25年間の闘いー奪われた恋、奪い返す命ー

しらかわからし

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第3章 過ぎゆく温もり:王の側室となった彼女へ

2-2話 ベティーナとグレッグの生活:ご褒美の夜

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その土曜の夜、グレッグは少し緊張しながら、ベティーナの部屋の前に立っていた。

「ご褒美をあげたいから、今夜、私の部屋に来なさい」

そう言われた言葉が、頭の中で何度も反響していた。
ノックをすると、ベティーナがすぐに扉を開けた。
彼女は普段の仕事着ではなく、柔らかな素材の部屋着をまとっていた。
その姿に、グレッグは思わず目を逸らした。

「どうぞ、入って」

部屋には葡萄酒の香りが漂い、テーブルには軽食が並んでいた。

「乾杯しましょう」

ベティーナがグラスを差し出すと、グレッグは少し戸惑いながらも受け取った。

「仕事、頑張ってるわね。厨房でも屑屋でも、誰よりも真面目」
「ありがとうございます」
「彼女はいるの?」
「いません」

そのやり取りの中で、グレッグは自分が見られていることを意識した。
ベティーナの視線は、彼の言葉の奥にある感情を探るようだった。

「グレッグは、誰かに優しくされたこと、ある?」
「……あまり、ないです」
「そう。じゃあ、今夜は少しだけ、甘えてもいいのよ」

彼女の言葉は、母性的な優しさと、どこか包み込むような温もりを含んでいた。
グレッグは、誰かにそう言われたのは初めてだった。
彼の中で、何かが静かにほどけていくような感覚があった。

「キス、したことある?」

ベティーナの問いに、グレッグは小さく頷いた。

「一度だけ……初恋の人と」
「そう。じゃあ、もう一度、思い出してみて」

彼女はそっとグレッグの手を取り、隣に座った。
その夜、二人は長く話をした。
仕事のこと、過去のこと、そしてこれからのこと。
ベティーナは、グレッグの話に耳を傾けながら、時折微笑んだ。
その笑顔は、彼にとって安心の証だった。

「あなたは、まだ若い。でも、心はとても成熟しているわ」
「そうですか……自分では、よく分かりません」
「分からなくていいの。今は、ただここにいてくれれば」

グレッグは、彼女の言葉に静かに頷いた。
それは、誰かに受け入れられたという実感だった。
夜が更けるにつれ、部屋の灯りは柔らかくなり、会話は途切れがちになった。
だが、その沈黙すら心地よかった。
グレッグは、ベティーナの隣で、初めて「安心」という感情に包まれていた。

つづく
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