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第二章 ライオネル
03 メルニアの街へ
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ウエストリア屋敷に来て、一年半が経とうとしていた頃だった。
「魔具を持っていらっしゃらないのですか?」
「無いな」
「身に付けていないだけでは無く?」
「そうだな」
「保管箱に入っていたのでは無いのですか?」
「そんな事を言った覚えは無いぞ」
確かに聞いた覚えは無いが、まさか持っていないとは思ってもいなかった。
イリノアの街で、ボダムと言う男が襲って来た時も魔石を使ったのは、魔具だと痕跡が残るからだと思っていたのに、、、
「魔物に襲われたらどうされるのです!」
「魔石があるし、オルがいるから問題ない」
「しかし」
「第一、使える魔具が無い」
「どう言う意味です」
「俺が使うと壊れるからな、使う度に壊れていては効率が悪くて仕方がない」
「壊れる? 魔具の方がですか?」
「何度か使うとな、マゼルスの辺りに腕のいい魔工師がいるみたいだが、、、行くのにどのくらいかかる」
「マゼルスまで、ですか?」
「そうだ」
「馬で二日と言う所でしょうか?」
「だよな、一日なら何とかなるかも知れんが、二日では、後半年は行く事が出来ん」
「どう言う事です」
「親父に歳が二桁になるまでは、日が暮れるまでに戻れる範囲と言われている」
「そうだったのですか、ご領主との約束事を守られていたなんて、知りませんでした」
父親の言いつけを守っているなんて、案外、可愛らしい所がある。
「当たり前だ、これ以上面倒な事を言い出されたら困るだろう。だから明日は日の出と同時に出る、早く寝ておけよ」
言いつけを守っている訳では無く、言いつけを最大限利用しているだけの可愛らしくない少年が、そう言って部屋へ戻って行く。
翌朝、自分が使わせて貰っている馬の中から、比較的長距離を走れる馬を用意して待つ。
「どちらまで行かれるつもりなのですか?」
「メルニアだ」
「この時期に、ですか?」
「ファーが向こうにいるからな」
ファーレン・ローエングルグは、彼の友人だと聞いていた。
数ヶ月前から父親に付いて領地を廻っていたので、しばらく会えていない事も。
そして彼が、父親同様とても優秀な剣の使い手である事も。
「まさかポロの果樹園に行く訳ではありませんよね」
「ライは一年経って、少し感が良くなったな」
相変わらず野生馬に乗って先を走る二人を追って行く。
ポロの実が熟れだすこの時期は、甘い実につられて魔物がメルニアの街周辺にまでやって来る。
その為、街には騎士達が沢山集まって来るが、魔具を持たない彼が行っても邪魔者扱いされるだけでは無いだろうか? それどころか危険な事にならないだろうか?
この一年で、彼のリグは魔物に対して、全く攻撃や防御の手段を持たない事は知っている。
自分にしても風の扱いは出来るが、攻撃自体はそれほど強いものでは無い。
彼自身が一度魔石を使っていたのは見ているが、それも相手の魔力を相殺するようなもので、魔物に対してのものでは無かった。
その為、彼が魔物に対してどのくらいの力を持っているのかライオネルには全く分からない。
あれだけ自由に動き回っているのに、今まで全く魔物に会う事が無かったので、昨夜まで魔具を持っていない事さえ知らない状態だったのだ。
「危険では無いのですか?」
「ライが心配性なのは変わらないな」
「私は貴方の事をまだよく分からないのですから仕方ないでしょう」
「命を捨てるような事はしない」
「それは存じ上げています」
「なら、心配するな」
昼間はほとんど魔物が現れないと言っても、移動の間には危ない場所もあると言うのに、気にする事無く進む二人を追って行くのは、一年以上経っても慣れる事が出来ない。
おまけに、ポロの果樹園に行けば、必ず“チグル”や“モズリ”と呼ばれる魔物が必ずいる。
“チグル”や“モズリ”は、昼間にも現れる珍しい魔物で、単体ではそれほど怖い魔物では無いが、果樹園の様な場所には群で集まる。
魔物の数も多いし騎士達の練習には丁度いい為、実が生る季節になると騎士達はメルニアの街に集まり、数時間毎に交代しながら果樹園を守る。
だが、二か月以上それを続けていれば疲れもある。
収穫が近い今の時期は、騎士達も急に現れた相手に気を配れる状態では無いはずだ。
『ファーレン殿が何時からメルニアにいたのか知らないが、もっと早くに来ていればまだマシだっただろうに、、、』
メルニアの街が目に入ると、これから起こりそうな事を想像し思わずため息が漏れる。
「魔具を持っていらっしゃらないのですか?」
「無いな」
「身に付けていないだけでは無く?」
「そうだな」
「保管箱に入っていたのでは無いのですか?」
「そんな事を言った覚えは無いぞ」
確かに聞いた覚えは無いが、まさか持っていないとは思ってもいなかった。
イリノアの街で、ボダムと言う男が襲って来た時も魔石を使ったのは、魔具だと痕跡が残るからだと思っていたのに、、、
「魔物に襲われたらどうされるのです!」
「魔石があるし、オルがいるから問題ない」
「しかし」
「第一、使える魔具が無い」
「どう言う意味です」
「俺が使うと壊れるからな、使う度に壊れていては効率が悪くて仕方がない」
「壊れる? 魔具の方がですか?」
「何度か使うとな、マゼルスの辺りに腕のいい魔工師がいるみたいだが、、、行くのにどのくらいかかる」
「マゼルスまで、ですか?」
「そうだ」
「馬で二日と言う所でしょうか?」
「だよな、一日なら何とかなるかも知れんが、二日では、後半年は行く事が出来ん」
「どう言う事です」
「親父に歳が二桁になるまでは、日が暮れるまでに戻れる範囲と言われている」
「そうだったのですか、ご領主との約束事を守られていたなんて、知りませんでした」
父親の言いつけを守っているなんて、案外、可愛らしい所がある。
「当たり前だ、これ以上面倒な事を言い出されたら困るだろう。だから明日は日の出と同時に出る、早く寝ておけよ」
言いつけを守っている訳では無く、言いつけを最大限利用しているだけの可愛らしくない少年が、そう言って部屋へ戻って行く。
翌朝、自分が使わせて貰っている馬の中から、比較的長距離を走れる馬を用意して待つ。
「どちらまで行かれるつもりなのですか?」
「メルニアだ」
「この時期に、ですか?」
「ファーが向こうにいるからな」
ファーレン・ローエングルグは、彼の友人だと聞いていた。
数ヶ月前から父親に付いて領地を廻っていたので、しばらく会えていない事も。
そして彼が、父親同様とても優秀な剣の使い手である事も。
「まさかポロの果樹園に行く訳ではありませんよね」
「ライは一年経って、少し感が良くなったな」
相変わらず野生馬に乗って先を走る二人を追って行く。
ポロの実が熟れだすこの時期は、甘い実につられて魔物がメルニアの街周辺にまでやって来る。
その為、街には騎士達が沢山集まって来るが、魔具を持たない彼が行っても邪魔者扱いされるだけでは無いだろうか? それどころか危険な事にならないだろうか?
この一年で、彼のリグは魔物に対して、全く攻撃や防御の手段を持たない事は知っている。
自分にしても風の扱いは出来るが、攻撃自体はそれほど強いものでは無い。
彼自身が一度魔石を使っていたのは見ているが、それも相手の魔力を相殺するようなもので、魔物に対してのものでは無かった。
その為、彼が魔物に対してどのくらいの力を持っているのかライオネルには全く分からない。
あれだけ自由に動き回っているのに、今まで全く魔物に会う事が無かったので、昨夜まで魔具を持っていない事さえ知らない状態だったのだ。
「危険では無いのですか?」
「ライが心配性なのは変わらないな」
「私は貴方の事をまだよく分からないのですから仕方ないでしょう」
「命を捨てるような事はしない」
「それは存じ上げています」
「なら、心配するな」
昼間はほとんど魔物が現れないと言っても、移動の間には危ない場所もあると言うのに、気にする事無く進む二人を追って行くのは、一年以上経っても慣れる事が出来ない。
おまけに、ポロの果樹園に行けば、必ず“チグル”や“モズリ”と呼ばれる魔物が必ずいる。
“チグル”や“モズリ”は、昼間にも現れる珍しい魔物で、単体ではそれほど怖い魔物では無いが、果樹園の様な場所には群で集まる。
魔物の数も多いし騎士達の練習には丁度いい為、実が生る季節になると騎士達はメルニアの街に集まり、数時間毎に交代しながら果樹園を守る。
だが、二か月以上それを続けていれば疲れもある。
収穫が近い今の時期は、騎士達も急に現れた相手に気を配れる状態では無いはずだ。
『ファーレン殿が何時からメルニアにいたのか知らないが、もっと早くに来ていればまだマシだっただろうに、、、』
メルニアの街が目に入ると、これから起こりそうな事を想像し思わずため息が漏れる。
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