったからだ。

 幸い読書は大好きだったし、勉強道具を抱えて涼しい寺子屋の隅に陣取り、勉強に飽きたら寺子屋にある漫画や一般の小中学生が読む様な本を借りて読んで、また思い出したように宿題を開く事の繰り返しだった。誰が見ても暗い女子といった感じだった。

 寺子屋に通い始めて五日目。借りていた漫画一冊を返却すると、隣にいた龍児が、「あっ! その本、君が借りていたんだね?」と話し掛けた。龍児は人間の綾香や美奈子に妖怪あやかしではなく人間として見てもらっていたので、自信がついていた事で、以前から行ってみたかった寺子屋に足を踏み入れていた。

 初めて逢う男子で、麗よりも若い年齢だったが龍児も同じ漫画を読もうと思ったら貸し出し中で、返却予定日を訊こうとしていた。

「タカハシルミコさんの漫画が、好きなんですか?」

 麗は何の気なしに訊いてみた。この漫画は麗の憧れの従兄が小学生の時に読んでいたと言ったので麗も読み始めたが、どちらかと言えば中学生に愛読者が多いイメージだった。小学生が読むなんて珍しいかなと思っていたからだ。

「従兄から勧められて私も読んだのですが面白かったですよ」
「あっ、やっぱりそう思いますか?」

 この時点でもう麗は普通の状態ではなかった。好きな漫画家が同じだからと言って、初対面の男子と気安く話すのは、人見知りでいつもの麗では考えられない事だった。多分、夏休みで解放的な気分がそうさせていたのかもしれない。

彼女自身でも驚くほどに自然な会話が続いた。 龍児の方も違和感を覚えなく、寺子屋脇の綾香のいる母屋からは見えないベンチに移動して、ひとしきりその漫画家の話しで盛り上がった。

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