スキル:浮遊都市 がチートすぎて使えない。

赤木 咲夜

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北太平洋浮島編

第33話 海の危険

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青い空、白い雲、エメラルドグリーンの海。
想像していたような海が広がっていた。

想像していなかったのは、ウェットスーツをみんな着ていることだ。

「さっそく狩りに行こう!!」
ハイテンション妹。

なんというか、期待外れとはこのことだろう。
レンタルしたダンジョン用ウェットスーツ。水生モンスターと戦うように作られたこのウエットスーツは、全身に鱗のようなものがつけられていて、防御力を高めている。

武器はいつもの武器だ。毒腐食加工をしているので、海の中でも使うことができる...らしい。

基本は水中戦なのだが、普通の潜水用のボンベを背負うとまともに戦うことができなくなるので、基本はシュノーケル。戦闘の時はミニボンベを使う。ミニボンベは2Lペットボトルよりも少し大きいくらいなので、戦いの邪魔にはなるが、大きな影響はない。


空港に到着した俺たちは、すぐに宿泊予定のログハウスへと向かった。ログハウスを選んだ理由は妹がパンフレットを見て、「このログハウスに泊まりたい」と言ったからだ。

特に反対意見もでなかったので、そのまま採用になった。
チェックインした後、ウェットスーツやボンベなど必要な物をレンタルし、着替えて浜辺に再集合することになった。

「この水域にいるモンスターは主に4種類。ナックラヴィー、ギガンフレット、海洋スライム、クラーケン。

今回私たちが狙っているのは海洋スライムと、ギガンフレットよ。

海洋スライムはなるべく生きたままで捕獲。核を瓶に詰めれば他は別に拾う必要ないから。核さえあれば再生するし、そのまま下水処理場で使われるらしいから栄養はたっぷりあるから問題ないって書いてあったわ。

ギガンフレットはバッサリと倒しても大丈夫。ドロップの大きなヒレが今回欲しいものだから。

モンスターは倒したあと、首を落とさないこと。全部陸地に引き上げてからでないと、みんな海の底に消えて行くから注意ね。

最後に、ここはダンジョンと違って手軽に復活方法する方法はないから。もしも死にそうになったらすぐに救難筒を使うこと。私が助けにいくし、間に合わなくてもデスカプセルだけでも回収するから。」
こういう取りまとめ役は学級委員経験のある神山に任せるに限る。

今回はパーティではないので、ペアで組むことになった。
水中なのでお互いに何かがあればボンベを共有できるようにだ。

俺とアンジェリーナ
真斗とジャック
妹とゆりちゃん
森と志帆
鈴と一ノ瀬
神山はウンディーネになり、水中呼吸ができるので単独行動だ。

「よし、準備も整ったし、さっそく狩りに行こう!!」

そう言って妹はレンタルの手漕ぎボートに乗り込んだ。

ボートを引っ張るのは鈴だ。水面歩行スキルで水の上を歩く。
「鈴さん、疲れない?」
妹が鈴に聞く。

「うーん、確かに重たいけど、いったん動き出したらそれほど重たくないわね。静が水の抵抗を減らしてくれているし。」
鈴は船首のロープをキャリーケースを引くようにもって歩く鈴。

「鈴のスキルは普段はあまり役に立たないけど、こういう時とっても便利だよな。」
森が一言余計なことをいう。

「役に立たない言うな。」
神山に怒られる森。
神山と鈴だけは黒のウエットスーツではなくいつもと同じ服なので少し目立つ。

「あはは、確かに森君と違って普段はあまり役に立てないわね。」
大人の対応の鈴。

「そうですか?ものすごく便利ですよ。例えば、鈴、ちょっと手をつないで。」
一ノ瀬は鈴に向かって手を伸ばす。

「ちょっと待ってね」
と言いながら、船の方にやってくる鈴。
一ノ瀬は鈴の手を握る。

そして二人で手をつないで水面を歩く。

「こんな風に鈴のスキルは手をつないでいる人も一緒に水面を歩くことができるんですよ。」

鈴の持っていた船の引き綱を鈴からもらい、一ノ瀬が引っ張る。もう片方の手はしっかりと鈴の手を握っている。

なんというナチュラルなカップル。

手をつないでいる二人をみて、なんとなくアンジェリーナを見る。
アンジェリーナは少し照れながら手を出してきた。

俺は無言でアンジェリーナの手をみんなに見つからないように握った。
ギュッとアンジェリーナは手を握り返してくる。

だめだこれ、慣れていないから意識してしまう。
きっと今の俺の顔、真っ赤になっているんだろうな。

しばらく進むと黄色い旗が立つブイに到着した。鈴がブイにボートの綱を繋ぐ。

「ここらへんはギガンフレットが多く出現する場所らしいわ。」
神山は空中を飛びながらいう。

神山の言葉にジャックと真斗以外の全員がボートを降り、海の中に入る。
真斗は泳げないので、ジャックはあまり戦闘に自信がないので船に残るらしい。

神山がなかなか降りてこない。

「そうしたの静、海に入らないと狩りできないわ。」
神山がなかなか降りてこないので不審に思い、再び水面に立つ鈴。

「わかっているんだけど、ちょっとね。」
神山は水中に体を沈める。
「私、お風呂の中以外で水中で呼吸したことがないから少し怖いのよ。」

「大丈夫よ。スキルで水中で呼吸できるってわかってるんでしょ?お風呂の中で呼吸できるなら海もおんなじよ。」
無責任に鈴が言う。

海とお風呂のお水では塩分濃度とか違うし、温度も違う。
淡水にすむ金魚を海水に入れれないように、もしかして何かあればどうするんだろう。

「鈴の言う通りね、思い切って潜ってみる。」
そう言って水中に潜る神山。

俺はシュノーケルを銜えて海に潜った。

神山がすごいスピードで水中を泳ぐ。体はまっすぐなのに左右上下自由自在だ。空中を飛んでいるときと速度はほどんど変わらない。

「いいわね、海の中。お風呂の中よりも広いし行きもしやすいわ。」
楽しそうな神山。
そのまま水面に向かって高速で泳ぎ水面からジャンプした。

昔テレビで見た水中のペンギンを見ているみたいだった。

俺はアンジェリーナと足ヒレを使って泳ぐ。
足の疲労感がいつもよりも大きいが、普段から運動をしていたおかげで耐えれないほどではない。

「チャン、あそこに赤い核が見えるわ。たぶんあれが海洋スライムじゃない?」
アンジェリーナの指さす方向には透明のビニールのようなものが漂っていた。そしてその中心には確かに赤い丸い球体がある。

とても見つけにくい。スライムはまとわりつくのが一般的な攻撃手法なので、これに水中でまとわりつかれるとたまったものではないな。

「アンジェリーナ、ボンベに切り替えて捕獲しに行くぞ。」
「わかったわ。」

俺とアンジェリーナはボンベのマウスピースを銜える。
そして一気にスライムに近づいた。

アンジェリーナは瓶をもって潜る。
俺はポーション刀を抜いて、スライムに飛び込む。

毒ポーションをポーション刀に装填する。刀から毒ポーション特有の黒液体が刀を覆う。俺は刀を振って海洋スライムに切りつけた。

海洋スライムを斬る。

斬れたスライムの切れ端がどこかへ消えていく。
こうしてだんだんと海洋スライムを削って攻略するのだろうか。

ポーション刀の黒色の毒ポーションコーティングが剥がれている。
一回の攻撃で一つの毒ポーション消費か。

斬るたびに装填がめんどくさいな。

アンジェリーナが瓶を片手に近づく。

俺は水中で会話ができないので、離れるようジェスチャーで伝える。
それを無視してアンジェリーナはスライムに突っ込む。

核近くまで近づくアンジェリーナ。

スライムは基本近づくものに絡みつく。
海洋スライムもその性格があり、アンジェリーナが海洋スライムが絡む。

身動きが取れないアンジェリーナ。
俺は慌ててアンジェリーナを助けようする。

完全にアンジェリーナに絡み、動かなくなる海洋スライム。

やばい、海洋スライムが固まった。
・・・とおもったら急にスライムが力なくほどける。

アンジェリーナが水面にむかって泳ぐ。
俺もアンジェリーナの後を追う

「ぷぱぁ、なんとかうまく行ったわ。」
そう言ってスライムの核の入った瓶を見せるアンジェリーナ。

俺はなにが起きているか、わからなかった。

ボートにいったん戻る俺たち。

「アンジェリーナ、どうやって海洋スライムから抜け出したんだ?」
スライムは弱いモンスターだが、初心者がダンジョンで死ぬ原因ナンバーワンのモンスターでもある。

その原因が、絡まれると抜け出せない。
同じ性質の海洋スライムに絡まれて抜け出したアンジェリーナ。一体どうやって抜け出したんだろう。

「ああ、簡単よ。海洋スライムが絡まれて動かなくなったから、核が中にはいるように瓶を転移させただけよ。」

ああ、なるほど。

核が瓶に入って捕獲完了、そして核が体から切り離されてスライムからも抜け出せる。
スライムに完全に絡まれると、スライムは消化のために動かなくなる。
モンスターや肉の切れ端をスライムに投げて攻略をするのだが、その応用というわけだ。

だけど、ちょっとな。

「アンジェリーナ、そういう作戦はあらかじめ俺に言ってからやってくれ。普通に心配する。」
「大丈夫よ。ダンジョンの外だから、いざとなったら転移で抜け出せるわよ。」
「いや、そうかもしれないけど、今度からはちゃんと行ってくれ。」
「・・・わかったわ。」

アンジェリーナは少し不満そうだが、俺が心配しているとわかってか、納得してくれた。

その後俺がおとりになり海洋スライムを集め、スライムの核の瓶詰をひたすら作る。

死にかけているところでアンジェリーナが助けてくれているみたいで、少し癖になった。

ーーーーーーーー

海の底に赤い大きな魚が群れを成して泳いでいる。

そのうち1匹が群れから外れて泳いでいた。
「これが、ギガンフレットよ。」

水の中で唯一話すことができる神山が言った。

森さんはハンマーを構え、足ヒレを一生懸命動かし、ギガンフレットに突撃する。
「森、不要に近づいたらだめ。ギガンフレットの背びれには毒があるわよ。強い毒だから当たったらだめよ。」

大きなヒレ、全長2mくらいで顔の高さが50cmくらいある。
下顎から延びる牙が二本、上あごを突き抜けて長く伸びている。

森さんにギガンフレットが気づいたようだ。ギガンフレットが森に突撃する。
私は慌てて、氷属性弾のマガジンを装着して、森に向かってくるギガンフレットに向かって打つ。

弾速が水中のせいで遅い。間に合わない。私は必死に引き金を引く。
ギガンフレットの顎が動き、歯と歯があたって聞こえるカチカチという音が、水の中に響く。それに合わせて角のような牙が動く。

ギガンフレットは森さんをしたから攻めて牙を突き立てる気だろう。

森は近づくギガンフレットにハンマーの狙いを定める。
あの角度でハンマーを振れば牙はきっと折れるだろう。でも毒針は避けられない。

森さんがハンマーを振る。
砕ける牙、そして毒針が当たる寸前、神山さんが森さんに突撃した。

「危ないじゃない。死ぬ気なの?」
怒る神山。

森さんを水中で怒鳴ったあと、顔が一瞬ゆがむ神山さん。
神山さんの足にはギガンフレットの背びれの一部が刺さっていた。

ギガンフレットはこちらに引き返してくる。牙こそ折れているが、凶暴性はそのままだ。

森さんは神山さんを守るように背にして2本のハンマーを構える。
私は森さんに並び近づくギガンフレットに氷属性弾をどんどん打ち込む。

どんどん近づいてくるギガンフレット。
吸い込まれるように弾はギガンフレットに当たっているのに全くひるまない。

森さんがギガンフレットに当たる寸前でハンマー2本で挟むように思いっきり頭を殴った。

ギガンフレットはビクンともせず、動かなかくなる。

森さんはギガンフレットに針をかけて水上に上がった。

「大丈夫か、神山。」
ボートに神山さんを引き上げる森さん。水から口から大量の海水を吐き出し、人間に戻る神山さん。
足はギガンフレットの毒針で腫れている。

「誰のせいよ。」
怒る神山さん。

怒るのもいいけどそれよりも早く毒を何とかしたほうがいい。
「そこまでにしてください。神山さん、とりあえず白ポーション飲んでください。毒だけでも先に解毒しましょう。」

白ポーションを飲む神山さん。

私は傷口を見る。
太い棘が刺さっている。

「神山さん、棘を抜くので絶対に動かないでください。」

神山さんがうなずいた。
私は自分が刺さらないように軍手を二重にして折れないようにまっすぐゆっくりと引き抜く。人差し指くらいの大きさの棘、かなり大きい。

棘は無事引き抜くことができた。
水をかけて傷口を確認する。棘の一部でも残っていたら壊死の原因だ。

抜いた棘には途中で折れている気配はないし、傷口の中に棘が残っている様子もない。

私は中級ポーションを開封し、傷口半分にかける。のこり半分を神山さんに飲ませる。
傷がみるみるうちに回復する。

私はとりあえず安心する。

「森さん、ここはダンジョンではないので軽率な行動厳禁です。ここは本当に死人が出るところなんです。今回はこの程度で済みましたが、もしも白ポーションがなければ神山さんの足は完全に壊死していますよ。反省してください。」
壊死はすこし言い過ぎだが、これくらい言わないと森にはダメだろう。

ポーションがあって本当に良かったです。

私は心の底からそう思った。
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