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第10話 ムギルの屋敷へ
しおりを挟むミヤビは優秀で、ターゲットのムギルについて、すぐ情報を集めてきた。
高利貸らしい。
相当な金持ちで、町はずれの豪勢な屋敷に、大勢の使用人と住んでいるようだ。なかなかの色男だという。
じゃあ殺してもいいやと思った。
「ステータスは?」
ミヤビと一緒に、朝食をとりながら聞く。
「隠ぺいのスキルを持っているようです」
「え? 隠ぺい?」
「ステータスの情報を隠すスキルですよ」
おいおい、勘弁してくれよ。そんなスキルもあるのかよ。
奴隷化使っちゃえば楽だろうが、魔法反射が怖いよなあ。
このスキルさ、思ったほど便利じゃないかな。いや、ミヤビを奴隷にしているし、奴隷化のLv上るわけだから、強いことは間違いないか。
まあ、いい。
ムギルってやつに、スライムをぶつければ済む話だ。
ムギルのほうが強ければ、俺は解放される。
スライムが勝てば、それはそれでいい。
「スライムさん、相談なんですが、ムギルって人を食べましょうか。そろそろおなかすいたでしょう?」
俺は人間の死体のイメージを送る。
「すいた」
甲高い声がした。
「え?」
「おなかすいた」
スライムが喋った? いやバカな。
ステータスをよく確認する。
名前:デビル・スライム
HP :1400/1400
攻撃力 :900
守備力 :750
魔法攻撃力:50
魔法防御力:750
スキル :魔法反射Lv1 進化Lv2 言語理解Lv1
状態 :ヌカタの主Lv2
どういうことだよ。このスライム、どんどん強力になってきている。
さっさと解放されないと、とんでもない事態になるだろう。
「じゃあ、これから、人がいっぱいいる屋敷に行きます。そこにいるムギルってやつを食べましょう」
難しかったのか、スライムはないのに首を傾げた。
夜になると、スライムを袋に入れ、ナー・ザルをポケットに隠して、町はずれのムギルの屋敷まで行った。
ムギルは二階建ての大きな木造の屋敷に住んでいる。
一見すると小学校や中学校にも見えそうだ。
屋敷の門の前には、門番が立っている。
ステータスを確認したが、大したことはない。
「スライムさん、あの門番を食べましょう」
スライムは袋から出ると、すぐ門番のそばに行く。触手を出して襲い掛かり、体を覆いつくした。
以前は一人食べきるまでに、数時間かかったが、いまは十分ほどで完食する。恐ろしいことだ。
屋敷に電気はついていないが、庭にはランプがあり、煌々と明るい。高利貸という、人に恨まれる商売をしているためだろう。
庭を抜けると、ドアの前に、ライオンのようなモンスターがいるとわかった。
名前:ガクリ・タイ
HP :400/400
攻撃力 :150
守備力 :150
魔法攻撃力:10
魔法防御力:50
スキル :毒の牙
なかなか強いが、ナー・ザル三体で倒せそうだな。
いや、ここはスライムをぶつけておくか?
「スライムさん、このモンスター食べたら、おなか一杯?」
スライムはふるふると、首を振るみたいにした。
俺は人間を十人ほど食べるイメージを送る。
「食べられる?」
コクコクと動く。じゃあいいか。
「スライムさん、どうぞ」
スライムは触手を伸ばし、首の骨を折り、すぐ体内に取り込んだ。
もうあとは放っておけばいいんじゃないか?
「この屋敷の人間を、好きなだけ食べていいです。ただ、ムギルって人を、まず殺してくれませんか」
ムギルのイメージを再び送った。
スライムは、表情はないが「なんで?」と言ってるようにこちらを見ている。首をかしげるように、ぷにっと動いた。
「おいしいんですよ。すごくおいしいんです!」
スライムはコクコクとうなずくように動いた。
よし、大丈夫だろう。
俺はナー・ザルと屋敷の前に戻った。
あのスライムに任せておけば、全部終わるんじゃないの?
だがそう簡単にはいかなかった。
「魔物使いですか」
突然、低い声が聞こえた。
やばい! 姿を隠していたのに。
「無駄ですよ。私は、生物を感知する能力を持っています」
「違うんです。頼まれただけなんです!」
助かりたくて言った。
俺のステータスは低くはない。
だが、ミヤビ相手でも、殺される恐れがある。強くはないのだ。
屋敷から、薄紫色の和服をきた、長身の男が出てきた。真っ黒に日焼けし、坊主頭、見るからに柄が悪そうだ。
鑑定グラスをかける。
だが、何も見えない。畜生、これが隠蔽って能力か。
「ほう、なかなか強いですね。珍しいスキルを持ってもいる」
え?
「私は鑑定の能力を持っているんですよ」
ムギルだろう男が言った。
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