陰陽師と結ばれた縁

サクサク

文字の大きさ
72 / 76
終わりと始まり

「初めまして」のその声がとても懐かしくて

しおりを挟む
ふわふわしてて、暖かい。
懐かしい香りがする。


『・・・皐月。』
『春仁さま・・?』
『もうすぐ会えるから。だから』

にこやかに微笑んだ春仁さまは私を抱きしめた。

「・・・は・・・・と、さま・・・。」

うっすらと目を開ければ、琥珀と朱桜の姿が目に入った。

〈お、気づいたな。俺、藤香に知らせてくる。〉

部屋を出て行ったのは、琥珀で朱桜が体を起こすのを手伝ってくれた。

〈はい、お水。とりあえず飲んで。〉

差し出されたコップに入った水を飲み干す。
足りずにそのままおかわりをすれば、やっと落ち着いた。

〈どれくらい、眠ってた?〉
〈んー、軽く1週間。いつもの4人で交代して、皐月のそばにいたよ。疲れが溜まってたんだろって。向こうじゃ、気をつけて常に張っていたし、力の解放を何度かしたしね。〉
〈日付的に、今はいつ?〉
〈それが俺たちも帰ってきて驚いたんだけどさ、あまり日付進んでないの。〉
〈は?どういう事?〉
〈だからあまり時間が進んでいない。俺たちが帰ってきた日は皐月の誕生日から丁度2ヶ月後。母さんの話だと、皐月の時間も止まっていたらしくて、月のモノも一回も来なかっただろう?〉
〈確かに。じゃあ、残ってたらそのままの姿でいたって事?〉
〈いや、それは、皐月が選択・・をしたら止まっていた時間が動き出すようになっていたらしい。〉
〈そう、なんだ。〉

妙に納得してしまった私は、部屋に入ってきた母さまからお粥をもらった。

「気がついてよかったわ。お父様なんて目の前で娘が意識をなくすモノだから、慌てちゃってあのあと大騒ぎだったわ。」

クスクスと笑いながら、母さまはおっとりと話す。
母さまは私の姿を確認したあと、緊張の糸が切れたらしくその場に座り込んだものの、私が倒れたと聞いて、すぐさま家人に指示を出したらしい。

「母さま、天皇陛下叔父様に頼んだら、昔の皇室の資料を見せてもらえるかしら?」
「そうね。そこは貴重なものでしょうし、見せて頂けるか分からないけれど、お兄様にお伺いしてみるのが一番良いかもしれないわね。今度顔合わせも兼ねて、皐月ちゃんの婚約者筆頭の方にお会いしに行くことになているから、その前にお父様にもお伺いをしたらどうかしら?だって、収集癖と次世代に色々残したがる安倍一族でしょう?」

母さまの話を聞いて、顔をあげる。
そうだ。
我が家の蔵には歴代当主の手記や一族の者の研究資料などが綺麗に残っている。
初代さまの時代を探せば何か分かるかもしれない。
でも、その前に・・・・・

「婚約者筆頭の方に会いに行く??」
「えぇ。一応、皐月ちゃんの体調を見ながら予定は組んではいるのよ。お父様から聞いていない?」
「はい。あの日は帰還の挨拶しかしていないので・・・・。」
「当初の予定通り、婚約者候補の方々と顔合わせをするみたい。安倍一族の人間は一目見ればその相手かどうか判るらしいから。皐月ちゃんが気に入らなければ、その人と婚約はしないと言っていたわ。
まぁ、お兄様のところは男児が4人もいらっしゃるからその中から選んで欲しい雰囲気みたいだけれど・・・・。」
「そういう事・・・・。分かりました。」
「・・・心に決めた方がいるね?」

母さまの言葉に、一瞬思考停止したが、言われた意味を理解すると同時に一気に耳まで赤くなる。
なんで、バレた?!

「だって、皐月ちゃん、帰ってきた時に感じたのだけれど、すごく綺麗になったもの。それに私は皐月ちゃんのお母さまですからね。」

ふふっと、自信満々に答えた母さまにつられて笑みがあふれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

ゴミ鑑定だと追放された元研究者、神眼と植物知識で異世界最高の商会を立ち上げます

黒崎隼人
ファンタジー
元植物学の研究者、相川慧(あいかわ けい)が転生して得たのは【素材鑑定】スキル。――しかし、その効果は素材の名前しか分からず「ゴミ鑑定」と蔑まれる日々。所属ギルド「紅蓮の牙」では、ギルドマスターの息子・ダリオに無能と罵られ、ついには濡れ衣を着せられて追放されてしまう。 だが、それは全ての始まりだった! 誰にも理解されなかったゴミスキルは、慧の知識と経験によって【神眼鑑定】へと進化! それは、素材に隠された真の効果や、奇跡の組み合わせ(レシピ)すら見抜く超チートスキルだったのだ! 捨てられていたガラクタ素材から伝説級ポーションを錬金し、瞬く間に大金持ちに! 慕ってくれる仲間と大商会を立ち上げ、追放された男が、今、圧倒的な知識と生産力で成り上がる! 一方、慧を追い出した元ギルドは、偽物の薬草のせいで自滅の道をたどり……? 無能と蔑まれた生産職の、痛快無比なざまぁ&成り上がりファンタジー、ここに開幕!

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

見捨ててくれてありがとうございます。あとはご勝手に。

有賀冬馬
恋愛
「君のような女は俺の格を下げる」――そう言って、侯爵家嫡男の婚約者は、わたしを社交界で公然と捨てた。 選んだのは、華やかで高慢な伯爵令嬢。 涙に暮れるわたしを慰めてくれたのは、王国最強の騎士団副団長だった。 彼に守られ、真実の愛を知ったとき、地味で陰気だったわたしは、もういなかった。 やがて、彼は新妻の悪行によって失脚。復縁を求めて縋りつく元婚約者に、わたしは冷たく告げる。

悪役女王アウラの休日 ~処刑した女王が名君だったかもなんて、もう遅い~

オレンジ方解石
ファンタジー
 恋人に裏切られ、嘘の噂を立てられ、契約も打ち切られた二十七歳の派遣社員、雨井桜子。  世界に絶望した彼女は、むかし読んだ少女漫画『聖なる乙女の祈りの伝説』の悪役女王アウラと魂が入れ替わる。  アウラは二年後に処刑されるキャラ。  桜子は処刑を回避して、今度こそ幸せになろうと奮闘するが、その時は迫りーーーー

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

悪役令嬢に仕立て上げたいなら、ご注意を。

潮海璃月
ファンタジー
幼くして辺境伯の地位を継いだレナータは、女性であるがゆえに舐められがちであった。そんな折、社交場で伯爵令嬢にいわれのない罪を着せられてしまう。そんな彼女に隣国皇子カールハインツが手を差し伸べた──かと思いきや、ほとんど初対面で婚姻を申し込み、暇さえあれば口説き、しかもやたらレナータのことを知っている。怪しいほど親切なカールハインツと共に、レナータは事態の収拾方法を模索し、やがて伯爵一家への復讐を決意する。

婚約を奪った義妹は王太子妃になりましたが、王子が廃嫡され“廃嫡王子の妻”になりました

鷹 綾
恋愛
「お姉様には、こちらの方がお似合いですわ」 そう言って私の婚約者を奪ったのは、可憐で愛らしい義妹でした。 王子に見初められ、王太子妃となり、誰もが彼女の勝利を疑わなかった――あの日までは。 私は“代わり”の婚約者を押し付けられ、笑いものにされ、社交界の端に追いやられました。 けれど、選ばれなかったことは、終わりではありませんでした。 華やかな王宮。 厳しい王妃許育。 揺らぐ王家の威信。 そして――王子の重大な過ち。 王太子の座は失われ、運命は静かに反転していく。 離縁を望んでも叶わない義妹。 肩書きを失ってなお歩き直す王子。 そして、奪われたはずの私が最後に選び取った人生。 ざまあは、怒鳴り声ではなく、選択の積み重ねで訪れる。 婚約を奪われた姉が、静かに価値を積み上げていく王宮逆転劇。

処理中です...