25年間の闘いー奪われた恋、奪い返す命ー

しらかわからし

文字の大きさ
17 / 130
第3章 過ぎゆく温もり:王の側室となった彼女へ

1-1話 アリーナとの出逢い(故郷の先輩)

しおりを挟む
ベルリンの街を、グレッグは今日も歩いていた。
目的は、捨てられた屑を拾い集めて、取引場で金に換えること。
だが、この日は朝から何も食べておらず、空腹で足取りが重かった。
水飲み場を見つけると、彼は腹いっぱい水を飲んだ。

それが災いした。
水は洗濯用だったのか、腹を壊してしまい、いつもの寝床まで戻ることもできなかった。
人家の軒先に身を横たえ、うずくまっていると、ふと女性の声がした。

「グレッグじゃない? こんなところでどうしたの?」

目を開けると、そこには懐かしい顔があった。
地元の小学校時代、高校生だった先輩――アリーナだった。
彼女もグレッグのことを覚えていたらしく、驚いた様子で声をかけてきた。

「腹が減って、お金も使い果たしてしまって……。水飲み場で水を飲んだら、腹が痛くなってしまって……ここで横になっていたんです」

グレッグがそう答えると、アリーナは眉をひそめた。

「あそこの水は洗濯用よ。飲んじゃダメ。とにかく、中に入って!」

彼女は迷うことなく、グレッグを家の中へ招き入れた。
トイレを借りて、ようやく腹の痛みが落ち着いたグレッグは、お礼を言って帰ろうとした。
だが、アリーナは彼を呼び止めた。

「どうしてベルリンに来たの?」

グレッグは一瞬、言葉に詰まった。
ミリヤムのことは話さず、こう答えた。

「親と喧嘩して、家出してきたんです。どうせなら大都市の方が仕事もあると思って、ベルリンを選びました」
「今まではどこで寝てたの?」
「スラム街に寝床を見つけて……外です」
「だったら、しばらく家にいたら?」
「えっ……でも、小父さんと小母さんは?」
「親戚の叔父が亡くなって、両親はザールブリュッケンに行ってるの。たぶん一ヶ月は帰ってこないわ」
「アリーナさんは仕事があるでしょ?」
「グレッグとは幼馴染みたいなものだから。鍵を渡すから、好きな時に出かけて、好きな時に帰ってくればいいのよ」
「……タダでいいんですか?」
「もちろんよ」
「ありがとうございます」

その日から、グレッグはアリーナの家で居候することになった。
それは、彼にとって本当にありがたい申し出だった。
夕食には、アリーナが野菜スープとパンを用意してくれた。
温かい食事と、誰かの気遣い。
それは、グレッグにとって久しく忘れていた感覚だった。
正に、一宿一飯の恩義。
グレッグは、アリーナに深く感謝していた。

つづく

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...