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クロの回復
しおりを挟む一通り商店街を歩き回り、クロの好きそうなものを買っては与えて食べさせ続けた。
今クロは俺の首元に顔を埋めて規則正しい息をしながらふぐふぐふぐふぐと器用に鳴いている。
ふぐふぐと鳴くのはお腹がいっぱいの合図だ。
やはり前より食べないが、それでもクロのお腹は久々にポコリと膨れている。
ああ、連れてきて、本当に、良かった。
クロが反応良く食べた物の中で日持ちする物は大量に買って宅配を頼んだし、非常用にも沢山買った。
ミルク以外にも半分凍った甘いジュースや柑橘系の飲み物はよく飲んでくれたから、今度から家でも柑橘系の飲み物は与えていこう。
炭酸や匂いのキツイ飲み物は嫌がるから今度からは買わないようにして…酒はもっとダメだ。
眉間に皺まで寄せて唸るから、俺もだが、酒飲みじゃなくて良かったと安心した。
ヒトは酒を飲むとかなり酷い酔い方をするらしいからな。
荷物も重くなってきたし、そろそろ旅館へ向かうか。
クロを立たせてから座っていたベンチから立ち上がり、手を繋ぐ。
ここから旅館への散歩は腹ごなしに丁度いいだろう。
「ん、んふ、るるー」
ぎゅうと握り返してきたクロに笑いかけ、足を動かす。
あと半分程で旅館という時に、酔っ払いに絡まれた。
「おい、おいおいおい!なぁにヒトと仲良くしてんだァ?!」
酔っ払いは近付くな、酒くせぇ。
クロ、鼻をつまむ芸まで覚えたか、偉いな、だけどわかり易すぎるぞ。
酔っ払いを無視して旅館の方へ歩き出すと、クロが動かなくなった。
「どうした、クロ?疲れたか?」
「んー、るる?りゅる、うー、る?」
頭を傾げたクロが鳴いているが、意味は全く分からない。
「うん?」
「んゆ、るーるる、るーう、りゅる?」
ひゅんひゅんと繋いでいない方の手を拳にして突き出す動きを見て、成程、殴ろうかと聞いているのかと理解する。
頭を横に振り、抱き上げる。
「食後の運動は後でしような」
激しい運動をして吐かれたら堪らない。
折角食べてくれたんだ、消化するまではゆっくりさせるとさっき決めた。
時間も無駄になるし、良い事など1つも無い。
「おい!無視してんじゃねぇぞ!この犬が!」
クロがべーと舌を出して煽り、酔っ払いはダンッ、と強く地面を蹴った。
流石兎人、怒りの表現は皆同じだな。
「んーゆ、るー、べー」
ああ、クロ、煽る余裕が出来たか、俺は嬉しいぞ。
今夜と明日の朝は食事決まっているから、明日の昼お祝いしような。
うんうんと頷きながら、旅館への道を辿った。
酔っ払い?
知らないな。
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