ペットになった

ノーウェザー

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クロと褒美

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交番に着くと、挙動不審だった男女二人が駆け寄ってきた。


「アフィルガ!!」


「アフィ!!」


二人はどうやら少年の親らしく、涙を浮かべた女性の方が近くで泣き崩れた。


「良かった……本当にっ……」


「すみません、本当にありがとうございます!!アフィルガ、もう大丈夫だからな」


「いえ、お気になさらず」


少年を男性に預け、クロと一緒に交番に入る。


案内された席に座り、クロを膝に乗せる。


次はどれを与えようか……唐揚げは食うか?


串に刺さった唐揚げを口元に持っていけば、クロはあ、と口を開けた。


一人で食えそうだな。


唐揚げの入ったカップと串をクロに渡す。


「すみません。彼をどの辺で保護されたか分かりますか?こちらがこの辺りの地図なんですが……」


「料理屋の裏にあるゴミ箱の中だ。名前は、確かアントイトだったと……ああ、この辺りだ」


「ああ、確かにこの道だと車両は通れませんね。大通りも今日は通行止めですし……連れて来て頂きありがとうございます。警官も向かわせたかったのですが、何分……」


「いや、流石に街中でヒトに襲われた者がいるなら、其方の対策に向かうのは当然。命に関わるような状態では無かったし、近場だったから問題無い」


「ありがとうございます。現在彼は隣接する病院の医師に診てもらっていますので、ご安心下さい」


野生のヒトに襲われたなら、感染症も疑わないといけないが、外傷が無いなら問題無いか。


あるとすれば精神の方だろうが、そこは他人の俺にはどうしようもない。


「んゆ」


「次はたこ焼きを食べるか?」


唐揚げを食べ終わったクロからカップと串を受け取り、たこ焼きを渡す。


買ってから時間が経っているし、火傷もしないだろう。


時折飲み物を挟みながら食べ進めるクロの頭を撫でる。


家に帰ったらプリンを何個かやろう。


クロのお陰であの少年が助かったのだから。


いや……確か、この近くに萩ノ屋があったな。


そこに行くか。


「……と以上になります。この度は本当にありがとうございました。まだ彼を襲ったヒトは確認が取れていませんので、帰りもお気を付けて下さい」


「ああ。では失礼する。クロ、行くぞ」


「んー」


お腹が膨れ眠いのか、クロは抱っこをせがむかのように手を伸ばした。


「ふあぁ……んー」


欠伸をして目を擦るクロを抱き、携帯でマップを開く。


萩ノ屋は……よし、やってるな。


新商品も出たのか。


本舗だし、もしかしたらあの人も居るかもしれない。






「いらっしゃいませ」


「ヒトは入ってもいいか?」


「はい、大丈夫です」


「そうか」


萩ノ屋の中には客が四人程居た為ヒトの入店可否を聞いたが、問題ないようだ。


「本日はどの様な物をお探しですか?」


「甘味を。このヒトの褒美用だ」


「ヒト用ですか?余り耳にしない言葉ですね。好みはありますか?」


「ああ。俺もこのヒトを飼うまでは聞き馴染みの無い言葉だった。出来るだけ柔らかい物がいい」


「では煎餅では無く饅頭など如何でしょうか?先日餡子の代わりにカスタードを入れた「タママン」を発売したばかりです。試食も出来ますよ」


「貰えるか?クロ、オヤツだぞ」


試食用に貰ったタママンをクロの鼻先に持って行くと、あ、と口を開けた。


寝惚けながらも食欲はあるようだ。


「……うん?ゆぅー」


美味しかったのか、もう一個と口を開けた。


「口にあったか?このタママン何個入りがある?」


「一個から売っております。箱入りは五の倍数毎、最大五十個入までをご準備させて頂いております。日持ちは二週間程となっておりますのでご注意下さい」


「なら五十入りを二つ」


「畏まりました」


「餡子の方も五十入り二つ。こっちの最中は……」


クロの食いそうな物、母さんやライージュの好物も買い中々な量になった。


「はい。畏まりました。全て御自宅用で宜しかったでしょうか?」


「ああ」


「りゅーる、あ……あー、あ」


「ああ。忘れていた。タママンを三個追加で頼む」


口を開けてせがむクロをすっかり忘れていた。






クロがタママンを食べる中、店の中から一人の女性が出てきた。


「御久し振りに御座います。狼宮殿」


「ああ。お元気そうで」


狐人のコセンラ 萩ノ月…電車の中で窃盗の被害にあった彼女は、犯人を捕らえたクロをとても可愛がってくれている。


時折エミュウの投稿に「早く店に来い」と言う言葉をオブラートに包んだコメントを送ってくれていた。


「ええ。狼宮殿もクロも、元気そうで何よりです。連絡を頂けたのなら、ワタクシが接待致しましたのに」


「はは、それは残念な事をした。クロが今回も良い事をした褒美に、此処に寄らせてもらったんだ。タママンをいたく気に入ったようだ」


「其れは良う御座いました。卵がお好きと伺っておりましたので、開発に力を入れました。気に入って頂けたのなら幸いに御座います」


「ふん、ふんふん…ゆぅん」


クロは萩ノ月を覚えているようで、足元に駆け寄ってタママンを掲げて見せた。


「あらあら、覚えておいでですか?」


「ゆああん、きゅるぅん」


掲げたタママンを食べ、手を差し出すクロ。


「ええ、ええ。幾らでも差し上げますよ」


店先に並んだタママンを取り、包装を剥いてクロに渡す萩ノ月に「十個までで」と言えばニッコリと微笑み返された。


「クーロ」


「はい、どうぞ」


「あーい」


普段なら絶対自分から近寄らない癖に、好物となると積極的になるな。


「あーい……ゆああん、あー、あ」


「ええ、はい。沢山食べて下さいね」


「んんーま、んんー」


パクパクと食べ進めるクロは、萩ノ月に撫でてもらいながら満足そうに鼻息を鳴らしていた。






「世話になったな」


「何時でもいらしてくださいな。次は必ずワタクシをお呼びください。クロに会えないのは寂しいですから」


「わかっている。ああ、そうだ。クロはミルクも好きだから、そっち系の物もあると嬉しい」


「あらあら、では次の新作にご期待くださいな。クロ、またおいで」


「あいあーい」


手を振るクロを抱き店を出ると、母さんとライージュが外に居た。


「あら、もういいの?」


「荷物、俺が持とう」


「ありがとうライージュ。挨拶も済んだからな。帰ろうか」


「ええ、いっぱい買っちゃったもの」


「それにしても、よくここだとわかったな」


「すれ違った人達が、クロちゃんの話をしてたからね。大人しくて甘党なヒト、クロちゃんくらいだもの。すぐにわかったわ」


「それより、この大量の菓子は何だ?」


「クロの褒美用だ」


「また何かしたのね?何をしたのかしら?」


クロの話をしながら帰路に着く。


クロは最後に貰ったタママンを見つめながら、ふんふんとご機嫌だ……た。


……まさか鳥に取られるとは思っていなかったな。


クロは飛んで行った鳥を口を大きく開けながら呆然と見つめていた。











    
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