現(うつつ)の夢

しらかわからし

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第2章 静かなまなざしで、未来を見守る

第16話:三者三様の生き方

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龍児には、まだこの人間社会で同性の友人がいなかった。職場では年上のスタッフや女性が多く、気軽に話せる相手は限られていた。そんな中、姉の美奈子には二人の親友ができた。彼女たちは風俗業界で働いているが、同じ店であっても待機は個室で、同僚と顔を合わせる機会が少ないため、友人関係を築くのは難しい。だからこそ、美奈子が築いた絆は貴重だった。

一人目は雲母坂綾香(きららざか・あやか)。現川村で美奈子と友達になり、地元に戻ってからも親交が続いていた。綾香は医科大学に進学し、研修医として働いていたが、教授からの理不尽な求婚を断ったことで、パワハラやセクハラに苦しみ、精神的に追い込まれてしまった。医師としての道を歩み始めたものの、心の傷は癒えず、最終的に医療の世界を離れ、美奈子を頼ってこの業界に入った。

もう一人は三夜沢麗(みよさわ・うらら)。彼女も現川村出身で、大学時代からホストクラブに通い詰め、就職後もその生活を続けた結果、経済的に破綻。行き場を失い、美奈子の働く店に転がり込むようにして就職した。こうして三人は知り合い、やがて親友となった。

龍児が美奈子に呼ばれて行くと、この二人はよく家に遊びに来ていた。部屋が狭かったこともあり、三人の会話は自然と龍児の耳にも届いていた。彼は彼女たちの話を聞きながら、女性同士の友情の深さや、それぞれの人生の重みを感じていた。

ある日、支配人から呼ばれた美奈子が事務所に向かうと、鍵が開いておらず、綾香が先に到着していた。続いて麗も現れ、支配人に連絡すると、奥様が急病で救急搬送されてしまい、付き添いで不在とのことだった。社長が事務所を開けに来るまで、三人は近くの喫茶店で時間を潰すことになった。

その待ち時間の中で、互いの連絡先を交換し、自然と一緒に遊ぶようになったという。実はその日、三人が呼ばれた理由は、社長からの感謝の言葉と特別ボーナスを渡すためだった。美奈子は「勤務中に渡してくれればよかったのに」と思ったが、口には出さなかった。

三人は売上順に、美奈子が一番、綾香が二番、麗が三番だった。封筒の中身を見せ合ったところ、美奈子が三万円、綾香が二万円、麗が一万円。友達になる前は、互いにライバル意識が強かったという。

風俗店では、個室待機が基本で、同僚と顔を合わせることが少ない。そのため、収入や働き方の違いが見えにくく、友人関係が築きにくい。三人は「それも業界の仕組みなのかもしれない」と話していた。

美奈子が言うには、綾香と麗は対照的な金銭感覚を持っていた。綾香は元医師という異色の経歴を持ち、頭脳明晰で堅実。貯金を重ね、いずれはこの仕事を辞めてボランティア活動に専念したいと考えていた。一方、麗は派手好きで、ホストクラブ通いが日常。ブランド品を好み、金遣いも荒く、美奈子ですら一緒に遊ぶのが怖いと感じるほどだった。

綾香は穏やかでお淑やか。年齢層の高い客に支持され、堅実に働いていた。過去には同棲していた男性に預金を使い込まれた経験もあったが、別れた後は再び貯金を始めているという。
麗と美奈子は会話は多いが、外で遊ぶことはほとんどなかった。二人ともフルタイムで働いているため、時間が合わないのだ。美奈子と綾香は週五日勤務で、かなりハードなスケジュールをこなしていた。綾香は「早く稼いで足を洗い、ボランティア活動に移りたい」と語っていたという。

龍児は、そんな三人の関係を羨ましく思っていた。自分にはまだ、この世界で気軽に話せる同性の友人がいない。だからこそ、美奈子が築いた絆は、彼にとっても希望のように映っていた。
美奈子は将来的にマンションを購入する予定だったが、綾香のように明確な目標に向かって貯金するには不安があり、麗のように思い切って使うこともできない。二人の生き方に憧れつつも、自分はただ悩んでいるだけ——そう語る美奈子の姿に、龍児は静かに寄り添っていた。

三者三様の生き方。それでも、互いを理解し、支え合える関係がそこにはあった。
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