37 / 46
北太平洋浮島編
第34話 予告と悪夢
しおりを挟む
収穫の成果
海洋スライムの核 21個 金貨21枚
ギガンフレット 3匹 ヒレ6個。金貨3×6=18枚
合計39枚。
「あまりいい値段にはならないわね。」
アンジェリーナは明細書を確認して言った。
「そうですね、ダンジョンと違い死の危険があるにもかかわらず成果があまり良くないです。」
志帆が神山を見ながらいう。
「志帆、神山がどうかしたの?」
目線に気づいてアンジェリーナは志帆にたずねる。
「実はギガンフレットの毒針が神山さんのふくらはぎに刺さったんです。森さんが突撃したせいで。」
志帆は森をジト目で見る。
「わざとじゃない。悪かったと思うけど。ごめん...。」
珍しく素直に謝る。
「別にいいわよ。今回は結果的だけど、なんともなかったのだし。あなたみたいな突撃役が必要な時もあるわ。」
あれ?神山が森に優しい。
こんなことってあるか?
「神山、ちゃんと解毒したか?」
ああー、真斗それはやめたほうがいいぞ。
「どういう意味よ。」
「神山って森にそんなに優しかったっけ?」
「そ、そんなことないわよ。」
少し顔が赤い神山。
「あのね、静はツンデレなのよ。いまデレのところが出たの。」
鈴が真斗に耳元で言った。
「何よ、ツンデレって。私はそんなんじゃないわ。珍しく森が反省したからああ言ったのよ。悪い?」
神山、怒り方が完全にツンデレキャラになってるぞ
「静、青春しているわね。」
「アンジェリーナさんまで。」
海に日が落ちるのを見ながら俺たちは笑った。
ーーーー
警告
北太平洋浮島と南太平洋浮島で緊張が高まっています。
20時間後に浮島間戦争の可能性有り。
直ちに退避することを推奨。
夜、ログハウスの布団の中。
俺以外のメンバーはみんなぐっすりだ。
ログハウスには寝室がなく、男女混合で寝ることになったのだが、俺はスキルステータスに表示されたこのメッセージが気になって眠れずにいた。
浮遊都市はオートモードで世界中自由に動いているが、俺が浮島についてからは俺がいる北太平洋浮島の方へと、進行方向を変えている。
俺は昨日飛行機の中でみた悪夢を思い出していた。
20時間後と言えば、ちょうど俺たちが飛行機に乗る予定の飛行機が出発する時間だ。
明日の予定はバーベキューを浜辺でしながら海水浴。
そして片付けした後帰宅だ。
今まで浮遊都市のシステムが俺にメッセージを表示することなんてなかった。
探索者同士の争いが最近増えていると聞いた。
国同士の戦争こそ起きていないが、ダンジョン内で一つのクランがフロアを占拠したことが原因でクラン同士の小競り合いが起きたことはある。
インドのダンジョンと中国のダンジョンでの出来事だ。
どちらも超大手ギルドによって攻められて占拠状態は解除されたらしいが、それがきっかけでダンジョンによってはクラン同士の争いが活発だ。
世界中のダンジョンによってはフロア占拠したクランに何かの特典をつけて、クラン同士の戦いを推奨するとこさえあるのだ。
もしかしたら、そんな感じで浮島同時の戦争もあり得るのではないか。
浮島スキルの支配人同士が、何かの意見や方針に食い違いがあって対立関係にある。
浮島を一つ潰せば、それだけもう一つの浮島への各国の依存度は増す。そうすればより多くの人が来てスキルのレベルを上げることができる。より多くの富が独占できる。
そう言えば、もしも支配人が死んだらどうなるのだろうか。ダンジョンに寿命があるとすれば、どう考えてもダンジョンの方が長い。浮島でも浮遊都市でもそうだ。
俺はスキルステータスを開き、ヘルプを探す。
≪浮遊都市スキルを持つ者が復活の見込みなく完全に亡くなった場合、浮遊都市はリセットされ、世界で新たに生まれてくる子供にランダムに浮遊都市スキルが付与されます。これには例外があります。≫
ならもしも、浮遊都市が何者かに破壊されればどうなる?
俺はスキルを失うのか?
≪浮遊都市のコア完全に破壊された場合、浮遊都市スキルを持つ者は死にます。これには例外はありません。≫
浮遊都市が破壊されたら、俺は死ぬ。
浮遊都市はきっとそう簡単には破壊されることはない。
だけど、自分の命が他の何かで失われる可能性を知った時、俺は背中が凍った。
「チャン、何しているの?眠れないの?」
珍しく、何もしていないのにアンジェリーナが布団から出てきた。
「アンジェリーナ、起こしてごめん。ちょっと考え事はあってな。」
「別に私寝てないわ。私はちょっと新たな理論を思いついて、それを実験したくてワクワクして眠れなかっただけ。ポーションの作り方の新しい理論のアイディアを思いついたのよ。」
寝てなかったのか、そして相変わらずの実験好きだな。
「それで、どんな悩みなの?」
「あー、ちょっとな。俺も変なことを想像していただけだ。」
アンジェリーナは自分の胸を押さえながら言う。
「もしかしてちょっとあっち系のいやらしいこと?私はいつでもいいわよ?」
「違うわい。」
確かに今日のアンジェリーナの寝巻きはいつもの格好と違って、レースをふんだんに使った白色のネグリジェで、魅力大だ。
「残念。それで、本当はどんな悩みなの?」
さっきのはアンジェリーナなりの気遣いの冗談だったようだ。
「昨日の飛行機で悪夢を見たんだ。乗っている飛行機が墜落する夢。
起きて何もなかったし、悪夢を見るなんて人間よくあることだからそんなに気にしなかったんだけど、実は今日スキルステータスを開くとスキルメッセージに気になることが書いていたんだ。
約20時間後に、俺たちが今いるこの浮島と南太平洋浮島が戦争するって。
戦争開始時間と俺たちの乗る飛行機がちょうど重なっているのが気になって。
アンジェリーナは馬鹿らしいと思うかもしれないけど、もしかしたら悪夢と同じことが起きるのかもと思うとな。」
俺のもう一つの死ぬ条件についてはアンジェリーナには言わなかった。
「なるほどね。チャンのスキルは特別だから確かにそれは気になるわね。」
アンジェリーナは手を顎に当てて何かを考え始める。
「悪夢と同じことが起こるとは正直私も考えてはいないけれど。でも本当に戦争が起きるなら明日の飛行機には乗らないほうがいいわね。
私の理論ではスキルというのはこの変異したこの世界にとても深く関わっているの。そのスキルが何か警告するなら、何か大きな変化でもない限りその警告内容は必然的に起きることだと思っていいと思うわ。
何が原因なんて、スキルを持つのが人間である限り無数にあるし、解き明かすことも、解決する手立てもないわ。人間は現象と違って理論も理屈もないもの。
本当はその戦争が起きないような対策を考えるべきだけど、私たちには無理だわ。」
アンジェリーナが大きなため息を吐く。
「チャン、戦争が起きる可能性が高い以上、チャンの悪夢のような事態にはなる可能性が絶対にないわけではないわ。だから明日の飛行機乗るのをやめときましょう。
もし乗り遅れても私はみんなを連れて転移ができる。
だから帰りの飛行機なんて気分の問題でその気になればなくてもいいのよ。
厳密には私のスキルが漏れてしまう可能性もあるかもしれないけど、安心が買えるなら安いものだわ。
作戦だけど、チャンのことをみんなに知られるわけにはいかないから、足を引っ張って後片付けが間に合わないようにする。
飛行機の時間まで余裕があるから、それでももしかしたら間に合う可能性があるけれど、予定を早めるのと違って予定を遅らせるのははいくらでも方法はあるわ。
チャン、私に任せて!!。」
アンジェリーナはとても良い笑顔で俺に行った。
ーーーーーー
起きると午前10時だった。
俺以外の全員が既に起きているようで、端っこに布団が畳まれて重ねられている。
大部屋の寝室を出ると、ゆりちゃんがおそらくアンジェリーナが転移でギルドホームから持ってきただろ具材を運んでいるところだ。
「あ、お兄さん。おはようございます。今日の一番のお寝坊さんはお兄さんでしたね。」
少し大きめの段ボールを抱えながら言うゆりちゃん。
「おはようゆりちゃん、その段ボール持とうか?」
「いえ、大丈夫ですよ。私普段から剣道で鍛えているのでこれくらいは軽いものです。」
ゆりちゃんが力持ちなのはよく知っている。いつも持っている日本刀。あの日本刀は案外重たいのだ。それを軽々振ることができる時点できっとかなりの筋肉量が腕についているだろう。
俺はどちらかと言うと、段ボールの中身をぶちまけるのが不安なのだが、ぽあぽあゆりちゃんにはそれが伝わらないらしい。
急にログハウスに転移してきたアンジェリーナ。その手には段ボールが抱えられている。
「ああ、チャン。起きたのね。その寝巻きと寝癖。さっさと直してきなさい。」
アンジェリーナがゆりちゃんが段ボールを抱えてる姿と俺がその段ボールを持とうとする姿を見てアンジェリーナは状況を理解したらしく。
「チャン、ゆりちゃんなら大丈夫よ。あの段ボールの中身は野菜だから。もしも落としてもたいして影響はないわ。」
「そうか、なら安心だな。」
俺は安心してゆりちゃんに任せることにした。
「それ、どう言う意味ですか?お兄さんは優しさで荷物を運ぶのを手伝ってくれようとしたのではないんですかぁー!。」
急に吠えるゆりちゃん。
「違うに決まってるじゃない。だから段ボールを二つに分けて、落としたらダメなものと落としてもそんなに影響のないやつに分けてるのよ。」
アンジェリーナ暴露
「そんなぁ、ひどいですよ、アンジェリーナさん...わぁぁ!」
言っている側から何もないところで滑って転ぶゆりちゃん。
俺とアンジェリーナは慌てて段ボールの中に入っていた、バーベキュー用に切ってビニール袋に入れられた野菜を段ボールの中に入れる。
「ほら、こけたでしょ?ゆりちゃんは肝心な時はしっかりしているけど、何もない時はこうやってやらかすことが多いのよ。」
「うっ...たまたまです!!」
何か言いたいのに、実際にこけてしまったので何も言えなくて口を膨らますゆりちゃん。
「はいはい。チャン、ここはいいから早く着替えてきて。中に水着を着るの忘れずにね。」
アンジェリーナ、こういう時は完全にお姉さんという感じだ。
俺はアンジェリーナに言われるままに、もう一度大部屋の寝室に戻った。
布団を重なっているみんなの布団と同じようにして重ねる。
そして昨日はお披露目することなく、役目を終えたトランクス型の水着を着る。
お披露目って、男が言うのもおかしいな。
俺は一人でボケて一人で突っ込んだ。
上半身裸でバーベキューもちょっとおかしいのでTシャツも羽織る。
そしてある程度荷物を整理する。
そう言えば、予定を遅らせるためにいろいろするんだっけ。
しまった。整理は余計だったな。
ちらりとアンジェリーナの荷物を見ると、昨日寝るときに着ていたネグリジェがそのまま無造作に置かれていて、全然荷物の整理をしていない。
なんと言うか、さすがアンジェリーナだな。細部まで抜かりはない。
だけど、今からせっかく片付けた荷物を引っ張り出すのも変だな。
俺は整理した荷物はもうそのままにしておく事にした。
大部屋を出ると今度は真斗が荷物を運んでいた。
「おお、やっと起きてきたか。その様子なら、すぐに動けそうだな。」
真斗が生き生きしている。きっとサッカー部で何度かバーベキューをしたことがるのだろう。
「今から火を起こすから、ちょっと手伝ってくれよ。一人でするのはちょっとさすがに手間だからさ。後、その荷物も持って。」
俺は真斗に言われるままに、炭が入った段ボールを持った。
「いや、バーベキューなんて一年ぶりだな。去年は中学校の時メンバーでバーベキューだったっけ?」
真斗は去年のバーベキューの話をする。
「俺、そのバーベキュ行ってないんだが。」
去年は俺は高校に行けずに完全引きこもりだったので、そんな青春なイベントには行っていない。
「そうだっけ?森とか神山も一緒にいたから、すっかり松ちゃんも一緒に行った気になってた。もしかして気に障った?」
「いや、全然。誘われたのは覚えているし、別になんとも。」
さすがに誘われずにこんなのもあったんだよ。みたいなことを言われたらイラっとするが、あの時は変に鬱になっていた時期だ。むしろ行かなくてよかった。
「じゃ、今年は去年の分も楽しもう!早く火を起こそうぜ。」
外にでて、少し歩くとドラム缶を半分に切って作られたバーベキューセットが2つ置かれていた。
ドラム缶の中には炭を置くための金網。ドラム缶の側面は空気が入りやすいように大きな穴が開いている。
「真斗、これくらい松ぼっくりがあればいいか?」
森が、レジ袋一杯の松ぼっくりを持ってくる。きっと今年発芽せずにそのまま残っていた松ぼっくり。
ログハウスの近くに小さな松の林があったので、きっとそこから取ってきたのだろう。
「それくらいあれば大丈夫だ。なら最初に松ぼっくりをバーベキュー台に入れて、その上に炭、なるべく風が通るように隙間を開けてな。それが終わったら松ぼっくりにガスバーナーで火をつけてくれ。今日は少し風があるから、簡単に火がつくと思う。」
俺は軍手を二重にして森が持ってきた松ぼっくりを半分入れる。そうしたら、森が炭を入れていく。
もう一つのバーベキュー台は真斗と一ノ瀬が準備をしている。
「真斗、先にガスバーナ使うぞ。」
森がそう言って、ガスバーナで松ぼっくりを燃やす。
少し火がつくのが遅かったが、一度燃えだすと松ぼっくりはよく燃える。
この調子なら炭にもすぐに火が移るだろう。
「ガスバーナを貸してくれ。お?いい感じに燃えてるな。」
真斗がガスバーナを取りに来たついでに俺たちのバーベキュー台の様子を見る。
どうやら合格のようだ。
「しばらくは団扇で風を送って、火を炭に行き渡らせたらいいから。」
俺は炭がしっかりと燃えるまで、団扇で必死に半分にされたドラム缶の中に風を送った。
海洋スライムの核 21個 金貨21枚
ギガンフレット 3匹 ヒレ6個。金貨3×6=18枚
合計39枚。
「あまりいい値段にはならないわね。」
アンジェリーナは明細書を確認して言った。
「そうですね、ダンジョンと違い死の危険があるにもかかわらず成果があまり良くないです。」
志帆が神山を見ながらいう。
「志帆、神山がどうかしたの?」
目線に気づいてアンジェリーナは志帆にたずねる。
「実はギガンフレットの毒針が神山さんのふくらはぎに刺さったんです。森さんが突撃したせいで。」
志帆は森をジト目で見る。
「わざとじゃない。悪かったと思うけど。ごめん...。」
珍しく素直に謝る。
「別にいいわよ。今回は結果的だけど、なんともなかったのだし。あなたみたいな突撃役が必要な時もあるわ。」
あれ?神山が森に優しい。
こんなことってあるか?
「神山、ちゃんと解毒したか?」
ああー、真斗それはやめたほうがいいぞ。
「どういう意味よ。」
「神山って森にそんなに優しかったっけ?」
「そ、そんなことないわよ。」
少し顔が赤い神山。
「あのね、静はツンデレなのよ。いまデレのところが出たの。」
鈴が真斗に耳元で言った。
「何よ、ツンデレって。私はそんなんじゃないわ。珍しく森が反省したからああ言ったのよ。悪い?」
神山、怒り方が完全にツンデレキャラになってるぞ
「静、青春しているわね。」
「アンジェリーナさんまで。」
海に日が落ちるのを見ながら俺たちは笑った。
ーーーー
警告
北太平洋浮島と南太平洋浮島で緊張が高まっています。
20時間後に浮島間戦争の可能性有り。
直ちに退避することを推奨。
夜、ログハウスの布団の中。
俺以外のメンバーはみんなぐっすりだ。
ログハウスには寝室がなく、男女混合で寝ることになったのだが、俺はスキルステータスに表示されたこのメッセージが気になって眠れずにいた。
浮遊都市はオートモードで世界中自由に動いているが、俺が浮島についてからは俺がいる北太平洋浮島の方へと、進行方向を変えている。
俺は昨日飛行機の中でみた悪夢を思い出していた。
20時間後と言えば、ちょうど俺たちが飛行機に乗る予定の飛行機が出発する時間だ。
明日の予定はバーベキューを浜辺でしながら海水浴。
そして片付けした後帰宅だ。
今まで浮遊都市のシステムが俺にメッセージを表示することなんてなかった。
探索者同士の争いが最近増えていると聞いた。
国同士の戦争こそ起きていないが、ダンジョン内で一つのクランがフロアを占拠したことが原因でクラン同士の小競り合いが起きたことはある。
インドのダンジョンと中国のダンジョンでの出来事だ。
どちらも超大手ギルドによって攻められて占拠状態は解除されたらしいが、それがきっかけでダンジョンによってはクラン同士の争いが活発だ。
世界中のダンジョンによってはフロア占拠したクランに何かの特典をつけて、クラン同士の戦いを推奨するとこさえあるのだ。
もしかしたら、そんな感じで浮島同時の戦争もあり得るのではないか。
浮島スキルの支配人同士が、何かの意見や方針に食い違いがあって対立関係にある。
浮島を一つ潰せば、それだけもう一つの浮島への各国の依存度は増す。そうすればより多くの人が来てスキルのレベルを上げることができる。より多くの富が独占できる。
そう言えば、もしも支配人が死んだらどうなるのだろうか。ダンジョンに寿命があるとすれば、どう考えてもダンジョンの方が長い。浮島でも浮遊都市でもそうだ。
俺はスキルステータスを開き、ヘルプを探す。
≪浮遊都市スキルを持つ者が復活の見込みなく完全に亡くなった場合、浮遊都市はリセットされ、世界で新たに生まれてくる子供にランダムに浮遊都市スキルが付与されます。これには例外があります。≫
ならもしも、浮遊都市が何者かに破壊されればどうなる?
俺はスキルを失うのか?
≪浮遊都市のコア完全に破壊された場合、浮遊都市スキルを持つ者は死にます。これには例外はありません。≫
浮遊都市が破壊されたら、俺は死ぬ。
浮遊都市はきっとそう簡単には破壊されることはない。
だけど、自分の命が他の何かで失われる可能性を知った時、俺は背中が凍った。
「チャン、何しているの?眠れないの?」
珍しく、何もしていないのにアンジェリーナが布団から出てきた。
「アンジェリーナ、起こしてごめん。ちょっと考え事はあってな。」
「別に私寝てないわ。私はちょっと新たな理論を思いついて、それを実験したくてワクワクして眠れなかっただけ。ポーションの作り方の新しい理論のアイディアを思いついたのよ。」
寝てなかったのか、そして相変わらずの実験好きだな。
「それで、どんな悩みなの?」
「あー、ちょっとな。俺も変なことを想像していただけだ。」
アンジェリーナは自分の胸を押さえながら言う。
「もしかしてちょっとあっち系のいやらしいこと?私はいつでもいいわよ?」
「違うわい。」
確かに今日のアンジェリーナの寝巻きはいつもの格好と違って、レースをふんだんに使った白色のネグリジェで、魅力大だ。
「残念。それで、本当はどんな悩みなの?」
さっきのはアンジェリーナなりの気遣いの冗談だったようだ。
「昨日の飛行機で悪夢を見たんだ。乗っている飛行機が墜落する夢。
起きて何もなかったし、悪夢を見るなんて人間よくあることだからそんなに気にしなかったんだけど、実は今日スキルステータスを開くとスキルメッセージに気になることが書いていたんだ。
約20時間後に、俺たちが今いるこの浮島と南太平洋浮島が戦争するって。
戦争開始時間と俺たちの乗る飛行機がちょうど重なっているのが気になって。
アンジェリーナは馬鹿らしいと思うかもしれないけど、もしかしたら悪夢と同じことが起きるのかもと思うとな。」
俺のもう一つの死ぬ条件についてはアンジェリーナには言わなかった。
「なるほどね。チャンのスキルは特別だから確かにそれは気になるわね。」
アンジェリーナは手を顎に当てて何かを考え始める。
「悪夢と同じことが起こるとは正直私も考えてはいないけれど。でも本当に戦争が起きるなら明日の飛行機には乗らないほうがいいわね。
私の理論ではスキルというのはこの変異したこの世界にとても深く関わっているの。そのスキルが何か警告するなら、何か大きな変化でもない限りその警告内容は必然的に起きることだと思っていいと思うわ。
何が原因なんて、スキルを持つのが人間である限り無数にあるし、解き明かすことも、解決する手立てもないわ。人間は現象と違って理論も理屈もないもの。
本当はその戦争が起きないような対策を考えるべきだけど、私たちには無理だわ。」
アンジェリーナが大きなため息を吐く。
「チャン、戦争が起きる可能性が高い以上、チャンの悪夢のような事態にはなる可能性が絶対にないわけではないわ。だから明日の飛行機乗るのをやめときましょう。
もし乗り遅れても私はみんなを連れて転移ができる。
だから帰りの飛行機なんて気分の問題でその気になればなくてもいいのよ。
厳密には私のスキルが漏れてしまう可能性もあるかもしれないけど、安心が買えるなら安いものだわ。
作戦だけど、チャンのことをみんなに知られるわけにはいかないから、足を引っ張って後片付けが間に合わないようにする。
飛行機の時間まで余裕があるから、それでももしかしたら間に合う可能性があるけれど、予定を早めるのと違って予定を遅らせるのははいくらでも方法はあるわ。
チャン、私に任せて!!。」
アンジェリーナはとても良い笑顔で俺に行った。
ーーーーーー
起きると午前10時だった。
俺以外の全員が既に起きているようで、端っこに布団が畳まれて重ねられている。
大部屋の寝室を出ると、ゆりちゃんがおそらくアンジェリーナが転移でギルドホームから持ってきただろ具材を運んでいるところだ。
「あ、お兄さん。おはようございます。今日の一番のお寝坊さんはお兄さんでしたね。」
少し大きめの段ボールを抱えながら言うゆりちゃん。
「おはようゆりちゃん、その段ボール持とうか?」
「いえ、大丈夫ですよ。私普段から剣道で鍛えているのでこれくらいは軽いものです。」
ゆりちゃんが力持ちなのはよく知っている。いつも持っている日本刀。あの日本刀は案外重たいのだ。それを軽々振ることができる時点できっとかなりの筋肉量が腕についているだろう。
俺はどちらかと言うと、段ボールの中身をぶちまけるのが不安なのだが、ぽあぽあゆりちゃんにはそれが伝わらないらしい。
急にログハウスに転移してきたアンジェリーナ。その手には段ボールが抱えられている。
「ああ、チャン。起きたのね。その寝巻きと寝癖。さっさと直してきなさい。」
アンジェリーナがゆりちゃんが段ボールを抱えてる姿と俺がその段ボールを持とうとする姿を見てアンジェリーナは状況を理解したらしく。
「チャン、ゆりちゃんなら大丈夫よ。あの段ボールの中身は野菜だから。もしも落としてもたいして影響はないわ。」
「そうか、なら安心だな。」
俺は安心してゆりちゃんに任せることにした。
「それ、どう言う意味ですか?お兄さんは優しさで荷物を運ぶのを手伝ってくれようとしたのではないんですかぁー!。」
急に吠えるゆりちゃん。
「違うに決まってるじゃない。だから段ボールを二つに分けて、落としたらダメなものと落としてもそんなに影響のないやつに分けてるのよ。」
アンジェリーナ暴露
「そんなぁ、ひどいですよ、アンジェリーナさん...わぁぁ!」
言っている側から何もないところで滑って転ぶゆりちゃん。
俺とアンジェリーナは慌てて段ボールの中に入っていた、バーベキュー用に切ってビニール袋に入れられた野菜を段ボールの中に入れる。
「ほら、こけたでしょ?ゆりちゃんは肝心な時はしっかりしているけど、何もない時はこうやってやらかすことが多いのよ。」
「うっ...たまたまです!!」
何か言いたいのに、実際にこけてしまったので何も言えなくて口を膨らますゆりちゃん。
「はいはい。チャン、ここはいいから早く着替えてきて。中に水着を着るの忘れずにね。」
アンジェリーナ、こういう時は完全にお姉さんという感じだ。
俺はアンジェリーナに言われるままに、もう一度大部屋の寝室に戻った。
布団を重なっているみんなの布団と同じようにして重ねる。
そして昨日はお披露目することなく、役目を終えたトランクス型の水着を着る。
お披露目って、男が言うのもおかしいな。
俺は一人でボケて一人で突っ込んだ。
上半身裸でバーベキューもちょっとおかしいのでTシャツも羽織る。
そしてある程度荷物を整理する。
そう言えば、予定を遅らせるためにいろいろするんだっけ。
しまった。整理は余計だったな。
ちらりとアンジェリーナの荷物を見ると、昨日寝るときに着ていたネグリジェがそのまま無造作に置かれていて、全然荷物の整理をしていない。
なんと言うか、さすがアンジェリーナだな。細部まで抜かりはない。
だけど、今からせっかく片付けた荷物を引っ張り出すのも変だな。
俺は整理した荷物はもうそのままにしておく事にした。
大部屋を出ると今度は真斗が荷物を運んでいた。
「おお、やっと起きてきたか。その様子なら、すぐに動けそうだな。」
真斗が生き生きしている。きっとサッカー部で何度かバーベキューをしたことがるのだろう。
「今から火を起こすから、ちょっと手伝ってくれよ。一人でするのはちょっとさすがに手間だからさ。後、その荷物も持って。」
俺は真斗に言われるままに、炭が入った段ボールを持った。
「いや、バーベキューなんて一年ぶりだな。去年は中学校の時メンバーでバーベキューだったっけ?」
真斗は去年のバーベキューの話をする。
「俺、そのバーベキュ行ってないんだが。」
去年は俺は高校に行けずに完全引きこもりだったので、そんな青春なイベントには行っていない。
「そうだっけ?森とか神山も一緒にいたから、すっかり松ちゃんも一緒に行った気になってた。もしかして気に障った?」
「いや、全然。誘われたのは覚えているし、別になんとも。」
さすがに誘われずにこんなのもあったんだよ。みたいなことを言われたらイラっとするが、あの時は変に鬱になっていた時期だ。むしろ行かなくてよかった。
「じゃ、今年は去年の分も楽しもう!早く火を起こそうぜ。」
外にでて、少し歩くとドラム缶を半分に切って作られたバーベキューセットが2つ置かれていた。
ドラム缶の中には炭を置くための金網。ドラム缶の側面は空気が入りやすいように大きな穴が開いている。
「真斗、これくらい松ぼっくりがあればいいか?」
森が、レジ袋一杯の松ぼっくりを持ってくる。きっと今年発芽せずにそのまま残っていた松ぼっくり。
ログハウスの近くに小さな松の林があったので、きっとそこから取ってきたのだろう。
「それくらいあれば大丈夫だ。なら最初に松ぼっくりをバーベキュー台に入れて、その上に炭、なるべく風が通るように隙間を開けてな。それが終わったら松ぼっくりにガスバーナーで火をつけてくれ。今日は少し風があるから、簡単に火がつくと思う。」
俺は軍手を二重にして森が持ってきた松ぼっくりを半分入れる。そうしたら、森が炭を入れていく。
もう一つのバーベキュー台は真斗と一ノ瀬が準備をしている。
「真斗、先にガスバーナ使うぞ。」
森がそう言って、ガスバーナで松ぼっくりを燃やす。
少し火がつくのが遅かったが、一度燃えだすと松ぼっくりはよく燃える。
この調子なら炭にもすぐに火が移るだろう。
「ガスバーナを貸してくれ。お?いい感じに燃えてるな。」
真斗がガスバーナを取りに来たついでに俺たちのバーベキュー台の様子を見る。
どうやら合格のようだ。
「しばらくは団扇で風を送って、火を炭に行き渡らせたらいいから。」
俺は炭がしっかりと燃えるまで、団扇で必死に半分にされたドラム缶の中に風を送った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
収奪の探索者(エクスプローラー)~魔物から奪ったスキルは優秀でした~
エルリア
ファンタジー
HOTランキング1位ありがとうございます!
2000年代初頭。
突如として出現したダンジョンと魔物によって人類は未曾有の危機へと陥った。
しかし、新たに獲得したスキルによって人類はその危機を乗り越え、なんならダンジョンや魔物を新たな素材、エネルギー資源として使うようになる。
人類とダンジョンが共存して数十年。
元ブラック企業勤務の主人公が一発逆転を賭け夢のタワマン生活を目指して挑んだ探索者研修。
なんとか手に入れたものの最初は外れスキルだと思われていた収奪スキルが実はものすごく優秀だと気付いたその瞬間から、彼の華々しくも生々しい日常が始まった。
これは魔物のスキルを駆使して夢と欲望を満たしつつ、そのついでに前人未到のダンジョンを攻略するある男の物語である。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる