デュエット・コード

蘿蔔

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6話

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統は、全身に湧き上がる熱と体の奥からじわじわと漏れ出すΩのフェロモンの異変を必死に理性で押さえつけていた。この異常事態を遼や零に見つかれば、αとΩという立場上最悪の状況も考えられる。


(こんなところで二人に見つかって迷惑をこれ以上かけたくない…特に遼には俺の不調を使って無理させたくない。)


統は、更衣室に入るとシャワー室のドアを乱暴に開け、そのまま冷たい床の上に崩れ落ちる。服を乱雑に脱ぎ捨て、全開にしたシャワーヘッドを最も冷たい水に捻る。

ザーッと音と共に、氷のような水が統の熱を持った肌を叩く。

「うぅっ...........!」

冷水は一瞬のうちに表面の熱を奪い、鋭い痛みとなって統の感覚を呼び戻した。しかし、身体の芯で沸騰しているΩの本能までは到底冷やしきれない。


統の肌から流れる冷水がすぐに体温でぬるく熱を帯びた水に変わっていく。その水は、体内に押し込められたΩフェロモンが再び爆発的に膨張していることを示していた。


その時統の足が限界を超えたことを訴えるように痙攣し始めた。

(これ以上はもうだめだ...抑制剤はどこにある...?)

統は震える足で、更衣室のロッカーまで這い戻ろうとするが、意識は急速に混濁していく。鼻腔の奥に自分の体から発せられる強烈な甘い香りが部屋中に満ちていくのを感じた。

これは、律が嗅いだ「かすかな甘さ」程度ではない。理性を焼き尽くし、αを本能のままに誘惑する暴走したヒートのフェロモンだ。


その甘いフェロモンが漂っていたせいで気づくのが遅れたが、事務所の廊下を伝って、荒々しく有無を言わせない遼のαフェロモンがこちらへ向かってるのを感じた。

統は、冷たい床に身体を叩きつけながら体を引きずって更衣室のロッカーへ急いで向かおうとする。碌に体を拭くことも叶わず無力なΩの本能のままになっている。だが何としてでもこちらへ向かうαから自分を守るために動かなければならなかった。皆が不幸になる結果にならないよう絶対に抑制剤とチョーカーを手にしなければいけなかった。

「はぁ...ぁ...はやく…しなきゃ…!」

ロッカーの方に辿り着く頃には統の理性は完全に途切れ朦朧としていた。部屋にはΩの甘い香りが充満し、この階にいる人間ならばここにヒート状態のΩがいるのは想像にたやすいだろう。その猛烈な甘い香りは、数メートル離れた場所から追跡してきた遼のαの理性を一瞬で焼き尽くすには十分すぎる威力だった。

遼は統の甘い香りを嗅いだ瞬間、脳内に熱い電流が走るのを感じた。運命の番のヒートフェロモンだ。

遼の瞳は本能的に金色に染まり、彼は走って統のいる更衣室へと壁をぶち破るような勢いで駆け込んだ。その瞬間、目の前の光景と脳髄を直撃する強烈なフェロモンが、彼のわずかに残っていたαとしての理性を粉砕してきた。

部屋に充満する甘い匂いとロッカーへ這いずる統。

シャワー室の扉は開いていて冷たいタイル床にはシャワーヘッドから滴る水と乱雑に脱ぎ捨てられていた統の衣服が落ちていた。

這いずっていた統の姿を見た遼はなんとか自分の理性を保ちながら近づく。統は遼がいることに気づいてるのかいないのか『はやくしないと…』とうわ言のようにつぶやいていた。

冷水を浴びていただろう統の肌は紅潮し、熱で火照っている。苦痛と快感に顔を歪ませながら焦点の合わない目でこちらと目が合った統。その瞬間Ωフェロモンの甘さは、これまで以上となり遼の全身の血液を沸騰させる。

「統……!」

遼の喉から漏れた声は、もはや理性を保った人間のものではなかった。低く、理性で押さえきれない荒々しい呼気だった。

遼の瞳は完全に金色に染まり、理性は「目の前のΩを番にしろ」という本能の命令に支配されていた。統のΩフェロモンは、遼のαフェロモンに対して「番になれ」と、熱狂的な誘惑をし続けていた。
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