泡のように、生きる

しらかわからし

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第1章 パラサイトな二人の人生模様

第34話 それぞれの春

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春が来た。  
柔らかな風が街を包み、花の香りが空気に混じる頃――  
圭子は、新しい街で福祉の研修講師として働いていた。
そして手取りが少なかったので夜はクラブのホステスとして勤務していた。
次第に圭子の美貌と社会経験から、そのクラブでNO1になり、昼の仕事を辞めてクラブで専属で勤務するようになった。  

朝の通勤路には、満開の桜が並び、道行く人々の表情もどこか穏やかだった。  
施設の玄関をくぐると、利用者たちの笑顔が彼女を迎えてくれる。  
その笑顔に囲まれながら、圭子は静かに、自分の人生を歩いていた。  

かつての痛みや迷いは、完全に消えたわけではない。  
それでも、今の彼女は、過去を抱えながらも前を向いていた。

一方、悟志は、小さな町の小学校で、子どもたちにピアノを教えていた。  
音楽室の窓からは、菜の花畑が見え、春の陽射しが鍵盤に差し込んでいた。  
子どもたちの歌声に合わせて指を動かすたび、ふと圭子の歌声が脳裏に浮かぶことがある。  

あの頃、彼女と一緒に音楽を奏でた記憶は、今も鮮やかに残っていた。  
それでも、彼は黙って鍵盤を叩く。  
音楽は、今の彼にとって、過去と未来をつなぐ唯一のものだった。  
誰かのために弾く音が、少しずつ彼自身を癒してくれていた。

二人は、もう会うことはないかもしれない。  
それぞれが別の道を選び、別の街で暮らしている。  
互いの名前を口にすることも、連絡を取ることもない。  
それでも、心のどこかに、相手の存在が静かに残っている。  
それは、憎しみでも執着でもなく、ただ一つの季節を共に過ごした記憶だった。

それぞれの春は、確かに始まっていた。  
過去は消えない。  
けれど、春は、いつでも新しい始まりを運んでくる。  
そしてその始まりは、静かで、確かなものだった。

つづく

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