25年間の闘いー奪われた恋、奪い返す命ー

しらかわからし

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第3章 過ぎゆく温もり:王の側室となった彼女へ

3-4話 夕食の時間:二人の距離

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「この辺は僕の地元なんです。知り合いのお店に行きませんか?」
グレッグの提案に、カルラは少し驚いたように微笑んだ。

「いいわよ。行きましょう」
夕暮れの街を並んで歩く二人の姿は、まるで長年連れ添った恋人のようだった。

カルラは、グレッグの肩にそっと寄り添いながら、彼の歩幅に合わせて歩いた。
店に入ると、懐かしい香りがグレッグを包んだ。
かつて、軒先で眠り、残飯を分けてもらったあの店。
今は、客として、そして誰かを連れて来る立場として戻ってきた。
「以前、ここでお世話になったんです。今日はそのお礼に来ました」
グレッグが女主人にそう告げると、彼女は目を細めて笑った。
「はいはい、あの時のイケメン君ね。よく覚えてるわ」

カルラはそのやり取りを静かに見つめていた。
グレッグの過去を垣間見たようで、胸の奥が少しだけ温かくなった。
料理を選ぶ間、グレッグはカルラの顔を見ながら言った。
「何でも好きなものを選んでください。今日は僕の奢りです」

カルラは少し照れながらも、「ステーキと葡萄酒にしようかな」と答えた。
グレッグは、彼女の好みに合わせて、控えめなビーフシチューを選んだ。
料理が運ばれてくると、グレッグは取り皿に一口分を分けてカルラに差し出した。
「温かいうちに食べてください」
カルラはその気遣いに、少しだけ頬を赤らめた。

「ありがとう。……なんだか、恋人みたいね」
グレッグは笑って答えた。
「だって、そうでしょう?」
その言葉に、カルラは何も言わず、ただグレッグの目を見つめた。

その視線には、言葉以上の感情が込められていた。
店内の灯りが、二人の間に柔らかな影を落としていた。
料理の香りと、静かな音楽が、心地よい空気を作っていた。
カルラはグラスを傾けながら、ぽつりと呟いた。
「こんな風に誰かと食事をするの、久しぶりかもしれない」
「僕もです」
グレッグは、彼女の言葉に静かに頷いた。

それは、ただの夕食ではなかった。
二人の距離が、少しずつ縮まっていく時間だった。

つづく
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