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第2章 初恋と離別:ベルリンへの旅立ち
1-1話 グレッグの初恋の人 ミリヤムとの出逢い
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グレッグが小学校六年の夏休みのことだった。
父が勤めていた本屋を手伝うよう言われた。
気が進まなかったが、「社会勉強になるから」と父に押しつけられ、仕方なく引き受けた。
報酬は昼食代と往復の乗り合い馬車の代金。
父はグレッグに辛い仕事をさせたくて、わざとそうしたのだと後に気づく。
昼食は近くの定食屋で一人で取っていたが、ある日、少し足を伸ばして五百メートルほど先の店に入ってみた。
奥が調理場で、手前に四人掛けのテーブルが左右に三つずつ並ぶ、小さな店だった。
その店で、グレッグは運命の出会いを果たす。
空いている席に座ると、水とメニューを持ってきたウエイトレスが「何にしますか?」と訊いた。
初めてだったので、「何がお薦めですか?」と尋ねると、彼女は優しく微笑みながら答えた。
「私的には馬のモツ炒めにフライドポテトを添えたのがお薦めです」
その笑顔に、グレッグは胸が高鳴った。
「では、それでお願いします」と言うと、彼女は調理場の窓に向かって注文を通し、再びグレッグの席に戻ってきた。
「あまり見かけないお顔ですね。どちらからいらしたんですか?」
「五百メートル南に下りた本屋で手伝っています」
彼女の顔を見ると、色黒だったが、女優のような眩しいほどの絶世の美女だった。
やがて料理が運ばれてきた。
ジュージューと音を立てる鉄板の蓋を開けると、ニンニクの香りが立ちのぼり、食欲をそそった。
グレッグの大好物だった馬のモツ炒め。
だが、一口食べた瞬間、急に食欲が失せた。
喉が通らない。飲み込めない。
(モツ炒めなのに、なぜ食べられないんだ?)と不思議に思いながら、彼は箸を置いた。
「すみません。急に食欲が無くなってしまって……ごめんなさい」
そう言って会計を済ませ、そそくさと店を出た。
理由は分からなかった。
帰宅しての夕食も喉を通らなかった。
翌日、再びその定食屋へ向かった。
「馬のモツ炒めとフライドポテトでお願いします」と注文。
料理が届き、蓋を開ける。
食べたい気持ちはあるのに、またしても食欲が失せた。
結局、手を付けずに謝罪し、会計を済ませて店を出ようとしたとき、彼女が駆け寄ってきた。
「家はどこですか?」
「乗り合い馬車で村役場のかなり手前です」
「私も同じ方向なので、一緒に帰りませんか?」
その言葉に、グレッグの胸は高鳴った。
馬車乗り場で待ち合わせをすることになった。
それは、少年の心に灯った初めての恋だった。
つづく
父が勤めていた本屋を手伝うよう言われた。
気が進まなかったが、「社会勉強になるから」と父に押しつけられ、仕方なく引き受けた。
報酬は昼食代と往復の乗り合い馬車の代金。
父はグレッグに辛い仕事をさせたくて、わざとそうしたのだと後に気づく。
昼食は近くの定食屋で一人で取っていたが、ある日、少し足を伸ばして五百メートルほど先の店に入ってみた。
奥が調理場で、手前に四人掛けのテーブルが左右に三つずつ並ぶ、小さな店だった。
その店で、グレッグは運命の出会いを果たす。
空いている席に座ると、水とメニューを持ってきたウエイトレスが「何にしますか?」と訊いた。
初めてだったので、「何がお薦めですか?」と尋ねると、彼女は優しく微笑みながら答えた。
「私的には馬のモツ炒めにフライドポテトを添えたのがお薦めです」
その笑顔に、グレッグは胸が高鳴った。
「では、それでお願いします」と言うと、彼女は調理場の窓に向かって注文を通し、再びグレッグの席に戻ってきた。
「あまり見かけないお顔ですね。どちらからいらしたんですか?」
「五百メートル南に下りた本屋で手伝っています」
彼女の顔を見ると、色黒だったが、女優のような眩しいほどの絶世の美女だった。
やがて料理が運ばれてきた。
ジュージューと音を立てる鉄板の蓋を開けると、ニンニクの香りが立ちのぼり、食欲をそそった。
グレッグの大好物だった馬のモツ炒め。
だが、一口食べた瞬間、急に食欲が失せた。
喉が通らない。飲み込めない。
(モツ炒めなのに、なぜ食べられないんだ?)と不思議に思いながら、彼は箸を置いた。
「すみません。急に食欲が無くなってしまって……ごめんなさい」
そう言って会計を済ませ、そそくさと店を出た。
理由は分からなかった。
帰宅しての夕食も喉を通らなかった。
翌日、再びその定食屋へ向かった。
「馬のモツ炒めとフライドポテトでお願いします」と注文。
料理が届き、蓋を開ける。
食べたい気持ちはあるのに、またしても食欲が失せた。
結局、手を付けずに謝罪し、会計を済ませて店を出ようとしたとき、彼女が駆け寄ってきた。
「家はどこですか?」
「乗り合い馬車で村役場のかなり手前です」
「私も同じ方向なので、一緒に帰りませんか?」
その言葉に、グレッグの胸は高鳴った。
馬車乗り場で待ち合わせをすることになった。
それは、少年の心に灯った初めての恋だった。
つづく
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