12 / 29
オーガさん弓を撃ち返す。
しおりを挟む
「やばいな…こりゃあ早く町に知らせないと町が壊滅しちまうかもしれん」
ある男が森の中から呟いた。その男は森で猟をしていた猟師である。目が良いことが自慢の彼はその視力を買われ、時々冒険者ギルドで偵察や高品質素材の依頼を受けている。今回もその一環でこの遠方まで足を伸ばしたのだが……
「こりゃあ大変だ」
彼は踵を返し、来た道を全速力で駆け抜ける。近くの町までどう見積もっても4~5時間はかかりそうな距離であったが、彼は
「自分がここで走り抜けなければ沢山の人が血の海に沈む」
と直感していた。
猟師としての経験からか、彼は自分の直感に対して全幅の信頼を置いている。
「しかし、こんなに冷や汗が出たのはいつ振りだ…?」
彼は自分の額に流れる冷たい汗に対して愕然としていた。走っているのにも関わらず汗がまだ冷たいからだ。それなのに自分のチロリアンハットはもう汗塗れで縁の色が濃くなっている…
「~っ!??!!」
その時彼の背筋に緊張が走った。「ヤバい!!」
彼の脳裏に危険信号が走った瞬間、彼は180度身体をひねりながら矢をつがえ弦を引き絞った。
「よう」
「~~~っっっつ!???」
振り向いた方向の前には、白銀の魔物が佇んでいた。男は矢から手を離し射出……
出来なかった。
何故なら、グランツは猟師の放った矢が弦から離れる前に摘まんでいたからだ。
「返すぞ」
グランツは猟師の手首ごと弓を反転させ摘まんでいた矢を離した。
「ぬぅあっっ!!!」
猟師は渾身の力で下にしゃがもうとしたが、人間は下に加速する事は出来ない。目を見開いた瞬間、猟師の眉間には深々と矢が突き刺さりエビぞりになって地面に吹き飛んだ。
「あちゃー、鏃の返しが頭蓋骨に噛んで抜けない……」
グランツが矢を引き抜こうとすると死体のオマケが付いて来た。
「……しょうがない。この矢は諦めるか」
グランツは頭から飛び出た分をへし折りそこらへ放り投げる。
「えーっと、弓は張力弱いし矢は脆い。山刀はなぜか錆だらけだし服は鞣しが弱いのか柔々……うん。ゴミだな」
猟師の名誉にかけて説明しておくが、彼の持っていた弓は動物の弓から作られている物で張力も35キロ程はある上、矢もその張力で裂けないような高品質の物であった。
山刀の錆にも、ワザと錆させることで鋸のような刃になり動物の皮や猟に使う縄を切りやすくするという歴とした理由があったのだ。
「っと。こいつのプレートは猟師って打刻されてるな……って、これには棒線が刻まれてないのか」
理由は前話の通りである。
「……おっ、前盒に財布と…やった薬瓶がある!」
財布の中は国の銅色の硬貨が数枚入っていたのみだったが、薬瓶は五種類もありグランツは大いに喜んだ。
その内二つは大きな口の瓶に入った蜂蜜を主な原材料にした塗り薬と毒々しい色の塗布毒。
残りの三つの内一つは薬草、香草、木の根を混ぜて溶かした一種の鎮痛剤。
そして残った二つは消毒薬の類だった。
「よしよし、後で俺の毒と調合しておくか」
グランツは猟師の後盒に入った食糧を全て口の中に放り込み遺体を後にした。
ある男が森の中から呟いた。その男は森で猟をしていた猟師である。目が良いことが自慢の彼はその視力を買われ、時々冒険者ギルドで偵察や高品質素材の依頼を受けている。今回もその一環でこの遠方まで足を伸ばしたのだが……
「こりゃあ大変だ」
彼は踵を返し、来た道を全速力で駆け抜ける。近くの町までどう見積もっても4~5時間はかかりそうな距離であったが、彼は
「自分がここで走り抜けなければ沢山の人が血の海に沈む」
と直感していた。
猟師としての経験からか、彼は自分の直感に対して全幅の信頼を置いている。
「しかし、こんなに冷や汗が出たのはいつ振りだ…?」
彼は自分の額に流れる冷たい汗に対して愕然としていた。走っているのにも関わらず汗がまだ冷たいからだ。それなのに自分のチロリアンハットはもう汗塗れで縁の色が濃くなっている…
「~っ!??!!」
その時彼の背筋に緊張が走った。「ヤバい!!」
彼の脳裏に危険信号が走った瞬間、彼は180度身体をひねりながら矢をつがえ弦を引き絞った。
「よう」
「~~~っっっつ!???」
振り向いた方向の前には、白銀の魔物が佇んでいた。男は矢から手を離し射出……
出来なかった。
何故なら、グランツは猟師の放った矢が弦から離れる前に摘まんでいたからだ。
「返すぞ」
グランツは猟師の手首ごと弓を反転させ摘まんでいた矢を離した。
「ぬぅあっっ!!!」
猟師は渾身の力で下にしゃがもうとしたが、人間は下に加速する事は出来ない。目を見開いた瞬間、猟師の眉間には深々と矢が突き刺さりエビぞりになって地面に吹き飛んだ。
「あちゃー、鏃の返しが頭蓋骨に噛んで抜けない……」
グランツが矢を引き抜こうとすると死体のオマケが付いて来た。
「……しょうがない。この矢は諦めるか」
グランツは頭から飛び出た分をへし折りそこらへ放り投げる。
「えーっと、弓は張力弱いし矢は脆い。山刀はなぜか錆だらけだし服は鞣しが弱いのか柔々……うん。ゴミだな」
猟師の名誉にかけて説明しておくが、彼の持っていた弓は動物の弓から作られている物で張力も35キロ程はある上、矢もその張力で裂けないような高品質の物であった。
山刀の錆にも、ワザと錆させることで鋸のような刃になり動物の皮や猟に使う縄を切りやすくするという歴とした理由があったのだ。
「っと。こいつのプレートは猟師って打刻されてるな……って、これには棒線が刻まれてないのか」
理由は前話の通りである。
「……おっ、前盒に財布と…やった薬瓶がある!」
財布の中は国の銅色の硬貨が数枚入っていたのみだったが、薬瓶は五種類もありグランツは大いに喜んだ。
その内二つは大きな口の瓶に入った蜂蜜を主な原材料にした塗り薬と毒々しい色の塗布毒。
残りの三つの内一つは薬草、香草、木の根を混ぜて溶かした一種の鎮痛剤。
そして残った二つは消毒薬の類だった。
「よしよし、後で俺の毒と調合しておくか」
グランツは猟師の後盒に入った食糧を全て口の中に放り込み遺体を後にした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる