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第1幕 桜と紫苑
第9話 噂のお店?
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ー ハナダ シオン サマ、ゴホンニンヲカクニンー
「あ、あー。コホン。華田 紫苑様ですね。聞こえておりますでしょうか。」
最初は無機質な声。その後、意識を持った声がどこからとも無く急に頭の中に声が聞こえてきた。
「な、なにこれ!誰っ!?どこにいるの!?」
驚いて辺りを見回すが当然誰もいない。だって近くにコンビニも遊ぶ場所も……何も無い廃墟だもの、ここ。
「申し遅れました、私はクロートと申します。主様の代わりに、諸注意のお知らせをさせて頂きます。」
声の主は、私の心情なんかお構い無しに話を勧めてくる。そんな頭に響く謎の声と姿が見えない声の主に、ホラーが苦手な私はパニックで既に涙目だ。
「主様?諸注意?急に何!?なんで頭の中に声が聞こえてくるわけ!?」
だって、怖いのよ!
え?なら何で廃墟に居るかって?そんなの、身投げしようとしてるんだから人がいるところに行けるわけないじゃないっ!
「華田様が、当店の次のお客様に選ばれた。と、いうことです。今、の手紙を通して華田様の意識に直接話しかけておりますので。」
「…… 壺の押し売りも、宗教の勧誘もお断りよ。」
全くもって意味がわからない。
「混乱されるのは当然のこと。ですが、当店の噂はご存知でしょう?」
声の主は、やはり私に構わず話を進めていく。
「……それは、逢いたい人に逢えるっていう、胡散臭い噂のこと?」
「胡散臭い……まぁ当店のお客様以外の方にはそう思われても致し方ないでしょう。
ご来店されるかどうかは…とりあえず説明を聞いてからご検討頂けませんでしょうか。」
「………」
私は自分で見たものしか信じない。でも、楓というお店の噂は、よく耳にする。火のないところに煙はたたないとも言うし…聞くだけ聞こう。で、壺とか宗教なら、放置しよう。
無言を肯定ととったのか、声の主は話し始める。
「当店は先程、華田様が仰ったように、逢いたい者に逢える、という噂がございます。
ですがそれは、真実であって真実ではございません。」
ん?聞き間違いじゃないよね?
「どういうこと?」
思わず声に出してしまった。
「逢う為にはいくつかの条件がございます。
・心の深いところで互いに逢いたいと願った場合、逢うことができる
・逢いに行けるのは生涯で1度だけ
・逢った人とは2度と逢えない
・自分自身とは逢えない
・過去も未来も変えることはできない
・逢えるのは1夜だけ
以上が大まかな説明でございます。何かご質問は?」
それはつまり…
「………つまり、必ず思い描いてる人に逢えるわけではないし、これで逢った人とはもう逢えない…と。そういうこと?」
「理解が早くて助かります。」
うわ、なんかよく居る?嫌味な秀才みたいな反応ね。
絶対この人、今、指先で眼鏡クイッってやったでしょ…ってそんなことどうでもいいわ。それよりも、
「馬鹿にしているの?逢いたい人に逢えるんじゃないの?それが謳い文句じゃないの?それなのに、必ず逢えるわけではないって!?」
「噂は独り歩きするもの。我々は必ずとは申しておりません。」
「それなら!それなら、なんで訂正しないのよっ!このお店に縋りつきたい人達だっているでしょう!?」
そんなの、詐欺と変わらないじゃない。行き過ぎたものは訂正する義務があるでしょ。
「……まぁ、色々ありましてね。さて、華田様……如何なさいますか?」
「…………」
如何なさいますか?じゃないわ。もしかしたら…って、ちょっとだけ期待したけど…駄目。こんな詐欺まがいの人が本当のことを話してるとも思えないし…と、私は黙りを決め込んだ。
「あ、あー。コホン。華田 紫苑様ですね。聞こえておりますでしょうか。」
最初は無機質な声。その後、意識を持った声がどこからとも無く急に頭の中に声が聞こえてきた。
「な、なにこれ!誰っ!?どこにいるの!?」
驚いて辺りを見回すが当然誰もいない。だって近くにコンビニも遊ぶ場所も……何も無い廃墟だもの、ここ。
「申し遅れました、私はクロートと申します。主様の代わりに、諸注意のお知らせをさせて頂きます。」
声の主は、私の心情なんかお構い無しに話を勧めてくる。そんな頭に響く謎の声と姿が見えない声の主に、ホラーが苦手な私はパニックで既に涙目だ。
「主様?諸注意?急に何!?なんで頭の中に声が聞こえてくるわけ!?」
だって、怖いのよ!
え?なら何で廃墟に居るかって?そんなの、身投げしようとしてるんだから人がいるところに行けるわけないじゃないっ!
「華田様が、当店の次のお客様に選ばれた。と、いうことです。今、の手紙を通して華田様の意識に直接話しかけておりますので。」
「…… 壺の押し売りも、宗教の勧誘もお断りよ。」
全くもって意味がわからない。
「混乱されるのは当然のこと。ですが、当店の噂はご存知でしょう?」
声の主は、やはり私に構わず話を進めていく。
「……それは、逢いたい人に逢えるっていう、胡散臭い噂のこと?」
「胡散臭い……まぁ当店のお客様以外の方にはそう思われても致し方ないでしょう。
ご来店されるかどうかは…とりあえず説明を聞いてからご検討頂けませんでしょうか。」
「………」
私は自分で見たものしか信じない。でも、楓というお店の噂は、よく耳にする。火のないところに煙はたたないとも言うし…聞くだけ聞こう。で、壺とか宗教なら、放置しよう。
無言を肯定ととったのか、声の主は話し始める。
「当店は先程、華田様が仰ったように、逢いたい者に逢える、という噂がございます。
ですがそれは、真実であって真実ではございません。」
ん?聞き間違いじゃないよね?
「どういうこと?」
思わず声に出してしまった。
「逢う為にはいくつかの条件がございます。
・心の深いところで互いに逢いたいと願った場合、逢うことができる
・逢いに行けるのは生涯で1度だけ
・逢った人とは2度と逢えない
・自分自身とは逢えない
・過去も未来も変えることはできない
・逢えるのは1夜だけ
以上が大まかな説明でございます。何かご質問は?」
それはつまり…
「………つまり、必ず思い描いてる人に逢えるわけではないし、これで逢った人とはもう逢えない…と。そういうこと?」
「理解が早くて助かります。」
うわ、なんかよく居る?嫌味な秀才みたいな反応ね。
絶対この人、今、指先で眼鏡クイッってやったでしょ…ってそんなことどうでもいいわ。それよりも、
「馬鹿にしているの?逢いたい人に逢えるんじゃないの?それが謳い文句じゃないの?それなのに、必ず逢えるわけではないって!?」
「噂は独り歩きするもの。我々は必ずとは申しておりません。」
「それなら!それなら、なんで訂正しないのよっ!このお店に縋りつきたい人達だっているでしょう!?」
そんなの、詐欺と変わらないじゃない。行き過ぎたものは訂正する義務があるでしょ。
「……まぁ、色々ありましてね。さて、華田様……如何なさいますか?」
「…………」
如何なさいますか?じゃないわ。もしかしたら…って、ちょっとだけ期待したけど…駄目。こんな詐欺まがいの人が本当のことを話してるとも思えないし…と、私は黙りを決め込んだ。
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