金蓮花をあなたに

第1幕 桜と紫苑

第1話 それは突然に

「ごめん、別れよう。」


あまりにも唐突すぎて一瞬、何を言われたのか理解出来なかった。

最近は喧嘩もなく、いつものようにデートをして大観覧車の中で日が暮れ始めて地上の星達が広がっていくのを

綺麗だね、と話しながらゆっくり眺め

さぁこれから帰ろうかって言う時に何の前触れもなく告げられたその言葉を誰が理解出来ただろうか。

理由を聞いても「ごめん」その一言だけで

逸らすわけでも瞑るわけでもなく、ただ真っ直ぐに私を見つめる瞳に

あぁ…もう何を言っても駄目なんだな

って傍から見てわかる程には優人の中で別れるということは決められていた。

何で？どうして？と縋るのは簡単だった。

でも、余計に気持ちが離れていきそうなことはしたくなかった。

それに泣き顔を最後にするよりも笑った顔で別れた方が、いつか、

あぁ良い女だったな、惜しいことをした…

と思って貰えるかもしれない。その方がよっぽど良いと思った。

結局その後、連絡がつくことは今迄たったの一度もないけれど…。




Prrrr………