現(うつつ)の夢

しらかわからし

文字の大きさ
22 / 92
第1章 夏の始まりと塀の向こうの少年

第6-3話 初恋の予感と夏の午後

しおりを挟む
龍児がこう言った時は、真剣に『もうちょっと一緒にいて!』と思い、麗の泣きそうな表情を見た龍児は彼女の深層心理まで見抜けてしまう魔術を持っていたので、ニコッと微笑むと麗の肩に手を置き笑顔が近付いた。

(えっ…?)と心の中で叫んだ麗だった。

 麗にとってはファーストキスで、心の準備が出来てなかったのもあり、頭の中はプチパニックになった。 唇を重ねたのは十五秒ほどだったが、麗は完全に魂を抜かれたように、暫く呆然とした。

その場で息を荒げ、更には麗にとって初めての経験だったのが頭のてっぺんから爪先まで電流が走り抜けて、今まで経験した事のない絶頂に達してしまった。

 自慰をしていないのにだった。麗は早熟で自慰を覚えたのは小三の時で、それ以来週に二回ほどしていたが、そんなのは比にならない程だった。それで「じゃあ、また明日、寺子屋でね!」という龍児の声がいつまでも耳の中に残っていた。

 二人が出会ってたった二日で麗は完全に、「恋の病」を患っていた。それまでも気になる男子はいたが、今回はもう次元が違うという感じだった。 寝ても覚めても龍児の笑顔を思い浮かべ、柔らかな唇の感触を思い出してはニヤニヤしていた。

 そして翌日も麗はやっぱり開館時刻から寺子屋で龍児を待った。彼が来たのは前日と同様で昼過ぎで、前の日とは違う方面を散歩した。 二人並んで歩きながらずっと手を繋ぎ、麗は夢の中の雲の上を歩いている気分だった。

 この日、帰りに寄ったのは麗が良く知っている自宅の近所にある小さな寺の境内だった。 もう随分前から住職はおらず、麗の遊び場にしていた所だった。無人の集会所には一ヶ所だけ鍵の掛からない扉があり、奥は倉庫のような部屋があった。忍び込んだのは三年振りくらいだったが、麗たち子供にとっては秘密の隠れ家だった。

 畳敷きの埃に塗れた汚い部屋に、葬儀に使うであろう一式が並べられていた。 麗は親から怒られた時などは、ここに隠れて怒りが収まるのを待った。 もっとも、暗くなると気味悪くて、怒られるのを覚悟で家に戻っていた、そんな思い出の場所だ。

「へえ! こんな所があるんだね?」と龍児は知っていたが初めてだという風な態度を取った。龍児は村の全てを把握していた。それは千里眼の魔術を持っていたからだ。

 龍児はわざと珍しそうに、葬儀の道具などを見て回り、彼女がココに自分を連れてきたという事は、「抱いて欲しい」と言わんばかりなのも理解していたが閉ざされた空間に二人きりと言う事でその事実だけで胸は高鳴っていた。

何故なら魔術が使えると言っても彼は人間の体を借りているのでチェリーボーイだからだ。行為が始まってしまえば彼の魔術で独壇場になった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【短編集】こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

処理中です...