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オーガさん人間領へ行く
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「魔王近衛兵隊長!古代種オーガ、グランツ。前へ!」
「はい!」
魔王が座る玉座の前へ現れたのは三メートル近くはあるオーガだ。しかし、その風貌は間違っても一般的なオーガと一括りには出来ない程の体格であり、それはまさに筋肉の巌とも呼ぶべき者だ。
この世界唯一の古代種オーガであるグランツは、古代龍と古代種凶鬼のハーフである。
龍のように彫りの深いその顔は、見るもの全てを魅了する魔力があった。
凶鬼(オーガ)の骨格に龍の筋肉と鱗を馴染ませたような体格はまさに最強を体現したかのようである。
白銀とコバルトブルーを基調とした全身鎧の隙間から覗く赤褐色の体表が憎いほど映える。
「グランツ、貴様をこれから人間領へと出向させる。理由は勿論人間領の後退。及び開拓である」
「はい」
「鎧とその剣。そして大盾は持って行くがよい。生活に関する物資は自己負担か現地調達になるがよいか?」
「…はい」
「ん?言い渋ったな。何か必要な物があるならば申してみよ」
「期間のほどをお教え下さい」
「約10年の任になるだろう。帰還の一年前には伝達をする」
「かしこまりました」
「よし、では行ってまいれ!」
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーーーー
[人間領国境警備及び最前線戦砦]
「ん?なんだあれ?……岩か?」
「魔族だよ」
「…えっ?」
振り返ると同時に首を切断された人間は血飛沫を上げるより速く鎧ごと細切れになった。
「さすがにこの体格じゃ隠密できないな」
刀身が反射しないように泥を塗りたくった剣を鞘に納め、砦の中へと降りて行く。
因みに上からマントをかぶり鎧も隠しているが、背中に大盾を背負っているため陰が大きくなってしまっている。
「…5人か」
ドアの向こうから笑い声が聞こえる。アルコールの匂いと固い何かがテーブルを叩く音を聞く限り、恐らく酒を飲みながらポーカーでもしているのだろう
「最後の晩餐が常温の酸っぱいエールと九割脂のベーコンとはな」
「??!!だ、誰d」
ピシャ…
人間の首の高さに合わせて壁に血の線が描かれ、5人の首は時計周りに一人分ズレて再度体の上に乗った。
切り口は寸分の零れもないため、切り口を通り過ぎ口元から血を垂れ流す人間達。口元の血を拭えば今にもポーカーを再開しそうな程原型を留めている。
「…持ち物が増えても邪魔だし食い溜めしておくか」
エール樽を三樽、保存食を五箱。計150キロを平らげ、オーガは朝日を出迎えた。
食い溜めが出来るオーガの体は最長で3ヶ月何も食べなくても活動が出来る。しかしそれでも3ヶ月。それ程オーガの体は燃費が悪い。
それもそのはず、三メートルを越す体格と巌のような筋肉、これを維持するだけでも膨大なエネルギーが必要なのは明白、更にそれらを動かすとなると加えて膨大なエネルギーを必要とするのは当然の摂理だろう。
「…腹三分目に節制して一食5キロとかだったもんなぁ。150キロで人間領の町まで保つかな」
グランツは腹をさすりながら砦を後にして次の街に向かう。
砦に置かれていた地図をみると、ここから半日ほどの所に二カ所、中継地点があるのが分かった。
両方とも剣が×印に重なったマークが描かれていたため、開拓の中継地点ではなく、軍事的な活用をする中継地点であるのが推測できる。
「…多分馬は乗れないだろうから……象でも居てくれるといいんだが」
体重が一トンを軽く越すグランツを背中に乗せられる動物は自ずと限られてくる。近衛兵隊長なだけあって「俺に乗ってくれ」と志願してくるグレイプニルもいたが、グランツが「魔物に乗るのは同族として心苦しい」と断った為、先の人間との戦争ではグランツのみ走って機動作戦に出向いたのである。
「愚痴を言ってもしょうがない。歩くか」
その戦争を期にグランツは魔王から体重軽減のエンチャントが付いた全身鎧を賜ったのだが、親から受け継いだ古代龍の鱗が全身鎧のエンチャントの魔法を跳ね返してしまい、今は鎧の重さが倍に、体重はそのままという結果になってしまっている。
因みにに右手のガントレットだけで20キロ近くあり、全身合わせると200キロ近い重量だ。
グランツにとっては大した問題では無いのだが、訓練相手の兵にとっては大問題である。
なんせ素手でさえ一トンを越す体重が乗った打撃になるのに、それに加えて二百キロの鎧のプレゼント付きだ。
近衛兵が数人でラウンドシールドを重ねて受けても吹き飛ぶその威力はただの暴力だった。
と、歩いていくと広めの河が見えてきた。人間の気配はないが、野生動物に混じり魔物も河で水を飲んでいるのが見えた。
一応補足説明をすると、意志のある言葉を喋れるのを魔族、本能の赴くままに叫ぶのを魔物。と分けている。人間の形をしていて羽や角、尾が無い者を魔人と呼ぶ。
ヒエラルキーは魔王>魔族>魔人>魔物といった感じだ。
しかし、魔王が最上位に位置する為例えばスライムの魔王が居れば元魔物だろうと敬い、遣えるのがルールである
もっとも、その頃には言葉を発っせれるようになっているの為、魔族に分類されている。
閑話休題。話を戻すと、今グランツは河の畔に座り体を休めている。
朝日が昇り気温があがってきている為鎧のまま河で水浴びをして鎧の温度を下げる。
もっとも、魔王から賜った鎧。鎧自体に鎧内温度を最適に保つエンチャントや清潔に保つエンチャントも付いているが精神的な不快感までは拭い去れない。
必要のない行為だというのは分かっていても、これもまた精神衛生上欠かせない行為である。
「さーて、剣の泥も洗ってマントも汚れを落とした!……歩くかぁ…」
何気に今グランツの最も望むものは労せず風を切る快感であった。
、
「はい!」
魔王が座る玉座の前へ現れたのは三メートル近くはあるオーガだ。しかし、その風貌は間違っても一般的なオーガと一括りには出来ない程の体格であり、それはまさに筋肉の巌とも呼ぶべき者だ。
この世界唯一の古代種オーガであるグランツは、古代龍と古代種凶鬼のハーフである。
龍のように彫りの深いその顔は、見るもの全てを魅了する魔力があった。
凶鬼(オーガ)の骨格に龍の筋肉と鱗を馴染ませたような体格はまさに最強を体現したかのようである。
白銀とコバルトブルーを基調とした全身鎧の隙間から覗く赤褐色の体表が憎いほど映える。
「グランツ、貴様をこれから人間領へと出向させる。理由は勿論人間領の後退。及び開拓である」
「はい」
「鎧とその剣。そして大盾は持って行くがよい。生活に関する物資は自己負担か現地調達になるがよいか?」
「…はい」
「ん?言い渋ったな。何か必要な物があるならば申してみよ」
「期間のほどをお教え下さい」
「約10年の任になるだろう。帰還の一年前には伝達をする」
「かしこまりました」
「よし、では行ってまいれ!」
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[人間領国境警備及び最前線戦砦]
「ん?なんだあれ?……岩か?」
「魔族だよ」
「…えっ?」
振り返ると同時に首を切断された人間は血飛沫を上げるより速く鎧ごと細切れになった。
「さすがにこの体格じゃ隠密できないな」
刀身が反射しないように泥を塗りたくった剣を鞘に納め、砦の中へと降りて行く。
因みに上からマントをかぶり鎧も隠しているが、背中に大盾を背負っているため陰が大きくなってしまっている。
「…5人か」
ドアの向こうから笑い声が聞こえる。アルコールの匂いと固い何かがテーブルを叩く音を聞く限り、恐らく酒を飲みながらポーカーでもしているのだろう
「最後の晩餐が常温の酸っぱいエールと九割脂のベーコンとはな」
「??!!だ、誰d」
ピシャ…
人間の首の高さに合わせて壁に血の線が描かれ、5人の首は時計周りに一人分ズレて再度体の上に乗った。
切り口は寸分の零れもないため、切り口を通り過ぎ口元から血を垂れ流す人間達。口元の血を拭えば今にもポーカーを再開しそうな程原型を留めている。
「…持ち物が増えても邪魔だし食い溜めしておくか」
エール樽を三樽、保存食を五箱。計150キロを平らげ、オーガは朝日を出迎えた。
食い溜めが出来るオーガの体は最長で3ヶ月何も食べなくても活動が出来る。しかしそれでも3ヶ月。それ程オーガの体は燃費が悪い。
それもそのはず、三メートルを越す体格と巌のような筋肉、これを維持するだけでも膨大なエネルギーが必要なのは明白、更にそれらを動かすとなると加えて膨大なエネルギーを必要とするのは当然の摂理だろう。
「…腹三分目に節制して一食5キロとかだったもんなぁ。150キロで人間領の町まで保つかな」
グランツは腹をさすりながら砦を後にして次の街に向かう。
砦に置かれていた地図をみると、ここから半日ほどの所に二カ所、中継地点があるのが分かった。
両方とも剣が×印に重なったマークが描かれていたため、開拓の中継地点ではなく、軍事的な活用をする中継地点であるのが推測できる。
「…多分馬は乗れないだろうから……象でも居てくれるといいんだが」
体重が一トンを軽く越すグランツを背中に乗せられる動物は自ずと限られてくる。近衛兵隊長なだけあって「俺に乗ってくれ」と志願してくるグレイプニルもいたが、グランツが「魔物に乗るのは同族として心苦しい」と断った為、先の人間との戦争ではグランツのみ走って機動作戦に出向いたのである。
「愚痴を言ってもしょうがない。歩くか」
その戦争を期にグランツは魔王から体重軽減のエンチャントが付いた全身鎧を賜ったのだが、親から受け継いだ古代龍の鱗が全身鎧のエンチャントの魔法を跳ね返してしまい、今は鎧の重さが倍に、体重はそのままという結果になってしまっている。
因みにに右手のガントレットだけで20キロ近くあり、全身合わせると200キロ近い重量だ。
グランツにとっては大した問題では無いのだが、訓練相手の兵にとっては大問題である。
なんせ素手でさえ一トンを越す体重が乗った打撃になるのに、それに加えて二百キロの鎧のプレゼント付きだ。
近衛兵が数人でラウンドシールドを重ねて受けても吹き飛ぶその威力はただの暴力だった。
と、歩いていくと広めの河が見えてきた。人間の気配はないが、野生動物に混じり魔物も河で水を飲んでいるのが見えた。
一応補足説明をすると、意志のある言葉を喋れるのを魔族、本能の赴くままに叫ぶのを魔物。と分けている。人間の形をしていて羽や角、尾が無い者を魔人と呼ぶ。
ヒエラルキーは魔王>魔族>魔人>魔物といった感じだ。
しかし、魔王が最上位に位置する為例えばスライムの魔王が居れば元魔物だろうと敬い、遣えるのがルールである
もっとも、その頃には言葉を発っせれるようになっているの為、魔族に分類されている。
閑話休題。話を戻すと、今グランツは河の畔に座り体を休めている。
朝日が昇り気温があがってきている為鎧のまま河で水浴びをして鎧の温度を下げる。
もっとも、魔王から賜った鎧。鎧自体に鎧内温度を最適に保つエンチャントや清潔に保つエンチャントも付いているが精神的な不快感までは拭い去れない。
必要のない行為だというのは分かっていても、これもまた精神衛生上欠かせない行為である。
「さーて、剣の泥も洗ってマントも汚れを落とした!……歩くかぁ…」
何気に今グランツの最も望むものは労せず風を切る快感であった。
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