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第二章 ライオネル
04 ポロの畑(1)
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メルニアの街に近づくと、街を迂回するようにポロの畑に向かう。
「遅かったね」
金髪に茜色の瞳をした少年が迎えてくれる。
「少し回って来たからな」
「もう少しで僕も交代だけど、先に街に入っているかい?」
「いや、、、それにしても思った以上に荒れているな」
ファーレン殿が守っているポロの畑を見ながら彼が呟く。
畑のポロの実が魔物に喰われて酷い状態になっていて、畑がこれ以上荒れれば、酒に使える実は殆ど取れなくなってしまうだろう。
「この辺りは、畑の中でも酷い所だからね。中の方に行けば、もう少しマシだよ」
「お前の親父まで呼ばれたって事は、そんなに魔物が酷かったのか?」
「まぁ、少しはね」
「ん?」
「確かに今年は色の違う“モズリ”がいて、手を取られたし荒らされたのは本当だと思うよ。只、始めはそれでも大した事無かったから、、、」
「なる程な、今年の責任者はホスロだったな」
「そうだね」
「たいした事は無いと放っていたら、気が付いた時には手遅れって事か」
魔物に喰われたポロの実は、潰れて甘い匂いを出すので、それに釣られて予想した以上の魔物が集まっているに違いない。
「のんびり屋のやりそうな事だな」
「夜になると“アリアント”まで来るようになって、父に連絡して来たみたいだね」
「いつ来たんだ」
「二週間前」
「ローエングルグの親父は、暗くなってから出ているのか?」
「うん」
「面倒事に巻き込まれたな」
「僕達は大丈夫だけど、ゼネルト家の騎士や見習い達は大変だよ。このままだと今年の収穫は何時もの半分にも満たなくなる」
ポロの畑を守る仕事は、希望する家が領主の依頼を受けて任に当たり、引き受けた以上、全ての責任は仕事を受けた家が持つ。
自分の家の騎士達だけで人手が賄えない場合は、他家の騎士を雇い、人手を増やしたり、腕を磨きたい騎士を受け入れたりして仕事をする。
それ故、家の騎士達だけで仕事を終える事が出来れば、高額な報酬は家の者達に還元出来るが、他家の手を借りるほど、仕事を受けた家の報酬が減ることになる。
つまり、今回のゼネルト家のように、ローエングルグ家の当主の力まで借りる事になれば、領主から渡される報酬では足りず、腕を磨きたいと集まった約定を持たない騎士達に、僅かな謝礼さえ渡せなくなる。
ポロの畑を守る仕事は、元々人手を必要とする仕事なので報酬も高額だし、収穫後に作られた貴腐ワインを贈られる事も多く、通常なら美味しい仕事でもあった。
それが今回の様に収穫が酷く減るようなら約束の報酬も減るだろうし、収穫後の礼などあり得ない。
ゼネルト家は、手を借りたローエングルグ家の騎士には、報酬を支払わなければならないので、予定していた報酬が手に入らない場合、割りを食うのは、ゼネルト家に仕える騎士と約定を結ばすここに来ている者達になる。
見習い騎士の様に、腕を磨く為に来ていても、二か月近く自分の主家を離れている以上、その間、どう言う状況でここに来ているかは個々に違う。
本来であれば多少の謝礼が渡されるが、今回のようになればそれも危うい。
自分が狩った魔物が落とした魔石は、基本的に狩った者が手に入れる事が出来る。
だが“チグル”や“モズリ”などは、狩ってもエルに変わる様な魔石を落とさない。
夜になれば"アリアント"の様な魔物も現れるみたいだが、これは見習いの騎士では歯が立たない。
結局、与えられる謝礼が無ければ、二か月の間、無報酬で働く事になるが、彼等は約定を結んでいないので、苦情を言う事も出来ない。
「目先が利いた者は、さっさと帰っていったよ」
「なる程な、それでお前達が呼ばれた訳だ」
馬鹿な話だ。
数の多い魔物には、こちらも数で対抗するしかない。
昼間に現れる“チグル”や“モズリ”は、ポロの木に取り付いて実を食べるのだから、畑で働く農民たちを避け、魔物だけを排除するには人手が必要だった。
ファーレンの様に強い力があっても、魔物だけを排除する事は出来ないのだから、こう言う場合、こちらも数で当たるしかない。
そう言う意味で、見習いの騎士達は有益だったはずだ。
ホスロがある程度の謝礼を約束すれば、残る者達だっていたはずなのに、それをせずに去らせてしまった事になる。
彼らがいなくなったので、明るい時間まで契約した騎士達が動かなければならなくなり、結果、夜に動ける者がいないので、ローエングルグ家の騎士まで必要になっている。
「遅かったね」
金髪に茜色の瞳をした少年が迎えてくれる。
「少し回って来たからな」
「もう少しで僕も交代だけど、先に街に入っているかい?」
「いや、、、それにしても思った以上に荒れているな」
ファーレン殿が守っているポロの畑を見ながら彼が呟く。
畑のポロの実が魔物に喰われて酷い状態になっていて、畑がこれ以上荒れれば、酒に使える実は殆ど取れなくなってしまうだろう。
「この辺りは、畑の中でも酷い所だからね。中の方に行けば、もう少しマシだよ」
「お前の親父まで呼ばれたって事は、そんなに魔物が酷かったのか?」
「まぁ、少しはね」
「ん?」
「確かに今年は色の違う“モズリ”がいて、手を取られたし荒らされたのは本当だと思うよ。只、始めはそれでも大した事無かったから、、、」
「なる程な、今年の責任者はホスロだったな」
「そうだね」
「たいした事は無いと放っていたら、気が付いた時には手遅れって事か」
魔物に喰われたポロの実は、潰れて甘い匂いを出すので、それに釣られて予想した以上の魔物が集まっているに違いない。
「のんびり屋のやりそうな事だな」
「夜になると“アリアント”まで来るようになって、父に連絡して来たみたいだね」
「いつ来たんだ」
「二週間前」
「ローエングルグの親父は、暗くなってから出ているのか?」
「うん」
「面倒事に巻き込まれたな」
「僕達は大丈夫だけど、ゼネルト家の騎士や見習い達は大変だよ。このままだと今年の収穫は何時もの半分にも満たなくなる」
ポロの畑を守る仕事は、希望する家が領主の依頼を受けて任に当たり、引き受けた以上、全ての責任は仕事を受けた家が持つ。
自分の家の騎士達だけで人手が賄えない場合は、他家の騎士を雇い、人手を増やしたり、腕を磨きたい騎士を受け入れたりして仕事をする。
それ故、家の騎士達だけで仕事を終える事が出来れば、高額な報酬は家の者達に還元出来るが、他家の手を借りるほど、仕事を受けた家の報酬が減ることになる。
つまり、今回のゼネルト家のように、ローエングルグ家の当主の力まで借りる事になれば、領主から渡される報酬では足りず、腕を磨きたいと集まった約定を持たない騎士達に、僅かな謝礼さえ渡せなくなる。
ポロの畑を守る仕事は、元々人手を必要とする仕事なので報酬も高額だし、収穫後に作られた貴腐ワインを贈られる事も多く、通常なら美味しい仕事でもあった。
それが今回の様に収穫が酷く減るようなら約束の報酬も減るだろうし、収穫後の礼などあり得ない。
ゼネルト家は、手を借りたローエングルグ家の騎士には、報酬を支払わなければならないので、予定していた報酬が手に入らない場合、割りを食うのは、ゼネルト家に仕える騎士と約定を結ばすここに来ている者達になる。
見習い騎士の様に、腕を磨く為に来ていても、二か月近く自分の主家を離れている以上、その間、どう言う状況でここに来ているかは個々に違う。
本来であれば多少の謝礼が渡されるが、今回のようになればそれも危うい。
自分が狩った魔物が落とした魔石は、基本的に狩った者が手に入れる事が出来る。
だが“チグル”や“モズリ”などは、狩ってもエルに変わる様な魔石を落とさない。
夜になれば"アリアント"の様な魔物も現れるみたいだが、これは見習いの騎士では歯が立たない。
結局、与えられる謝礼が無ければ、二か月の間、無報酬で働く事になるが、彼等は約定を結んでいないので、苦情を言う事も出来ない。
「目先が利いた者は、さっさと帰っていったよ」
「なる程な、それでお前達が呼ばれた訳だ」
馬鹿な話だ。
数の多い魔物には、こちらも数で対抗するしかない。
昼間に現れる“チグル”や“モズリ”は、ポロの木に取り付いて実を食べるのだから、畑で働く農民たちを避け、魔物だけを排除するには人手が必要だった。
ファーレンの様に強い力があっても、魔物だけを排除する事は出来ないのだから、こう言う場合、こちらも数で当たるしかない。
そう言う意味で、見習いの騎士達は有益だったはずだ。
ホスロがある程度の謝礼を約束すれば、残る者達だっていたはずなのに、それをせずに去らせてしまった事になる。
彼らがいなくなったので、明るい時間まで契約した騎士達が動かなければならなくなり、結果、夜に動ける者がいないので、ローエングルグ家の騎士まで必要になっている。
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