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4話
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社長が去った翌日から、メサイアは早速NiiTubeでの配信を開始した。
コンセプトは『メサイアの休憩時間』。ラフな部屋着姿でゲームや雑談を交わすアイドルとしては異例のカジュアルな企画だった。
配信の様子としては、普段クールなイメージの零がゲームで天然ボケを発揮し統が容赦なくツッコミを入れる姿がとても好評だった。櫂の巧みな話術と律の愛嬌が更に『メサイアの休憩時間』を盛り上げ、遼は会話に混じりつつもコメント欄の動向や配信のテンポを常に把握し、時折統や日向のトークが長くなりすぎると「そろそろ次の話題へ行こう。」と冷静に軌道修正していた。
その行動の理由は統の体調を気遣い疲労を溜めさせないための遼なりのサポートでもあった。だがそんな話を統は知る術も無く。
そうしてMiiTubeで盛り上がりを見せていたある日の配信。櫂が画面に向かって手を振る。
「さて、皆さん。今日はなんとスペシャルゲストが来てくれています!」
画面に現れたのは、統と同じ事務所のトップアイドル、藤堂 雅人だった。
彼はメサイアとは違い、正統派王子様路線を極めるαであり、その人気は国内外に及ぶ。
「こんばんは、皆さん。藤堂雅人です。メサイアの皆さんと一緒に配信できて光栄だよ」
藤堂はそう言いながら穏やかに微笑み、優雅なオーラを画面いっぱいに広げた。
思わぬ人物の登場にリスナー達の反応もいつもより一層と盛り上がっていた。
統は、配信を仕切る櫂の隣でマイクを握りながら冷静にトークを回す。
「まさか藤堂さんとご一緒できるとは。ファンの方も喜んでいるでしょうね」
統は雅人を前にしても臆することなくプロとしてのトークを維持する。
雅人は穏やかに、しかし芯のある声で語りかける。
「統くん、こちらこそメサイアの皆さんとこんな貴重な機会を頂けてとても嬉しいです。ここだけの話だけど、僕はメサイアさんの隠れファンなんだ。」
そう顔を赤くして話す雅人。
きっとお世辞だろうが、大先輩から「ファン」と言われる事は最大の褒め言葉だろうと感じ統の胸は嬉しさでいっぱいになった。
「特に僕は統くんの歌が好きで…。統くんの飾るステージがいつも完璧で君たちのライブを見る度に感心するんだよ。統くんがΩでセンターでいられるのは櫂くんや遼くんたちの支えがあるからなんだなって。」
ここまで俺達のグループが褒められると思わず照れる。
しんみりとした空気になった中でも雅人は構わず続け
た。
「でもあまり自分を酷使し過ぎるのは良くない。最高のパフォーマンスというのは心からリラックスできている時にこそ放たれる。自分を大切にしてこれからもメサイアの皆さんには頑張って欲しいです。」
またふんわりと王子様フェイスで微笑む。
リスナーも藤堂の言葉に感動して、『素敵過ぎる…』『一生ついて行きます!!』『神回』と各々様々な反応で盛り上がった。
一方統は藤堂の言葉で、Ωとしての苦悩を理解されたと感じた。人生の先輩としての気遣いが心に響き、温かい気持ちになった。
統はチラッと藤堂の方を見る。表情は静かで落ち着きがあり他者を威圧しない。圧倒的な穏やかさで皆を虜にしていた。
(こんな完璧なαが存在するんだな…)
人間として出来すぎている藤堂を目の前にして内心で遼と比べてしまう。
遼のαフェロモンは確かに倦怠感を吹き飛ばし統を機能させるが、それは統にとって効き目と引き換えに常に主導権を握られる独占欲という鎖として感じられていた。
一方藤堂は、フェロモンで権威を主張せず言葉だけで周囲に穏やかな安心感を与えている。
藤堂にも強大なα性を持つにもかかわらず、その力を優しさと配慮のために使う真の救世主のような人格を見てしまって統の心の中に一瞬だけ遼への「戸惑い」が生じた。
(遼のフェロモンは俺の身体を強制的に元気にしてくれる作用がある。でも藤堂さんの雰囲気は、俺の心を安らげる居場所のように感じる。)
その時画面の端で静かにゲームコントローラーを握っていた遼が統に顔を向けた。
遼は配信中、雅人のトークを邪魔することはなかったが統が雅人に心を開いていく様子を冷たい視線で追っていた。
藤堂が統に質問を振った際、統が少し言葉に詰まると遼は画面の外から統の脇腹をそっと小突き、すぐにマイクを引き取る。
「統、そろそろ休憩モードの雑談に戻すぞ。ゲストを巻き込みすぎだ」
遼はそう言うと、統の手元にあるマイクを奪い取った。
画面越しには統の集中力を維持するためのサポートに見えるだろう。統もプロとして遼に感謝の目線を送る。
それを見た遼はマイクを握りながら統に向けて穏やかな顔で微量のαフェロモンを意図的に放った。
それは、統の疲労感を和らげ「俺がお前の傍にずっといる」という無言の独占欲を統にとって心地よい安息として刻み込むためだ。
統はフェロモンによる快感と安心を覚える一方で、遼の突然のフェロモンに背後に支配的な感情が潜んでいるのではないかと感じ取った。遼のこの行動は、統の心に微かな動揺と疑問を生み出す結果となってしまった。
コンセプトは『メサイアの休憩時間』。ラフな部屋着姿でゲームや雑談を交わすアイドルとしては異例のカジュアルな企画だった。
配信の様子としては、普段クールなイメージの零がゲームで天然ボケを発揮し統が容赦なくツッコミを入れる姿がとても好評だった。櫂の巧みな話術と律の愛嬌が更に『メサイアの休憩時間』を盛り上げ、遼は会話に混じりつつもコメント欄の動向や配信のテンポを常に把握し、時折統や日向のトークが長くなりすぎると「そろそろ次の話題へ行こう。」と冷静に軌道修正していた。
その行動の理由は統の体調を気遣い疲労を溜めさせないための遼なりのサポートでもあった。だがそんな話を統は知る術も無く。
そうしてMiiTubeで盛り上がりを見せていたある日の配信。櫂が画面に向かって手を振る。
「さて、皆さん。今日はなんとスペシャルゲストが来てくれています!」
画面に現れたのは、統と同じ事務所のトップアイドル、藤堂 雅人だった。
彼はメサイアとは違い、正統派王子様路線を極めるαであり、その人気は国内外に及ぶ。
「こんばんは、皆さん。藤堂雅人です。メサイアの皆さんと一緒に配信できて光栄だよ」
藤堂はそう言いながら穏やかに微笑み、優雅なオーラを画面いっぱいに広げた。
思わぬ人物の登場にリスナー達の反応もいつもより一層と盛り上がっていた。
統は、配信を仕切る櫂の隣でマイクを握りながら冷静にトークを回す。
「まさか藤堂さんとご一緒できるとは。ファンの方も喜んでいるでしょうね」
統は雅人を前にしても臆することなくプロとしてのトークを維持する。
雅人は穏やかに、しかし芯のある声で語りかける。
「統くん、こちらこそメサイアの皆さんとこんな貴重な機会を頂けてとても嬉しいです。ここだけの話だけど、僕はメサイアさんの隠れファンなんだ。」
そう顔を赤くして話す雅人。
きっとお世辞だろうが、大先輩から「ファン」と言われる事は最大の褒め言葉だろうと感じ統の胸は嬉しさでいっぱいになった。
「特に僕は統くんの歌が好きで…。統くんの飾るステージがいつも完璧で君たちのライブを見る度に感心するんだよ。統くんがΩでセンターでいられるのは櫂くんや遼くんたちの支えがあるからなんだなって。」
ここまで俺達のグループが褒められると思わず照れる。
しんみりとした空気になった中でも雅人は構わず続け
た。
「でもあまり自分を酷使し過ぎるのは良くない。最高のパフォーマンスというのは心からリラックスできている時にこそ放たれる。自分を大切にしてこれからもメサイアの皆さんには頑張って欲しいです。」
またふんわりと王子様フェイスで微笑む。
リスナーも藤堂の言葉に感動して、『素敵過ぎる…』『一生ついて行きます!!』『神回』と各々様々な反応で盛り上がった。
一方統は藤堂の言葉で、Ωとしての苦悩を理解されたと感じた。人生の先輩としての気遣いが心に響き、温かい気持ちになった。
統はチラッと藤堂の方を見る。表情は静かで落ち着きがあり他者を威圧しない。圧倒的な穏やかさで皆を虜にしていた。
(こんな完璧なαが存在するんだな…)
人間として出来すぎている藤堂を目の前にして内心で遼と比べてしまう。
遼のαフェロモンは確かに倦怠感を吹き飛ばし統を機能させるが、それは統にとって効き目と引き換えに常に主導権を握られる独占欲という鎖として感じられていた。
一方藤堂は、フェロモンで権威を主張せず言葉だけで周囲に穏やかな安心感を与えている。
藤堂にも強大なα性を持つにもかかわらず、その力を優しさと配慮のために使う真の救世主のような人格を見てしまって統の心の中に一瞬だけ遼への「戸惑い」が生じた。
(遼のフェロモンは俺の身体を強制的に元気にしてくれる作用がある。でも藤堂さんの雰囲気は、俺の心を安らげる居場所のように感じる。)
その時画面の端で静かにゲームコントローラーを握っていた遼が統に顔を向けた。
遼は配信中、雅人のトークを邪魔することはなかったが統が雅人に心を開いていく様子を冷たい視線で追っていた。
藤堂が統に質問を振った際、統が少し言葉に詰まると遼は画面の外から統の脇腹をそっと小突き、すぐにマイクを引き取る。
「統、そろそろ休憩モードの雑談に戻すぞ。ゲストを巻き込みすぎだ」
遼はそう言うと、統の手元にあるマイクを奪い取った。
画面越しには統の集中力を維持するためのサポートに見えるだろう。統もプロとして遼に感謝の目線を送る。
それを見た遼はマイクを握りながら統に向けて穏やかな顔で微量のαフェロモンを意図的に放った。
それは、統の疲労感を和らげ「俺がお前の傍にずっといる」という無言の独占欲を統にとって心地よい安息として刻み込むためだ。
統はフェロモンによる快感と安心を覚える一方で、遼の突然のフェロモンに背後に支配的な感情が潜んでいるのではないかと感じ取った。遼のこの行動は、統の心に微かな動揺と疑問を生み出す結果となってしまった。
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