25年間の闘いー奪われた恋、奪い返す命ー

しらかわからし

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第3章 過ぎゆく温もり:王の側室となった彼女へ

10-13話 つながる味:地域と店を結ぶ一皿

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ある日、クラリッサは厨房の片隅で、グレッグにそっと声をかけた。
「グレッグさん、少し相談したいことがあるんです」
彼女の手には、手書きの企画書が握られていた。

「地元の農家さんと協力して、季節の食材を使った特別メニューを出せたらと思って」
その言葉に、グレッグは目を細めた。
「面白い。君がそこまで考えてるとは思わなかった」

クラリッサは少し照れながらも、真剣な眼差しで続けた。
「料理って、ただ食べるだけじゃなくて、誰かの暮らしや土地とつながっていると思うんです。
それを、お客様にも感じてもらえたらって」
グレッグは静かに頷いた。
「じゃあ、やってみよう。俺も協力する」

数日後、クラリッサとグレッグは近郊の農家を訪れた。
畑に並ぶ野菜、果樹園の香り、農家の人々の笑顔——
クラリッサは、食材の背景にある物語をひとつひとつ吸い込むように聞いていた。

「このトマトは、朝露を浴びてから収穫するんです」
農家の女性が語る言葉に、クラリッサは目を輝かせた。
「その時間の香りまで、料理に閉じ込めたいです」

店に戻ると、クラリッサはすぐに試作に取りかかった。
グレッグは、彼女の熱意に押されるように、厨房の火を整えた。
若手料理人たちも興味を持ち、自然と手伝いの輪が広がっていった。

数日後、「地元の恵みフェア」と題した特別メニューが始まった。
店内には、食材の産地や農家の紹介が添えられた小さなカードが並び、
客たちは料理を味わいながら、土地の物語に耳を傾けていた。

「この店、変わったね」
常連客の一言に、グレッグは静かに微笑んだ。
「変えたんじゃない。育ってるんだよ」

クラリッサの企画は、ただのメニューではなかった。
それは、地域と店、料理人と客を結ぶ、静かな橋だった。
厨房の火は、今日も静かに燃えていた。
その炎は、土地の恵みと人の想いをつなぎながら、店の未来を照らしていた。

つづく
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