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第2章 静かなまなざしで、未来を見守る
第8話:昼と夜のあいだに
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龍児の勤務時間は、転勤後に大きく変わった。午前は九時から正午まで、午後は十八時から深夜零時まで。十二時から十八時までは自由時間となり、変則的な勤務スタイルに最初は戸惑いもあったが、慣れてくるとそのリズムが心地よく感じられるようになった。
午前中はマンションの清掃が中心だった。外回り、共用スペース、エレベーター、ゴミ集積所などを丁寧に掃除し、住人の荷物を受け取って各部屋の横にある鍵付きボックスに配達する作業も任されていた。単調なようでいて、住人とのちょっとした会話や気遣いが求められる仕事だった。
昼食は社長の奥様が用意してくれた。彼女は料理上手で、季節の食材を使った献立はいつも温かみがあり、龍児はその時間を楽しみにしていた。今日は大学が休みだったため、娘も一緒に食卓を囲んだ。三人で食事をしながら、龍児が風俗店での失敗談を話すと、奥様と娘は声を上げて笑った。
社長からは「御神楽くんが来てから、女房が明るくなって嬉しいよ」と言われ、龍児は照れながらも嬉しさを噛みしめた。人の役に立てているという実感が、彼の心を静かに満たしていた。
午後からは外国人クラブでの勤務が待っていた。洗い場、ボーイ業務、時には料理人の代役もこなす。客の多くは中年男性で、気前よくチップを渡してくれることもあった。お姉さん方に良いところを見せたいという気持ちから、龍児にもチップが回ってくるのだ。ママに「頂いてもいいんですか?」と尋ねると、「ありがたく頂きなさい」と微笑んだ。
クラブでは、龍児自身が遊ぶことはなかったが、ホステスたちは客が来ない時でも玄関前で待機しなければならず、大変そうだった。通行人から見れば、まるで見世物のように映ることもあり、龍児はその姿に複雑な思いを抱いていた。
待機中の女性たちは、姿勢を正し、仕草に気を配りながら、営業の電話をかけたり、小声で会話を交わしたりしていた。電話は主に常連客への連絡で、来店の予定を確認したり、忘れられないように友人のような距離感で話したりする。電話代は自己負担で、十円で三分というピンク電話を使っていたため、彼女たちの努力には頭が下がる思いだった。
一方、姉の美奈子が働く風俗店では、個室が与えられるため、客が来なければ自由時間となる。しかしその分、報酬は完全歩合制で、客がゼロなら収入もゼロ。自由と責任が表裏一体であることを、龍児は姉の働きぶりから学んでいた。
仕事が終わると、ママが食事に誘ってくれることも多かった。外食に連れて行ってくれる日もあれば、自宅で手料理をご馳走になることもあった。昼も夜も食事代がかからず、龍児が自分で食費を出すのは日曜日くらいだった。日曜は姉の美奈子に誘われたり、実家に顔を出したりすることもあり、食事に困ることはなかった。
龍児は、こうした日々の中で少しずつ社会の仕組みや人との距離感を学んでいった。変則的な勤務時間の中にも、規則正しい生活があり、誰かのために動くことの意味があった。彼は今日も、午前と午後のあいだにある静かな時間を使って、次の仕事への準備を整えていた。
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社長からは「御神楽くんが来てから、女房が明るくなって嬉しいよ」と言われ、龍児は照れながらも嬉しさを噛みしめた。人の役に立てているという実感が、彼の心を静かに満たしていた。
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龍児は、こうした日々の中で少しずつ社会の仕組みや人との距離感を学んでいった。変則的な勤務時間の中にも、規則正しい生活があり、誰かのために動くことの意味があった。彼は今日も、午前と午後のあいだにある静かな時間を使って、次の仕事への準備を整えていた。
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