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第1幕 桜と紫苑
第10話 チャンスは1度きり
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私が黙りを決め込んでいると、悩んでいると判断したのかクロートさんが、話しかけてきた。
「悩むのは分かります。ですが…迷っている暇はありませんよ。チャンスは1度きりです。チャンスの神様は、前髪しかないのです。なので、通り過ぎれば掴むことが出来ないのですよ。……華田様がお逢いしたい方は…………これを逃せば…お分かりですよね?」
ーーーーーいま、なんていった…?
紫苑「っ!?なんでっ!なんであなたっ…!優人を知ってるの!?」
クロートさんの言葉に動揺して、持っていた手紙を握り潰してしまい、慌てて広げて皺を伸ばす。ど、どうしよう…何か知ってるかも知れないのに、握りつぶしちゃった…壊れてない、よね?
「そんなことをしなくても手紙は、ただの媒体ですから切り刻んだり灰にしたりしなければ壊れたりしませんよ。」
へぇ、私の状況は視認出来ているということね…。案外近くにいるのかな?いや待って、それは怖い。だって、周囲に人の気配はないんだから…。と、再び怖くなっているとクロートさんは、話を続けた。
「私はウィルムンク、絆を司る妖精。クロートは紡ぐ者を表す言葉。つまり、運命の糸を紡ぐ者。と、言えば分かりますか?」
それと優人を知っていることと、私の状況が見えていることは、一体なんの関係があるというのだろう。
「……全く分からないわ。やっぱり新手の宗教か何かかしら。」
「…………何故そうなるんでしょう…」
この人…さっき、妖精って言っていたから人じゃないわね…この妖精、今絶対呆れた顔をしてるに違いないわね。
「さぁ?これまでのこと考えたら分かるんじゃない?そうやって追い返されたこともあるんじゃないの?」
ちょっと腹が立ったので、少し棘のある言い方をすると、初めて声の主、基、自称妖精が黙った。
「……………」
だけど、この妖精が優人を匂わせることを口走った以上、私が逢えるのは優人ととってもいいと思う…。
それに、このタイミングで現れたということは、私の様子を窺って間に合うように急いだのだろう…案外この妖精は悪い人ではないんだろうな…って、やり取りの中で感じた。
だから私は、大きく1つ溜息を吐き、妖精に告げた。
「逢わなければ逢えないし…どの道死ぬとこだったし…それなら最期にかけてみてもいいのかもね。いいわ、招待。受けます。」
「ご決断頂きありがとうございます。0時丁度にお迎えに上がります。こちらの花お持ちになってお待ちください。それでは私はこれで…」
その声は、明らかにほっとした声だった。一応、心配してくれていたってことでいいのよね?
「あ、ちょっ。………花って、これのことよね。はぁ……」
手元に招待状と1輪の花を残して、止める間もなく声は聞こえなくなってしまった。
「…………優人…」
名前を呼んだ瞬間、手に持った花が月に反射して金色に輝いたように見えた。
花と招待状を持って、来る時と違い少し穏やかな気分で帰路についた。
「悩むのは分かります。ですが…迷っている暇はありませんよ。チャンスは1度きりです。チャンスの神様は、前髪しかないのです。なので、通り過ぎれば掴むことが出来ないのですよ。……華田様がお逢いしたい方は…………これを逃せば…お分かりですよね?」
ーーーーーいま、なんていった…?
紫苑「っ!?なんでっ!なんであなたっ…!優人を知ってるの!?」
クロートさんの言葉に動揺して、持っていた手紙を握り潰してしまい、慌てて広げて皺を伸ばす。ど、どうしよう…何か知ってるかも知れないのに、握りつぶしちゃった…壊れてない、よね?
「そんなことをしなくても手紙は、ただの媒体ですから切り刻んだり灰にしたりしなければ壊れたりしませんよ。」
へぇ、私の状況は視認出来ているということね…。案外近くにいるのかな?いや待って、それは怖い。だって、周囲に人の気配はないんだから…。と、再び怖くなっているとクロートさんは、話を続けた。
「私はウィルムンク、絆を司る妖精。クロートは紡ぐ者を表す言葉。つまり、運命の糸を紡ぐ者。と、言えば分かりますか?」
それと優人を知っていることと、私の状況が見えていることは、一体なんの関係があるというのだろう。
「……全く分からないわ。やっぱり新手の宗教か何かかしら。」
「…………何故そうなるんでしょう…」
この人…さっき、妖精って言っていたから人じゃないわね…この妖精、今絶対呆れた顔をしてるに違いないわね。
「さぁ?これまでのこと考えたら分かるんじゃない?そうやって追い返されたこともあるんじゃないの?」
ちょっと腹が立ったので、少し棘のある言い方をすると、初めて声の主、基、自称妖精が黙った。
「……………」
だけど、この妖精が優人を匂わせることを口走った以上、私が逢えるのは優人ととってもいいと思う…。
それに、このタイミングで現れたということは、私の様子を窺って間に合うように急いだのだろう…案外この妖精は悪い人ではないんだろうな…って、やり取りの中で感じた。
だから私は、大きく1つ溜息を吐き、妖精に告げた。
「逢わなければ逢えないし…どの道死ぬとこだったし…それなら最期にかけてみてもいいのかもね。いいわ、招待。受けます。」
「ご決断頂きありがとうございます。0時丁度にお迎えに上がります。こちらの花お持ちになってお待ちください。それでは私はこれで…」
その声は、明らかにほっとした声だった。一応、心配してくれていたってことでいいのよね?
「あ、ちょっ。………花って、これのことよね。はぁ……」
手元に招待状と1輪の花を残して、止める間もなく声は聞こえなくなってしまった。
「…………優人…」
名前を呼んだ瞬間、手に持った花が月に反射して金色に輝いたように見えた。
花と招待状を持って、来る時と違い少し穏やかな気分で帰路についた。
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