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14話
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一方統は、裏切られたという絶望と、遼のαとしての支配欲に再び恐怖を覚える。
「お、俺…」
常軌を逸した遼の様子に統は完全に固まって動けなくなっていた。
ガタガタと手が震える一方身体は一向に熱が下がらない。寝る前に飲んだ抑制剤なんて運命の番を前にしたら飴なんかと一緒だった。
抑揚のない声に光のない金色の瞳。しばらく見つめ合っていると次第に『なぜこんなに責められないといけないんだ』という気持ちが頭をかすめ、統は衝動的に大きな声をあげる。
「 他のΩの匂いをつけてきたお前なんかに、俺のヒートを任せられるか…!」
「違う...! あれは 昨日打ち合わせの場所で、Ωの女性スタッフが段差につまずいたのを咄嗟に抱き留めただけだ!だけど、その一瞬で匂いが移ってしまっただけで統を裏切ってなんかいない! なのに、お前は俺以外にαを求めたのか!」
遼は、激情の中で初めて真実を叫んだ。
「俺が、なぜあんなに遅くなったと思ってる! お前と会う前に、その匂いを完全に消すのにどれだけ体を洗ったと思ってる? それでも残った微かな匂いで、お前は俺を拒絶したんだ...! 俺の気持ちが、運命の本能だけじゃないってどう証明しろって言うんだ!」
統はΩスタッフが転んで咄嗟に接触したという状況と、遼の必死の弁解を聞いて心が激しく揺らぐ。
(事故、本当だったんだ…。 遼が俺のために匂いを消そうとしてたなんて...………)
遼は統の首筋に顔を埋め、理性を振り絞った最後の言葉を吐き出した。
「俺はお前と無理矢理番になりたくないから、ずっと抑制剤を飲んで、自分のα性を抑えつけてきた!なぜならお前のキャリアを奪いたくなかったからだ!統のことを愛しているから、お前の自由を奪えなかったんだ!」
その真実と遼の全身全霊の愛の証明によって、統は初めて遼の愛が本能ではなく自分に向けられた絶対的な愛だと確信する。
「...……遼」
統は遼に近寄り、頭を下げる。
「ご、ごめんなさい...………おれ、遼のこと、疑って、酷い言葉吐いた…」
遼は必死に頭を下げて謝る統を見つめる。今の統には遼を『今までのα』と同じにしてしまったことに自責の念で遼の顔が見れない。
「いくらおれが過去にひどいことされていたとしても、必死に守ってくれた遼にこんなことしてしまって、本当に、おれ…」
気持ちが昂りすぎて段々と涙が溢れてくる。申し訳なさ、後悔、その裏にある嬉しさ。いろんな感情でごっちゃになった統の手元にベッドのしみが広がっていく。
ふいに丸い影が生まれる。気づいて顔をあげると遼の顔が間近にあってびっくりする。
遼はこちらを見つめたまま俺の顎を掴み顔を上げさせ、そっと唇を重ねた。
「ん…っ」
突然のキスにびっくりして目を白黒させると遼は顔を離し口を開いた。
「もういい、統。わかってくれたら大丈夫だから…。」
遼の顔を見ると先ほどとは打って変わって目は光を取り戻し、心配そうな顔でこちらを見ていた。
「俺は自分が傷ついたり嫌な事されるよりも、統、お前に泣かれるのが一番辛い。」
遼はそう言うと、指で統の涙を掬い上げる。遼の突拍子もない動きに統はドキドキして顔を背ける。
「ごめん、ありがとう…。」
「いいよ、でも統、ヒート中に他のαを家に招こうとするなんていけないことだってわかるよな?」
空気が一瞬で張り詰める。招こうとはしてないんだけど、顔が笑ってないので言い出すのがとても怖い。
「わかる、でも俺はちゃんと断ろうとしてたし…」
「本当に?俺に罪悪感を感じて誤魔化してるわけじゃないよね?」
今まで散々疑ったんだからしょうがないんだけど流石に胸が傷ついた。
「ちがう。俺は藤堂さんのことは尊敬してるけど、そんなことしたくない。」
「ふ~ん?じゃあ俺とはなんでするわけ?」
(なんで、なんだろう…)
『症状良くしてあげる。』って言われたとき全く嬉しくなかった。
むしろ急にそういう目で見られて気持ち悪くなって断ろうとしてた。
でもなんで?なんで遼にはそう思わないのに藤堂さんにはなったんだろう…いや、他で考えてみるか、零や櫂だったら?………無理かも。
でもなんで無理なのかわからない…。
長く考え込んでいたからか、痺れを切らした遼がベッドの上に登ってくる。
「お、俺…」
常軌を逸した遼の様子に統は完全に固まって動けなくなっていた。
ガタガタと手が震える一方身体は一向に熱が下がらない。寝る前に飲んだ抑制剤なんて運命の番を前にしたら飴なんかと一緒だった。
抑揚のない声に光のない金色の瞳。しばらく見つめ合っていると次第に『なぜこんなに責められないといけないんだ』という気持ちが頭をかすめ、統は衝動的に大きな声をあげる。
「 他のΩの匂いをつけてきたお前なんかに、俺のヒートを任せられるか…!」
「違う...! あれは 昨日打ち合わせの場所で、Ωの女性スタッフが段差につまずいたのを咄嗟に抱き留めただけだ!だけど、その一瞬で匂いが移ってしまっただけで統を裏切ってなんかいない! なのに、お前は俺以外にαを求めたのか!」
遼は、激情の中で初めて真実を叫んだ。
「俺が、なぜあんなに遅くなったと思ってる! お前と会う前に、その匂いを完全に消すのにどれだけ体を洗ったと思ってる? それでも残った微かな匂いで、お前は俺を拒絶したんだ...! 俺の気持ちが、運命の本能だけじゃないってどう証明しろって言うんだ!」
統はΩスタッフが転んで咄嗟に接触したという状況と、遼の必死の弁解を聞いて心が激しく揺らぐ。
(事故、本当だったんだ…。 遼が俺のために匂いを消そうとしてたなんて...………)
遼は統の首筋に顔を埋め、理性を振り絞った最後の言葉を吐き出した。
「俺はお前と無理矢理番になりたくないから、ずっと抑制剤を飲んで、自分のα性を抑えつけてきた!なぜならお前のキャリアを奪いたくなかったからだ!統のことを愛しているから、お前の自由を奪えなかったんだ!」
その真実と遼の全身全霊の愛の証明によって、統は初めて遼の愛が本能ではなく自分に向けられた絶対的な愛だと確信する。
「...……遼」
統は遼に近寄り、頭を下げる。
「ご、ごめんなさい...………おれ、遼のこと、疑って、酷い言葉吐いた…」
遼は必死に頭を下げて謝る統を見つめる。今の統には遼を『今までのα』と同じにしてしまったことに自責の念で遼の顔が見れない。
「いくらおれが過去にひどいことされていたとしても、必死に守ってくれた遼にこんなことしてしまって、本当に、おれ…」
気持ちが昂りすぎて段々と涙が溢れてくる。申し訳なさ、後悔、その裏にある嬉しさ。いろんな感情でごっちゃになった統の手元にベッドのしみが広がっていく。
ふいに丸い影が生まれる。気づいて顔をあげると遼の顔が間近にあってびっくりする。
遼はこちらを見つめたまま俺の顎を掴み顔を上げさせ、そっと唇を重ねた。
「ん…っ」
突然のキスにびっくりして目を白黒させると遼は顔を離し口を開いた。
「もういい、統。わかってくれたら大丈夫だから…。」
遼の顔を見ると先ほどとは打って変わって目は光を取り戻し、心配そうな顔でこちらを見ていた。
「俺は自分が傷ついたり嫌な事されるよりも、統、お前に泣かれるのが一番辛い。」
遼はそう言うと、指で統の涙を掬い上げる。遼の突拍子もない動きに統はドキドキして顔を背ける。
「ごめん、ありがとう…。」
「いいよ、でも統、ヒート中に他のαを家に招こうとするなんていけないことだってわかるよな?」
空気が一瞬で張り詰める。招こうとはしてないんだけど、顔が笑ってないので言い出すのがとても怖い。
「わかる、でも俺はちゃんと断ろうとしてたし…」
「本当に?俺に罪悪感を感じて誤魔化してるわけじゃないよね?」
今まで散々疑ったんだからしょうがないんだけど流石に胸が傷ついた。
「ちがう。俺は藤堂さんのことは尊敬してるけど、そんなことしたくない。」
「ふ~ん?じゃあ俺とはなんでするわけ?」
(なんで、なんだろう…)
『症状良くしてあげる。』って言われたとき全く嬉しくなかった。
むしろ急にそういう目で見られて気持ち悪くなって断ろうとしてた。
でもなんで?なんで遼にはそう思わないのに藤堂さんにはなったんだろう…いや、他で考えてみるか、零や櫂だったら?………無理かも。
でもなんで無理なのかわからない…。
長く考え込んでいたからか、痺れを切らした遼がベッドの上に登ってくる。
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