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第2章 静かなまなざしで、未来を見守る
第43話:二十歳の節目と未来への約束
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一九六九年、昭和四十四年。龍児はついに二十歳を迎えた。十六歳から夜の世界で働き始め、社長が経営する風俗店や外国人クラブ、さらには賃貸マンションの清掃など、裏方の仕事を黙々とこなしてきた。長年の誠実な働きぶりが認められ、この年、名実ともに正社員として採用されることになった。
これまでの龍児は、パートスタッフとして肩書きもなく、掃除や雑務を中心に働いていた。だが、社長をはじめ、風俗店の支配人、外国人クラブのママ、社長の奥様、そしてお姉さん方まで、皆が龍児の働きぶりを高く評価していた。陰日向なく働く姿勢は、誰からも信頼され、可愛がられていた。
正社員としての初任地は、風俗店の支配人。肩書きは「課長職」となり、龍児はようやく自分の居場所を得たような気持ちになった。これまで関わってきた店舗——風俗店、外国人クラブ、日本人クラブ、焼肉店、そして社長の奥様が住むマンション——そのすべての構造や備品の位置まで把握している龍児にとって、現場の即戦力としての信頼は揺るぎないものだった。
会社の組織は、パート・アルバイトから始まり、平社員、係長、課長、部長、そして役員へと昇進していく。社長はオーナー経営者であり、最終的な地位には届かないが、全店舗を統括する「総支配人兼営業部長」のポストは空席だった。
「龍児、あと五年頑張ってくれれば、その地位を授けるからな」
社長のその言葉は、龍児にとって大きな励みとなった。だが、龍児の心には別の夢もあった。いつかは独立して、自分自身の店を持ちたい——そんな目標を胸に秘めていた。社長の誘いには感謝しつつも、それ以上の夢、つまり社長の娘・美香との結婚という話には、首を縦に振る気にはなれなかった。
美香は華やかで目立つ存在だったが、龍児は彼女の本質を見抜いていた。親の庇護のもとで自由に振る舞う姿に、どこか違和感を覚えていた。龍児が理想とする女性像は、社長の奥様のような、家庭的で教養があり、料理や伝統芸に親しむ落ち着いた人だった。
この頃の龍児の月給は十万円。中学時代の同級生の中では群を抜いて高収入だった。だが、彼は派手に使うことはせず、毎月の給料は銀行に送金し、着実に貯金を増やしていた。
十六歳から働き始めて以降、給料に加えて、外国人クラブのママや社長の奥様から受け取った謝礼なども含めると、すでに五百万円以上の貯金があった。若くしてこれだけの蓄えを持つ龍児は、金銭面でも精神面でも、着実に大人への階段を登っていた。
二十歳という節目を迎えた龍児は、これまでの経験と人間関係を糧に、次なる目標へと静かに歩みを進めていた。夜の世界で培った信頼と実績は、彼にとって何よりの財産だった。
これまでの龍児は、パートスタッフとして肩書きもなく、掃除や雑務を中心に働いていた。だが、社長をはじめ、風俗店の支配人、外国人クラブのママ、社長の奥様、そしてお姉さん方まで、皆が龍児の働きぶりを高く評価していた。陰日向なく働く姿勢は、誰からも信頼され、可愛がられていた。
正社員としての初任地は、風俗店の支配人。肩書きは「課長職」となり、龍児はようやく自分の居場所を得たような気持ちになった。これまで関わってきた店舗——風俗店、外国人クラブ、日本人クラブ、焼肉店、そして社長の奥様が住むマンション——そのすべての構造や備品の位置まで把握している龍児にとって、現場の即戦力としての信頼は揺るぎないものだった。
会社の組織は、パート・アルバイトから始まり、平社員、係長、課長、部長、そして役員へと昇進していく。社長はオーナー経営者であり、最終的な地位には届かないが、全店舗を統括する「総支配人兼営業部長」のポストは空席だった。
「龍児、あと五年頑張ってくれれば、その地位を授けるからな」
社長のその言葉は、龍児にとって大きな励みとなった。だが、龍児の心には別の夢もあった。いつかは独立して、自分自身の店を持ちたい——そんな目標を胸に秘めていた。社長の誘いには感謝しつつも、それ以上の夢、つまり社長の娘・美香との結婚という話には、首を縦に振る気にはなれなかった。
美香は華やかで目立つ存在だったが、龍児は彼女の本質を見抜いていた。親の庇護のもとで自由に振る舞う姿に、どこか違和感を覚えていた。龍児が理想とする女性像は、社長の奥様のような、家庭的で教養があり、料理や伝統芸に親しむ落ち着いた人だった。
この頃の龍児の月給は十万円。中学時代の同級生の中では群を抜いて高収入だった。だが、彼は派手に使うことはせず、毎月の給料は銀行に送金し、着実に貯金を増やしていた。
十六歳から働き始めて以降、給料に加えて、外国人クラブのママや社長の奥様から受け取った謝礼なども含めると、すでに五百万円以上の貯金があった。若くしてこれだけの蓄えを持つ龍児は、金銭面でも精神面でも、着実に大人への階段を登っていた。
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