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第2章 初恋と離別:ベルリンへの旅立ち
1-3話 初恋の人 ミリヤムの引っ越しでグレッグとの別れ
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ある日の帰り道、グレッグとミリヤムは馬車乗り場近くの教会の門の横にある林の中で、並んでベンチに座っていた。
木々のざわめきが、二人の沈黙を包んでいた。
ミリヤムの表情は、いつもと違っていた。
どこか遠くを見つめるような、少し大人びた雰囲気。
グレッグは言葉を探していたが、何も言えなかった。
自然な流れで、二人は唇を重ねた。
キスの仕方もよく分からなかったので、ただ唇をそっと合わせただけだった。
それでも、グレッグの胸は高鳴った。
別の日、二人は示し合わせてバイトを休み、乗り合い馬車で湖へ遊びに行った。
帰りの馬車には他に乗客はおらず、海近くの乗り場から自宅のある乗り場まで、並んで座ってずっとキスを交わした。
その時は、深いキスだった。
グレッグはミリヤムの髪の香りを感じながら、胸が張り裂けそうなほどの幸福を味わっていた。
だが、彼女の胸や下半身には触れなかった。
どう触れていいのか分からなかったし、何よりも彼女を大切にしたかった。
◇◆◇◆◇
夏休みが終わろうとしていた頃、ミリヤムの父親の転勤が決まった。
ハンブルクの本社勤務に戻ることになり、家族全員でボンから引っ越すという。
グレッグは絶望した。
やっと心を通わせた恋人と、こんなにも早く別れなければならないなんて。
手伝いの最後の日、ミリヤムはグレッグに言った。
「父から聞いた時、すごく驚いて……泣いちゃった。こんなに早く離れなきゃいけないなんて、悲しすぎるよ」
引っ越しの日、グレッグは手伝いに行った。
彼女の級友も数人来ていて、その中には一学年上の男子もいた。
「お前、ミリヤムと付き合ってたのか?」
「はい」
グレッグが答えると、彼は苦虫を潰したような顔で言った。
「あの娘は先輩や俺たちの憧れの的で有名だったんだぞ。何でお前みたいな年下と付き合ってるなんて、おかしいだろ!」
「ま、ミリヤムが引っ越せば、都会の男子たちに言い寄られるのは間違いないだろうけどな!」
その言葉がミリヤムの耳に入ったらしく、彼女はグレッグのもとへ駆け寄ってきた。
「グレッグ! 中学を卒業したら私はベルリンに行って女優になる。その時にはまたグレッグの彼女にしてね。私はそれまでは誰とも付き合わないし、約束するから。絶対に手紙頂戴よ! 私も書くから!」
グレッグは嬉しかった。
でも、どこかで信じられなかった。
あまりにも美しい言葉だったから。
級友や先輩たちは「おい、おい、ご馳走様!」と冷やかした。
ミリヤムは後ろ髪を引かれる思いで、馬車に乗り込んだ。
グレッグは、彼女たちが乗った馬車が見えなくなるまで、ずっと手を振っていた。
その手は、しばらく震えていた。
つづく
木々のざわめきが、二人の沈黙を包んでいた。
ミリヤムの表情は、いつもと違っていた。
どこか遠くを見つめるような、少し大人びた雰囲気。
グレッグは言葉を探していたが、何も言えなかった。
自然な流れで、二人は唇を重ねた。
キスの仕方もよく分からなかったので、ただ唇をそっと合わせただけだった。
それでも、グレッグの胸は高鳴った。
別の日、二人は示し合わせてバイトを休み、乗り合い馬車で湖へ遊びに行った。
帰りの馬車には他に乗客はおらず、海近くの乗り場から自宅のある乗り場まで、並んで座ってずっとキスを交わした。
その時は、深いキスだった。
グレッグはミリヤムの髪の香りを感じながら、胸が張り裂けそうなほどの幸福を味わっていた。
だが、彼女の胸や下半身には触れなかった。
どう触れていいのか分からなかったし、何よりも彼女を大切にしたかった。
◇◆◇◆◇
夏休みが終わろうとしていた頃、ミリヤムの父親の転勤が決まった。
ハンブルクの本社勤務に戻ることになり、家族全員でボンから引っ越すという。
グレッグは絶望した。
やっと心を通わせた恋人と、こんなにも早く別れなければならないなんて。
手伝いの最後の日、ミリヤムはグレッグに言った。
「父から聞いた時、すごく驚いて……泣いちゃった。こんなに早く離れなきゃいけないなんて、悲しすぎるよ」
引っ越しの日、グレッグは手伝いに行った。
彼女の級友も数人来ていて、その中には一学年上の男子もいた。
「お前、ミリヤムと付き合ってたのか?」
「はい」
グレッグが答えると、彼は苦虫を潰したような顔で言った。
「あの娘は先輩や俺たちの憧れの的で有名だったんだぞ。何でお前みたいな年下と付き合ってるなんて、おかしいだろ!」
「ま、ミリヤムが引っ越せば、都会の男子たちに言い寄られるのは間違いないだろうけどな!」
その言葉がミリヤムの耳に入ったらしく、彼女はグレッグのもとへ駆け寄ってきた。
「グレッグ! 中学を卒業したら私はベルリンに行って女優になる。その時にはまたグレッグの彼女にしてね。私はそれまでは誰とも付き合わないし、約束するから。絶対に手紙頂戴よ! 私も書くから!」
グレッグは嬉しかった。
でも、どこかで信じられなかった。
あまりにも美しい言葉だったから。
級友や先輩たちは「おい、おい、ご馳走様!」と冷やかした。
ミリヤムは後ろ髪を引かれる思いで、馬車に乗り込んだ。
グレッグは、彼女たちが乗った馬車が見えなくなるまで、ずっと手を振っていた。
その手は、しばらく震えていた。
つづく
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