愛か、運命か(仮)

万里

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 仕事という日常の仮面を被りながらも、鷹志の精神は凪という名の檻に囚われたままだった。

 デスクに向かっていても、視界の端には常にあの光景が焼き付いている。潤いを失い、ただ絶望だけを湛えて自分を見つめる凪の瞳。かつては鮮やかな色彩を持っていたはずの彼の魂が、鷹志の執着という猛毒に侵され、一滴ずつ、確実に枯れ果てていく。

「運命」という甘美な鎖で縛り上げ、物理的にその身を閉じ込めておけば、いつかは自分を愛さずとも「慣れる」日が来ると信じていた。だが、凪は日に日に生気を失い、今やただ呼吸を繰り返すだけの「屍」と化している。鷹志はそれを、見守ることしかできなかった。

 そんな折、職場の休憩室。静まり返った空気の中で、同僚たちの噂話が、鋭いナイフのように鷹志の思考を切り裂いた。

「……聞いた? 海外で『番を強制的に解除する手術』があるらしいよ」

 その単語が耳に飛び込んできた瞬間、鷹志が手にしていたコーヒーカップが微かに揺れた。

「ええっ!? せっかく結ばれた番を、わざわざ引き剥がすなんて……」
  
「事故で番を亡くして苦しむ人とか、あるいは……望まない形で無理やり番にさせられた人とか。そういう人の救済のために開発されたんだって。でも、成功率は低いし、術後の拒絶反応で命を落とす危険もあるっていう話だけど」 

「……どちらにしても、残酷ね」

 その言葉は、今の鷹志の胸の最も柔らかい場所に、容赦なく突き刺さった。凪を救う唯一の手段が、凪の命を奪うかもしれない博打であるという事実に、喉の奥が焼けるように熱くなる。

 気がつけば、鷹志は椅子から立ち上がっていた。

「……その話、詳しく聞かせてもらえないだろうか」

 背後から響いた、地を這うような低い声。 弾かれたように振り返った社員たちは、鷹志のあまりに険しく、そしてどこか悲痛な色を帯びた眼光に射抜かれ、氷を流し込まれたように静まり返った。


 鷹志の行動は、取り憑かれたように迅速だった。

 旧知の仲である医師を、半ば脅迫に近い形で動かし、厳重な情報統制が敷かれた専門資料を強引にかき集める。デスクに並んだモニタには、およそ一般の目には触れることのない「番の強制解除手術」の詳細が、無機質な文字列となって羅列されていた。

 それは、魂に刻まれた「絶対的なつながり」を物理的に断ち切る、神への冒涜とも言える技術だった。αがΩのうなじに刻んだ牙の痕——。そこから流し込まれた支配の神経系を、特殊な投薬と精密な外科処置によって強制的に無効化し、神経回路を組み替える。

 もし成功すれば、凪を縛り付けている本能の枷は消滅し、彼は二度と鷹志のフェロモンに屈することはないだろう。だが、その代償はあまりに重い。

「……成功率、一桁か」

 資料に記された数字を見つめる鷹志の瞳に、冷たい焦燥が走る。心臓と脳に加わる凄まじい負荷。術中のショック死、あるいは術後の苦痛。それはまさに、生きながらにして一度死ぬに等しい、命を賭した博打だった。

(……こんなものが、本当に存在するのか)

 こんな選択肢があることを、もし凪に教えればどうなるか。結果は火を見るよりも明らかだった。たとえ生存率が限りなくゼロに近くとも、凪は躊躇なくその手術を望むだろう。死の恐怖など、自分に飼い殺される屈辱に比べれば、彼にとっては救済ですらあるのだ。

 そして、もし万が一、億が一に成功してしまえば——。 自由を手にした凪は、振り返ることもなく自分を捨て、あのみすぼらしいβの男のもとへ一目散に駆けていく。その光景を想像しただけで、鷹志の胸の奥でどす黒い独占欲が鎌首をもたげた。

「教えるはずがない。……教える必要などない」

 吐き出された独り言は、重厚なカーテンに遮られた書斎に、空虚に響くだけだった。

(俺は、凪を手放さない。愛しているからこそ……たとえ憎しみに塗り潰されようとも、俺の腕の中で生かしておく)

 そう自分に言い聞かせるように心の奥で呟き、鷹志は深く椅子に身体を沈めた。重く瞼を閉じる。

 だが、暗闇の中で浮かび上がってくるのは、快楽に喘ぎながらも心だけは遥か遠くへ逃がしている、虚ろな凪の姿だ。
 抱きしめるほどに壊れ、手に入れるほどに遠ざかる。 その矛盾に苛まれながらも、鷹志は手元にある「自由への切符」を握りつぶすことしかできなかった。

 *

 その日の仕事は、異様に早く切り上げた。

 効率や成果を最優先するはずの鷹志が、会議の予定すら強引にねじ伏せ、逃げるように会社を後にした。胸の奥をざわつかせる正体不明の焦燥感。まるで、背後から冷たい指先で心臓を撫でられているような不快な予感が、彼を急き立てていた。

「凪、戻ったぞ」

 玄関の鍵を開け、マンションに足を踏み入れる。 リビングには、返事はおろか、生活の気配すら漂っていない。常に完璧な室温に保たれた空間が、今夜は骨の芯まで凍えさせるような不気味な冷気を孕んでいるように感じられた。

 ふと、寝室の奥に目を向けると、バスルームへと続くドアが不自然に開いている。そこから漏れ出す、微かな水の音。

「凪……?」

 心臓が嫌な音を立てて跳ねた。

 バスルームには、冷たいタイルの上に、凪が力なく座り込んでいた。 白磁のように透き通った左腕。その細い手首からは、幾本もの鮮やかな紅い筋が溢れ出し、バスタブを鮮血で汚している。

「な……何を、している……!?」

 肺から空気が根こそぎ奪われた。鷹志はなりふり構わず駆け寄り、凪の身体を抱き寄せる。 震える手でその腕を掴み上げると、傷口の深さに血の気が引いた。

「しっかりしろ、凪! 凪!」

 叫びながら、己の首元を締め付けていたネクタイを乱暴に外し、止血のために傷口を強く縛り上げる。

 ふと視線を落とすと、床には空になった薬のシートが無惨に散らばっていた。それは、眠れないという凪のために処方された睡眠薬や安定剤。

「もしかして……全部飲んだのか?おい!? 返事をしろ、凪!」

 揺さぶっても、返事はない。 凪の瞳は焦点が合わず、薄く開いた唇からは、今にも消え入りそうな弱々しい吐息が漏れるだけだ。

 これまで、鷹志はすべてをコントロールしてきた。凪の身体も、環境も、逃げ場のない未来も。だが、今、自分の腕の中で温度を失っていく凪の体温こそが、彼の支配が完全な敗北に終わったことを告げていた。冷静沈着で知られる男が、生まれて初めて「死」という剥き出しの恐怖に直面し、視界が白く明滅する。

 だが、身体は反射的に動いた。 血に濡れた指でスマートフォンを掴み、最短で到着する救急車を呼ぶ。住所を告げる声は、自分でも驚くほど震えていた。

「……と……」

 その時、凪の唇が、かすかに動いた。 鷹志は、必死にその口元に耳を寄せた。

「……やま……と……」

 聞き取れたのは、呪いのような音だった。 意識が遠のく混濁の中でさえ、凪が呼び続けているのは自分の名ではない。あの、どこにでもいるβの名。

 自らの命を削り、魂を焼き切ってでも、この「運命の番」という呪縛から逃れようとする凪のすさまじい執念。鷹志は、鉄臭い血の匂いの中で、その絶望的なまでの拒絶を突きつけられていた。

「くそっ……!死なせるか……死なせてたまるか、凪……!」

 鷹志の声は、泣いているようにも、獣が咆哮しているようにも聞こえた。 遠くから近づいてくるサイレンの音が、二人の歪んだ運命を無慈悲に切り裂くように鳴り響いていた。

 *

 病院の無機質な白に包まれた世界で、凪が再び意識を浮上させたのは数日後のことだった。消毒液の匂いと、規則的に鳴り響く心電図の音が、彼がまだ「こちら側」に繋ぎ止められていることを残酷に告げていた。

 病室の重苦しい静寂を切り裂いたのは、鷹志の低く、地を這うような怒声だった。

「……どうして、こんな真似をした!? 許可なく死ぬことなど、この俺が許すとでも思ったのか!」

 数日間一睡もせずに凪を見守り続けていた鷹志の瞳は、真っ赤に充血していた。そこには、愛する者を失いかけた動揺と、自分を置き去りにして消えようとした凪への凄まじい憤怒が渦巻いている。

 だが、凪は表情一つ変えなかった。ただ、ゆっくりと、折れてしまいそうなほど細い首を巡らせる。

「……なんで、助けたの?」 
「なんでだと……!?」 
「もう、死なせてよ……」

 掠れた声は、今にも霧散してしまいそうなほどか細い。焦点の合わない虚ろな瞳が、ゆっくりと鷹志を射抜いた。そこには死への恐怖など微塵もなく、ただ「生かされてしまった」ことへの、底知れない絶望だけが横たわっていた。

「大和の傍にいられないなら、死んだ方がマシだ。……お願い、殺して。殺してくれないなら、自分でやるから……」

「ふざけるな!」

 怒声が狭い病室を震わせた。だが、鷹志を支配していたのは苛立ちではなかった。心臓を素手で握りつぶされるような、底知れない「喪失」への恐怖だ。

 自分に抱かれている最中も、食事をしている時も、凪はずっとここにはいない誰かを見つめていた。αである自分が、富も権力も、そして「運命」という最強のカードも持っているはずの自分が、たった一人のΩの心すら支配できない。ただその命を繋ぎ止めることさえ、これほどの拒絶を伴わなければならないのか。

「……お前は、それほどまでに……」

 大和という、自分から見れば取るに足りないβの男。その男を想い、そのために自らの命を躊躇なく投げ出そうとする凪の姿。それは、鷹志が理想としていた「両親の睦まじい番の絆」よりも、遥かに凄絶で、純粋すぎるほどに燃え上がる愛の形に見えてしまった。

 自分の手の中にあるのは、凪の「肉体」というただの抜け殻だ。 本能や属性で縛り上げれば、いつか手に入ると思っていた「愛」という名の光。それが、今の自分のやり方では絶対に、永遠に手に入らないことを、鷹志は凪の血の匂いと涙の中で、残酷なまでに突きつけられていた。

「死ぬほど、嫌か。……俺の番でいることが」

 絞り出すような鷹志の問いに、凪は答えなかった。 ただ、溢れ出した涙が耳元を伝い、白いシーツに吸い込まれていく。言葉よりも重いその沈黙こそが、鷹志の歪んだプライドを粉々に砕く、何よりの回答だった。


 静まり返った病室。換気口から漏れる微かな機械音だけが響く中、鷹志は重い口を開いた。その声は、湿り気を失った砂のように乾き、床にぽつりと落ちた。

「……番を、強制的に解除できる手術があるらしい」

 その瞬間、それまで死人のように横たわっていた凪の肩が、目に見えて跳ねた。 

「……え?」 

 掠れた声。凪の瞳が、初めて自発的な意志を持って鷹志を捉える。

「投薬と手術で項の刻印を焼き切り、神経を強引に繋ぎ変える。……だが、国内では認可すらされていない。成功の保証はなく、莫大な費用が必要になる。何より、身体への負担は想像を絶する。……最悪の場合、そのまま死に至るリスクもある」

 鷹志は凪から視線を外し、窓の外に広がる暮れなずむ街並みを、遠くを見つめる目で見つめた。

「手術をしたところで、番が解除されない可能性もある。ただ無駄に命を落とすだけになるかもしれない。……それでも、お前はそれを受けたいか?」

 凪の瞳に灯ったのは、驚き、そして狂おしいほどの「希望」だった。

「受ける。受けたい……お金は、いつか必ず返す……!だから……っ」

 一瞬の迷いもない即答だった。 死ぬかもしれないと言われた直後に、こんな返答をされることが、これほどまでに己の胸を深く抉るとは思わなかった。自分と一緒に生き続ける未来よりも、死ぬ確率の方が高い手術に賭ける方が、凪にとっては「救い」なのだ。

「……そうか。……わかった。日本で手術ができそうか、当たってみる…」 
「……な、なんで?」

 凪が震える声で問いかける。その瞳には、信じられないものを見るような疑念が混じっていた。
  
「……なんでだろうな」

 鷹志は力なく、自嘲気味に口角を上げた。その微笑みは、いつもの傲慢なαの仮面ではなく、ただの傷ついた一人の男の、剥き出しの素顔だった。

「……お前のその、死人のような顔を見続けるのに、いい加減飽きただけだ。……だからもう、死ぬなんて言うな」

 鷹志はそれだけ言い残すと、凪の返事を待たずに、逃げるように病室を後にした。

 廊下に出た途端、壁に背を預けてずるずると立ち尽くす。 αとしてのプライド、家柄、血統、そして「運命」への信仰。彼を構成していたすべてが、今、跡形もなく砕け散っていた。

 けれど、不思議と胸のつかえが取れたような、透明な感覚もあった。 自分の命よりも、誇りよりも、ただ凪の幸福だけを願ってすべてを投げ出した、あの泥臭いβ――大和。その男の献身の正体が、今なら、ほんの少しだけ理解できるような気がした。

 勝負は、最初からついていたのだ。 鷹志は暗い廊下で、独り、絞り出すような溜息を吐いた。

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