21 / 92
第1章 夏の始まりと塀の向こうの少年
第6-2話 風の寺子屋で出逢った日
しおりを挟む
龍児は自身を名乗り麗よりも若くて小五で、東京に住んでいて、この夏休みを利用して母方の祖父母の家に遊びに来ていると説明した。
「この寺子屋、良く来るの?」と麗。
「あ、うん。だいたい毎日ね」 と龍児。
「じゃあ、また逢えるかもしれないね?」と麗。
龍児の優しい笑顔に、麗は思わず真っ赤になった。麗は帰宅して直ぐに母親に龍児の事を話し、その後もずっと彼の事が頭から離れず、食事中もボーッとして、母親から「好きになるにはまだ早いんじゃない?」と笑われた。
龍児は妖怪の子供だが、イケメンであり、スポーツ万能であり、頭脳明晰だった。それは綾香の算数の問題を見ただけでスラスラと答えを出すぐらいだ。
麗の部屋にポスターが張って逢って、当時の好きなアイドルグループの嵐の松本潤と大野智を足して二で割り、ちょっと不良がかった雰囲気を持ちあわせていながら、松本の甘いマスクのイケメンに変身していた。
ただ麗にとっては、ずっと昔から知っているような、不思議な安心感や親近感を覚えていた。つまり龍児の魔術は相手の好きな容姿に幾らでも変える事が出来るという優れた特技を持ちあわせていたのだ。
麗が小さい頃に憧れた従兄の良純にも、似ていた所為かもしれず、 従兄は麗より五歳上ですが、十代後半で落ち着いてしまった当時の彼でなく、幼稚園生だった麗が思いを寄せた小学生時代の従兄という感じだった。
翌日、開館時刻を待ちかねるように、麗は勉強道具を抱え寺子屋に行った。麗は東京で叔母が買ってくれたお気に入りのフレアースカートを穿きブラウスを着て、髪もいつもより念入りにセットし自分でおかしくなるほど気合いを入れた。
朝一番の寺子屋に、居るのは受験生ばかりだった。誰かが教室に入ってくる度、ハッとして入り口を見る麗を自分で失笑した。
「また会ったね?」と、優しく言った龍児が来たのは昼過ぎで彼の顔を見た瞬間、麗は心臓がドキドキして頬がカーッと熱くなるのが分かった。
前日と同様、閲覧室で並んで読書してから、寺子屋脇のベンチで少し話した。 その後、龍児が、「少し歩こうか?」と言い出し二人で出掛けた。
(これはもしかしてデートなの?)と麗は自分に問い掛けながら、まるで雲の上を歩くようにフワフワした気分だった。
日が傾いた頃、川縁の石橋の上に並んで腰掛けて様々な話をした。テンションが高かったのか、麗は驚くほど饒舌だった。龍児は穏やかな笑顔で、麗の取りとめもない話しを聞いていた。
普段は大人しくて引っ込み思案だから、もう少し淑やかに振る舞えばと恥ずかしくなったが、 彼ならどんな話も受け止めてくれそうに思え、更にこの機会を逃したらという焦りもあった。
「じゃあ俺、そろそろ帰るね」
「この寺子屋、良く来るの?」と麗。
「あ、うん。だいたい毎日ね」 と龍児。
「じゃあ、また逢えるかもしれないね?」と麗。
龍児の優しい笑顔に、麗は思わず真っ赤になった。麗は帰宅して直ぐに母親に龍児の事を話し、その後もずっと彼の事が頭から離れず、食事中もボーッとして、母親から「好きになるにはまだ早いんじゃない?」と笑われた。
龍児は妖怪の子供だが、イケメンであり、スポーツ万能であり、頭脳明晰だった。それは綾香の算数の問題を見ただけでスラスラと答えを出すぐらいだ。
麗の部屋にポスターが張って逢って、当時の好きなアイドルグループの嵐の松本潤と大野智を足して二で割り、ちょっと不良がかった雰囲気を持ちあわせていながら、松本の甘いマスクのイケメンに変身していた。
ただ麗にとっては、ずっと昔から知っているような、不思議な安心感や親近感を覚えていた。つまり龍児の魔術は相手の好きな容姿に幾らでも変える事が出来るという優れた特技を持ちあわせていたのだ。
麗が小さい頃に憧れた従兄の良純にも、似ていた所為かもしれず、 従兄は麗より五歳上ですが、十代後半で落ち着いてしまった当時の彼でなく、幼稚園生だった麗が思いを寄せた小学生時代の従兄という感じだった。
翌日、開館時刻を待ちかねるように、麗は勉強道具を抱え寺子屋に行った。麗は東京で叔母が買ってくれたお気に入りのフレアースカートを穿きブラウスを着て、髪もいつもより念入りにセットし自分でおかしくなるほど気合いを入れた。
朝一番の寺子屋に、居るのは受験生ばかりだった。誰かが教室に入ってくる度、ハッとして入り口を見る麗を自分で失笑した。
「また会ったね?」と、優しく言った龍児が来たのは昼過ぎで彼の顔を見た瞬間、麗は心臓がドキドキして頬がカーッと熱くなるのが分かった。
前日と同様、閲覧室で並んで読書してから、寺子屋脇のベンチで少し話した。 その後、龍児が、「少し歩こうか?」と言い出し二人で出掛けた。
(これはもしかしてデートなの?)と麗は自分に問い掛けながら、まるで雲の上を歩くようにフワフワした気分だった。
日が傾いた頃、川縁の石橋の上に並んで腰掛けて様々な話をした。テンションが高かったのか、麗は驚くほど饒舌だった。龍児は穏やかな笑顔で、麗の取りとめもない話しを聞いていた。
普段は大人しくて引っ込み思案だから、もう少し淑やかに振る舞えばと恥ずかしくなったが、 彼ならどんな話も受け止めてくれそうに思え、更にこの機会を逃したらという焦りもあった。
「じゃあ俺、そろそろ帰るね」
1
あなたにおすすめの小説
【短編集】こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる